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第21話

第21話


しばらくして、二人は地下牢の前にたどり着いた。

空気は湿り気を帯び、血と錆の臭いが入り混じっていた。

壁に掛けられた一つのランプが、不安げに揺らめきながら長い影を揺らしている。


その時、廊下の奥から金属がぶつかる音が響いた。

一人の兵士が、訝しげな顔で階段の方へと歩いてきていた。

足音が近づくにつれ、マントの男は身をかがめた。


しかし、様子がおかしかった。

彼の歩みが突然よろけ、身体がふらついたのだ。

「……っ!」

片膝をつき、荒い息を吐く。

どうやら、かなり身体の調子が悪いらしい。


貴婦人は驚き、慌てて駆け寄った。

「大丈夫?」


見た目にも状態は悪かった。

その時、兵士が二人に気づいた。


「誰だ! そこで何をしている!」


兵士は剣を抜き、勢いよく突進してきた。

マントの男は反射的に、拾った剣を構えた。

冷たい金属音が地下の廊下に響く。


「はぁっ……!」


火花が散る。

だが次の瞬間――


ガキィンッ!


彼の剣は耐え切れず、粉々に砕け散った。

「……っ!」


兵士は再び剣を振り下ろした。

男は身をかわそうとしたが、身体が言うことをきかなかった。

片足が崩れ落ちるように力を失う。


その時――


ドガァンッ!!


轟音とともに、貴婦人の拳が兵士の腹部を撃ち抜いた。

兵士の身体は天井へと叩きつけられ、そのまま壁に突き刺さる。

粉塵と血が同時に舞い散った。


一瞬の静寂。


マントの男はその光景を見て、目を見開いた。

「……強い。やっぱり……。」


貴婦人は彼の方へ歩み寄り、笑みを浮かべながら言った。

「大丈夫?」


息を荒げる彼を支え、彼女はその腕を自分の肩に回して背負った。

裸足の足裏が血に濡れた石畳を踏むたび、かすかな音が鳴る。


「さあ……中へ入りましょう。」


二人は力を振り絞り、地下牢の扉を開けて中へと入った。

内部は冷たく、そして暗かった。

狭い廊下の奥に、小さな指揮室のような部屋が見えた。


二人は部屋を探り始めた。

机の上には古びた地図、壊れた通信装置、そしていくつもの金属の鍵が散らばっていた。


「……これは?」


貴婦人が問うと、マントの男は鍵を手に取った。

「牢の錠前用のものだと思います。」


二人は互いを見つめ、うなずき合った。

そして暗い地下の廊下――鉄格子がずらりと並ぶ牢の奥へと歩き出した。


灯りは徐々に弱まり、

遠くから、人の息づかいが微かに響いてきた。


二人の手には、一握りの希望のように、

冷たい鍵が光っていた。

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