第24話
第24話
赤く染まった灰色の階段の上、
夫人とその男は先頭に立っていた。
階段は半ば崩れ落ち、
天井からは焼け焦げた残骸が断続的に落ちてきた。
足元には砕けた石片と金属片が混じり、
踏みしめるたびにきしむ音が響いた。
「……かなり危ないわね。」
夫人は短く息を吐きながら言った。
「もう少し崩れていたら、この道は終わっていたわ。」
男は黙ったまま周囲を見回し、ゆっくりとうなずいた。
炎の光が彼のマントをかすめ、ゆらめいた。
「運がいいわね。」
夫人はかすかに笑った。
「これくらいなら、天が味方してくれているってことよ。」
男は依然として何も言わず、静かにうなずいた。
階段の先には、崩れた壁の隙間があった。
人ひとりがやっと通れるほどの狭い穴だった。
彼女は身をかがめて先に通路を抜け出した。
男がその後に静かに続いた。
――そして、外。
目の前に広がる光景は、まさに廃墟だった。
空は赤く染まり、
風は熱を帯び、空気には焦げた煙と灰が舞っていた。
炎はまだ残り、建物の残骸を舐めるように燃えていた。
夫人はしばらくその場に立ち、
燃え盛る瓦礫の上に視線を移した。
「……これほどとはね。」
小さくつぶやき、うつむいた。
だがすぐにその瞳に決意の光を宿した。
「止まってはいけないわ。行くわよ。」
彼女は手で合図を送った。
待機していた生存者たちの一団が、
あらかじめ決めていた道を素早く進み始めた。
彼らは彼女の指示通り、正確な経路を辿って動いた。
夫人と男はその様子を見届け、
最後の一団が通過したのを確認してから後を追おうとした。
そのとき――
遠くから金属が擦れる音が響いた。
赤い甲冑をまとった兵たちが、灰の向こうから姿を現した。
夫人は低く罵りを吐いた。
「……くそっ、今になって。」
男は即座に彼女を抱き寄せ、身を屈めた。
彼のマントが夫人の肩を覆った。
炎の間をかすめる影一つ、
彼女は息を殺し、片手で地面を押さえた。
「静かに動きましょう。奴らはまだ遠くへは行っていないはず。」
男はゆっくりとうなずいた。
そして崩れた壁づたいに進み始めた。
歩きながら彼は一瞬立ち止まり、
空と周囲をじっと見上げた。
夫人は足を止め、苛立ちを含んで言った。
「何してるの? 早く行くわよ。」
男は軽くうなずき、再び歩き出した。
だがその眼差しには、どこか好奇の光が宿っていた。
――彼は、何か異様な気配を感じ取っていた。




