エルダンカ国 マリア姫との親睦 99
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
マリア皇女はパンを一口かじりながら、ゆきなとえれなを見つめた。
「いつか地球も訪れてみたいですね」
「光栄ですわ。綺麗な星ですので。友好関係が結ばれましたら、ぜひおいでくださいませ」
社交辞令めいたゆきなの返答だったが、心の中では「……まだ地球はちょっと無理かなぁ」と思っていた。
「大使もおっしゃっていました。ぜひ、我が国にもお越しくださいませ」
そう言ってマリアは、星図の入ったタブレットを手渡してくる。
「ぜひお二方とお友達になりたいですわ」
「こちらこそぜひ」
「まだ少し……お時間があるの。よろしければ、一緒にいかがですか?」
「いいですわね♪」
「ところで……私たちも人のこと言えないのですが、そろそろラフな格好に着替えては?」
「あっ、そうね! じゃあ着替えてきます!」
ふわっと立ち上がり、はしゃぎながら去っていくマリア皇女。
その後ろ姿を見送りながら、えれながぽつり。
「……なんか、同い年くらいに感じますね」
「何歳なのかしらね……長寿かもしれないし、ちょっと聞くの怖いわ」
と笑うゆきな。
⸻
フレアスカート姿で戻ってきたマリア皇女は、先ほどよりもぐっと親しみやすさを感じさせた。
「では、行きましょうか」
「そうですね」
「宇宙基地は、ほとんどご覧になったんですよね?」
「はい。もう生活を始めて2週間ほどになります」
「では、私たちの船へご案内して……その後、小型機で少し外に出てみませんか?」
「……宇宙に?」
側に控えていたお付きの者たちが、やや不安げな表情になる。
「はい、お願いします♪」
と笑顔で即答するマリア。
「……もう無理だ……」
と誰かが小声でつぶやいたのが聞こえた。
「何をおっしゃってるの。私たち、ゆきな様とえれな様に助けていただいてなかったら、今ここにはいないのよ?」
その言葉に、お付きの者たちはハッとした顔で静かに頷いた。
「では、こちらへ」
「今さらですが、タメ口でいいですか?」
「もちろん! ぜひタメ口でおねがいします!」
「では改めて……マリア、天の川銀河調査船ハナフライムへの乗船を許可します」
⸻
扉が自動で開き、マリアが一歩足を踏み入れた瞬間、思わず息を呑んだ。
「……なんか、すごくいい匂いがします。心が落ち着くというか……」
「うさぎさんロボットたちが、清掃してくれてるの」
「柑橘系のみかんの洗剤を使ってるんですよ」
「わぁ……」
「ほら、あれがうさぎさんロボット」
「きゃ、可愛いっ。……欲しくなっちゃいます」
「それはダメですけどね」
「ですよね!」
—
「では、こちらがブリッジ。今日は特別に」
「おぉ……全体が見渡せるのですね」
「それに……これは畳?!」
「そう、日本の伝統的な床素材」
「しかも……え、ブリッジにキッチン?!」
「お姉様のこだわりです。お茶も淹れられるし、すぐに何でも用意できるんですよ」
扉を開けると——
「わぁぁ! ソニックシャワー室!」
倉庫の扉も開けてみる。
「……お布団……?」
「長時間の任務の時は、畳でごろごろ。寝転んでみていいですよ」
「なんか、いい香りが……」
「いぐさの香りです。落ち着きますよね」
—
「この艦だけは特別。他の艦は普通のベッドと合成機しかありませんから」
—
「さて、次はこちら。シミュレーション室です」
「わぁ……!」
艦内モニターに表示される星々。
「調査船ですので、星のスキャニングやイメージ確認ができるんです」
「銀河連邦の星図もあります。詳細はまだ不明ですが……」
「では、この星図のここを見てください」
マリアが指差す。
「ここから14.3銀河の位置にあります」
画面には、緑と青の惑星に、月が2つ浮かぶ幻想的なビジョン。
「こちらが私の故郷となります」
「わぁ……綺麗……」
「来週には帰還許可が出る見込みです。もしよければ、お父様からも——お招きのお言葉をいただいております」
「分かりました。今は作戦等で忙しいですが、落ち着いたらぜひ訪問させていただきます」
「楽しみにしておりますわ」
⸻
■ 小型機にて、外宇宙クルーズへ
「こちらが小型宇宙船。ワープ2まで対応、ちょこっと任務にも便利なんです」
「ただ……二人乗りなのです」
「今日はせっかくなので、この宇宙ステーションを一周してみますか?」
「わぁ、いいですね!」
「えれなとご一緒にどうぞ〜♪」
「え〜お姉ちゃん、自分ので行く気ですねっ」
「今日は着物だからリンク率低いの。無理はできないわ」
—
【通信:ピッ】
「こちら管制ゆきな司令なにかございますか?」
「こちらゆきな司令。二機、小型機で外に出たいのですが、許可いただけますか?」
「目的は?」
「惑星一周と、ステーションの外周確認です」
「了解。確認中……」
「許可が出ました。安全な航海を」
「ありがとう!」
—
「ゆきなさんとえれなさん、司令官クラスなんですね。すごいです!」
「……はは、なんかそうなっちゃってるのよね」
—
二人はそれぞれ小型機に乗り込む。
「では私はリンクスタート」
「ゆきな様、おかえりなさいませ。リンク率73%。無理はなさらぬよう」
「……もう、えれなと同じこと言うんだから」
「安全のために、お願いしますね」
「分かったわ。じゃ、行きましょう!」
—
「ハナフライムより管制へ。二機、出発します。準惑星ルートで」
「了解。安全な航路を」
—
ドックから発進すると、そこには宇宙の絶景が広がっていた。
星々のきらめき、壮大な宇宙基地、そして広がる連邦の巨大さ。
「……でかいわね」
「この宇宙基地、人口1300万人ほどだそうですよ」
「うわ、それはでかいわ……」
—
一方、もう一機からはえれなとマリアの楽しげな声が届いてくる。
「きゃー!見て見て!」
「えへへっ!綺麗っ!」
2人の様子を見ながら、ゆきなは微笑んだ。
——やっぱり、少し年下のような気がするわね……。
どこかの艦からか通信が各艦に入るのだった。
「な、なんだあの人形……いや、巨大スーツは!?」
「人……いや、サイズ的にはあれ、20メートル超えてるぞ」
「しかも……めちゃくちゃ速い!!」
ザワつきが広がる。
年齢を聞くのが怖いですね・・・・世界が広がっていきます。
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