第31話
第31話
炎がまだ消えきらぬ灰の山の上を、
黄金の光をまとった《黄金の獅子亭》の店主が、静かに歩を進めていた。
その腕には、血まみれになった少年が抱えられている。
少年は意識が朦朧としていたが、力なくその肩にもたれ、かすかに囁いた。
「……ライオンのおじさん。」
店主は短く笑みを浮かべて言った。
「まだ話す力が残っているとは、何よりだ。」
店主は低く問いかけた。
「……アラヤは無事か。」
少年は荒れた息を整えながら答えた。
「アラヤは……まだ北には着いていません。
今は……安全な地下室に隠れています。」
店主の黄金の瞳が、わずかに揺れた。
「……そうか。状況は把握した。
まずはお前を北へ連れて行こう。」
少年は弱々しく首を横に振った。
「……ごめんなさい。
アラヤの冒険……
本当に、最悪の始まりにしてしまいました……。」
店主はふっと笑い声をもらした。
戦火の灰が漂う空気には似つかわしくない、あたたかい笑いだった。
「それはお前のせいではない、小さなやつよ。
あの子を守ってくれた……感謝すべきは私の方だ。」
少年はうつむいた。
血が一滴、店主の肩へと落ちた。
「……ちがうんです。
むしろ……アラヤが、何度も僕を助けてくれました。」
店主は歩みを一度止めた。
その言葉に、軽いながらも意味を噛みしめるような沈黙が落ちる。
やがて彼は、再び歩き出した。
「ならばなおさら連れて来ねばならんな。
お前を預けたら、すぐにアラヤを迎えに行こう。」
だが少年は、かすれた声で言った。
「……今は……もう遅いんです。」
店主の眉がぴくりと動いた。
「遅い……だと?」
少年は霞む視界のまま、空を仰いだ。
そして低く、しかし揺るぎない声で言った。
「今……アラヤの方が、
ぼくらより……ずっと安全なのかもしれません。」
意味深な言葉だった。




