表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/81

第41話

第41話



少年は、水音が変わっていく方向へと歩みを進めていった。

穏やかだった流れは、次第に渦を巻くようにうねりはじめ、

どこか涼やかで澄んだ気配が空気の隙間から立ちのぼる。


その気配は、指先をかすめる風のように

ゆっくりと少年の身体を包みはじめていた。


少年はその音に導かれるように、さらに奥へ――

そしてほどなくして、広大な地下湖のような空間に辿り着いた。


少年は水際で立ち止まった。


「……入れということでしょうか。」


小さく呟き、彼は慎重に足を水へと踏み入れた。

水は冷たかった。

だが深くはなく、太ももほどの高さまで穏やかに満ちている。

その冷たさが、傷んだ身体と傷口へひたひたと染み込んでくる。


少年は静かに歩みを進めた。

遠くで反射する水の光が、淡くゆらめきながら

まるで呼吸しているかのように揺れ動き、

少年をその先へと誘っていた。


歩みを進めるたび、

少年の身体に付いた血や埃、汚れが

水流に溶けるように洗い流されていく。

水は澄みきって冷たく、

どこか清められるような感覚があった。


途中、水の流れが急に強まり

少年の身体を揺らすほど押し寄せたが、

彼はどうにか踏ん張り、前へ歩くのをやめなかった。


しばらく進むと、やがて水面から突き出た小さな陸地を見つけた。

少年はゆっくりとそこへ上がった。

濡れた足先から水が滴り落ちる。


そして――

その光が揺らめく方向へ歩み出した瞬間、

少年は息を呑んで立ち尽くした。


そこにあったのは、

まるで石となり、時に固められた“何か”であった。


土か、岩か、あるいは化石なのか――判然としない。

だが、その形状はどう見ても「骨」に近かった。


どれほど古き時代のものだとしても、

この場所で、まさかこんな形を目にするとは思っていなかった。


少年はゆっくりと近づき、

その骨とも化石とも言えぬ残骸を見つめた。


それは――

確かに、“何者か”の残影であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ