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第22話

第22話



古びた指揮室の片隅、埃をかぶった書類の山の中から、

二人は大量の鍵束を見つけ出した。

鉄と錆の匂いが指先にしみつく。


「……これで、どうにかなるかもしれませんね。」

貴婦人が低くつぶやく。

二人は互いにうなずき合った。


そして、暗く長い地下牢の廊下へと向かった。

壁の隙間から湿った冷気が流れ込み、

鉄格子の列は沈黙の森のように並んでいた。


一歩、また一歩。

足音が響くたびに、どこかで水滴の音が応える。


牢の中には、すでに息絶えた者も多かった。

その顔は、血と絶望に覆われていた。

貴婦人はその光景に歯を食いしばる。


「……なんということ……。」

込み上げる怒りを押し殺し、

彼女は深く息を吸い込み、前を向いた。


その時、遠くからかすかな声が聞こえた。


「……たすけて……。」


二人は同時に顔を上げた。

まだ生きている者たちがいたのだ。

彼らは奇跡のように、命の火を繋ぎとめていた。


二人は手分けして鍵を試し始めた。

牢ごとに違う錠前。

カチャ、カチャ――

鍵が外れるたびに、淡い希望の音が響いた。


貴婦人は囚われた人々を宥めながら言った。

「今はまだ階段を上がってはいけません。

上の階は危険です。……もう少しだけ待っていてください。」


マントの男も別の牢を開けていった。

その中には、明らかに身なりの整った一団がいた。

彼は扉を開け、立ち止まった。


中には、伯爵家の紋章をつけた衣服をまとう者たち。

その前にいた幼い少年が、彼に向かって尋ねた。


「……母上はご無事ですか?

ほかの民は……?」


男は黙って少年を見つめた。

唇がわずかに震えたが、言葉にはならなかった。


その時、もう一方の牢の方から、貴婦人が現れた。


「大丈夫。ここはもう安全です。」


彼女の声が響くと同時に、牢の中の人々が歓声を上げた。


「やはりご無事だったのですね……!」

「伯爵夫人、本当によかった!」


少年は泣きながら彼女の胸に飛び込んだ。

貴婦人はその頭を優しく撫で、静かに微笑んだ。


「生きていてくれて……本当によかった。」


「父上は……計画を成功させたのですか?」

少年の問いに、貴婦人は少しの沈黙の後、穏やかに笑った。


「さあ……どうだろうね。

逃げられなかった人たちもいたし……

あの隣の牢にいる者たちを見れば、

成功とは言えないかもしれない。」


すると、別の囚人が弱々しく口を開いた。

「どうか自分を責めないでください。

伯爵さまとあなたの指揮のおかげで、

犠牲は最小限で済んだのです。」


その言葉に、他の者たちもうなずいた。

「そうです。私たちがまだ生きているのは、あなた方のおかげです。」


貴婦人は目を閉じ、深く頭を下げた。


「……申し訳ありません。

こんなところにあなた方を閉じ込めてしまって。」


しかし群衆の声がそれを制した。


「顔を上げてください、夫人!

あなたはこの絶望の中で、希望を守り抜いた方です!」


その言葉に、貴婦人の瞳が潤んだ。

彼女はゆっくりと顔を上げ、隣に立つマントの男を見つめた。


「……そして、彼を忘れないでください。」


「彼がいなければ、

私はあのまま無残に殺されていたでしょう。」


その言葉に、男は目を見開いた。

そして少し俯きながら、照れたように呟いた。


「そこまで言われるほどのことではありません。」


貴婦人はその様子を見て、くすっと笑った。


「ふふ……なんだか可愛い方ね。」


地下牢の空気はまだ冷たかったが、

その瞬間だけは、

誰かの笑い声が、静かに温もりを広げていた。

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