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第20話

第20話


二人は身を隠しながら、地下室へと続く通路を慎重に降りていった。

闇が深まるにつれ、空気は冷たく湿り、

金属と埃の臭いが鼻を突いた。


マントの男が前を歩きながら、ふと尋ねた。

「中央王国の貴族というのは……皆、あなたのような方なのですか?

なんというか、とても格好いい印象を受けます。」


その言葉に、貴婦人は笑みを浮かべた。

「ふふっ、そんなことはないわ。

そうじゃない者も多いけれど……まあ、中にはそういう者もいるの。」


彼女は小さく息を吐き、言葉を続けた。

「ちなみに、私は子どものころから少し自由奔放でね。

我が家はもともと商人出身の伯爵家なの。

だから冒険に出たこともあるし、商人としてお金もたくさん稼いだ。

今は貴族として制約も多いけど……それでも諦めずにやっているわ。」


彼女は少し誇らしげに微笑んだ。

「見た目によらず、中央貴族の中ではうちの家、そこそこ知られてるのよ。

……それにしても、私はまだあなたが誰なのか知らないけど……

あなたはきっと、いい人ね。」


マントの男はその言葉にしばらく沈黙した後、

静かに尋ねた。

「……あなたは、死の直前でも目標を捨てないのですか?」


貴婦人は唇の端を上げ、力強く答えた。

「当たり前でしょう?

諦めたら――私の性格じゃ、恥ずかしくて死んじゃうわよ。ははは。」


その笑い声は明るかったが、

その奥には揺るぎない意志の光があった。


男は驚いたように目を見開き、

そして小さく、まるで独り言のように呟いた。

「……まだこんな場所にも、面白くて格好いい“子ども”が残っていたのですね。」


「子ども……?」

貴婦人は不思議そうに首を傾げた。

彼の言葉には、どこか異国のような、理解しがたい響きがあった。

しかし、男はそれ以上何も言わず、静かに歩みを進めた。


地下へと続く通路は果てしなく長かった。

湿った石の壁に水滴が落ちる音が反響し、

どこかで鎖が揺れる微かな音がした。


やがて、二人は地下二階付近まで降りてきた。

壁際に灯された古いランプの火が、かすかに揺れていた。


貴婦人は男から自爆装置を受け取った。

彼女は深く息を吸い込み、短く言った。

「耳を塞いで――走って。」


「え?」

「早く!」


その叫びと同時に、男は反射的に耳を塞いだ。

次の瞬間――


ドォォォンッ!!


轟音が響き渡り、

官庁全体が揺れるほどの爆発が起こった。

熱風と粉塵が渦を巻き、壁の石が崩れ落ちた。


「走って!!」

貴婦人の叫びが爆音の中で響いた。

二人は傾いた通路を駆け抜け、

崩れゆく瓦礫を避けながら地下の奥へと飛び込んだ。


しばらくして、二人は息を切らしながら立ち止まった。

目の前には巨大な鉄の扉が立ちはだかっていた。

錆びついた閂の向こうから、

かすかに人々の声が聞こえてくる。


「……地下牢だ。」


貴婦人が低く呟いた。

二人は短く視線を交わし、

無言のまま鉄扉へと歩み寄った。

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