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第38話

第38話


少年とロイドは手早く書類をまとめると、

そのうちの一枚を一人の隊員に託した。


「伯爵へ届けろ。できる限り急いでくれ。」


隊員は力強く頷き、北方へ向かって駆け出していった。


その後、二人は少年が指定した“ある区域”へと向かった。

目的は、少年が必要だと言った“特定の鉱石”を採取するためだ。


荒れ果てた廃街を抜け、目的地に到着したとき――

ロイドは足を止め、呆れたように眉を上げた。


「……おい、坊主。

本当に……ここなのか?」


彼が指差した先には、

半ば崩れ落ち、黒く焦げた――

〈黄金獅子の酒場〉があった。


少年は静かに頷いた。


数秒間ぽかんとしていたロイドは、

やがて腹の底から豪快な笑い声を響かせた。


「ハハハハハッ!

こりゃあ面白ぇ!

こんな偶然があってたまるかよ、まったく!」


笑いを収めたロイドは、

そばに倒れていた大きな斧を手に取り、周囲を見回した。


「よし……

なら見せてやるか。」


そう言うや、

近くに残っていた半壊した高い尖塔へと歩き、

瓦礫を踏み砕きながら、その巨体を一気に頂上へと躍らせた。


「見てろ、坊主!

これくらいできてこそ――

中央王国の外でも名が響くってもんだ!」


ロイドが斧を大きく振りかぶった――その瞬間。


ドガァァァァン!!!!


凄絶な斬撃が周囲一帯を揺るがした。

酒場は一瞬で粉砕され、地面は爆ぜるように割れ、

土煙と破片が空高く舞い上がる。


その衝撃は、離れた別班にまで届いたほどだ。


遠方で任務に当たっていた隊員たちは、その轟音を聞いて言った。


「……ロイドの奴、もう始めたか。」

「俺たちも動くぞ! 計画どおりだ!」


各区域の部隊は、それぞれの任務へ次々と散っていった。


少年は舞い上がる砂煙の向こうをじっと見つめ、

静かに呟いた。


「……さあ、始まりますね。」


崩壊した酒場の奥――

ロイドの一撃によって、

深さの知れない“正体不明の地下空洞”が姿を現していた。

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