表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/81

第36話

第36話


「失望させないでくださいね……黄金獅子のロイド。」


少年がからかうように微笑むと、

ロイドはその表情に思わず豪快に笑い声を上げた。


しばらくして少年は一度ゆっくりと目を閉じ、

静かに開いた。

そして、会議に集まった者たちの前へと歩み出る。


先ほどとはまるで違う、

――異様なほどに研ぎ澄まされた真剣な表情。


その変化を目の当たりにした面々は、

「……?」

と小さく身を固くし、彼の口を待った。


少年は静かに口を開いた。


「これはアスティラの一都市だけの問題ではありません。

中央王国全体……いえ、帝国圏そのものが

危険に晒される可能性があります。」


言葉が落ちた瞬間、

場にいた全員の顔が固まった。


少年は続ける。


「ですから皆さんにお願いする“役割”を、

これからもう少し具体的にお伝えします。

わずかな逸脱が、重大な変数となり得ます。

――くれぐれも慎重に行動してください。」


少年の説明は専門性の高い内容だったが、

ひと言ひと言が的確で、驚くほど理解しやすかった。


最初は

「……あの子は何者だ?」

と訝しむ空気もあった。

だが説明が続くにつれ、

“信じないほうがおかしい”と思えるほど

その精度は異常だった。


「……すごいぞ、あの子。」

「経験のない者が言える話じゃない……。」


あちこちから小さな感嘆が漏れた。

同時に、説明すればするほど、

逆に正体への謎が深まっていく。


ロイドは静かに微笑み、

満足げに少年を見つめていた。


そして少年は最後にこう告げた。


「伝令を――北方避難所へ送ってください。」


全員がハッと顔を上げる。


少年は一度だけ小さく息を整え、

きっぱりと言い切った。


「決して、派遣中の兵たちを……

私が示した“特定の地点”へ

近づけてはなりません。」


その瞬間、

室内の空気は深く、冷たく張りつめた。


「……なぜだ?」

誰もが胸の奥でそう思った。


だが、少年の眼差しを見た途端、

理由を問うことすらためらわせる説得力があった。


ロイドでさえ、その一瞬のカリスマに

思わず息をのんでしまったほどだ。


そして――

人々は静かに、しかし確かな意志で、

ひとつにまとまり始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ