表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/124

食べられそうになる ゆきな? 96

とある家族の女子高生 と AI

宇宙ステーションの日常を描いた物語


パイロットスーツのフィット感と調整


用意されていたパイロットスーツが、座席横に畳まれていた。


「ふふ、サイズもぴったりにしてくれてるのね」


ゆきなは軽く息をついて、静かにチャックを下ろす。

コクピットは、艦内灯だけが優しく光る。

着ているものを脱ぎ、スーツに腕を通す。


「背中、ぴたっとくる感じ……さすが専用設計」


ブーツを履いて、首元までファスナーを閉じる。

腰のベルトを留めると、ぴしっと音が鳴った。


「パイロットスーツ、いかがですか?」


「わかったわ。これが……ナノプローブスーツなのよね?」


「はい。呼吸や筋肉の動きに応じて、リアルタイムで最適化されます」


「少し、胸が……苦しいかも」


「調整いたします。——お若いですので、少しサイズが変化しているようです」


「……ちょっと恥ずかしいけど、楽になったわ」


「では、再リンクスタート」


「リンク率……98.8%。現在、思考による直操作が可能です」


視界の先に、美しく淡い光を放つ星が現れる。


「あの惑星、綺麗ね」


「氷の惑星ですね。中へ進入しても、環境保護シールドがあるため問題ありません」


星を飛んでいると綺麗な雪山


挿絵(By みてみん)


「楽しいわね……」


通信が入る。


「お姉ちゃん! あまり無茶なさらないでください!」


「大丈夫よ〜。すごい良いアシスタントもいるし!」


その時——

下方から、モニターが巨大反応を検出。


「下より巨大反応! 増大中! 危険レベルA!」


「速度アップ! え、ちょっ——」


「ばこーーーーーーーーーーん!!」


「ぐがーーーーーーー!!」


「うわーーーーーーっ!? 食べられるとこだった!!」


挿絵(By みてみん)


「……でも、多分美味しく食べられるかと存じます」


「えーーーーー!? もう、言わんこっちゃない! 早く戻ってきてください!!」


「えれなに……怒られちゃったわ。戻りますか――」


そう呟いた瞬間、コクピットの外、異様な影がちらつく。


「……ちょっと無理かも」


通信越しのえれなが身を乗り出す。


「どういう意味ですか!?」


「なんか……でかいのがいっぱいいるのよね。鳥というか、怪獣というか、山みたいなやつらが、美味しそうに私を見てるの!」


挿絵(By みてみん)


「お姉様! そんなのんきな声で言わないでください! 逃げてください、逃げるか、なんとかしてください!!」


「なんとかって言っても、囲まれてるし〜。なるべく殺したくはないのよね……あ、装備ってあったかしら」


「マシンモードに変形!」


「融合炉リンクスタート。防御バリア展開、半径30m……ビリビリ衝撃波で防御可能です」


「びっくりして逃げてくれるといいけど……多分逃げるかも?」


「お姉様!? 冗談言ってる場合ですか!? 」


「ごめんね、食べられたら」


「何言ってるんですか!?!?!?!?!?!?」


マシンモードが完成し、青白いバリアが周囲に放たれる。鳥たち——いや、巨大な生物たちはその光に驚き、じわじわと距離を取る。


「押し出しモード、展開します」


ずず……っという音とともに、機体ごとゆっくり前進。

何匹かバリアの縁に接触して落下する。


「えっ、落ちちゃった……死んだ?」


「落下中に羽ばたいて戻ってきてますね」


「よかった〜! とりあえず、宇宙に逃げましょう!」



「えれな、食べられなかった!!」


「それは良かったですけど!?!?」


モニター越しのえれなが呆れ顔で返す。


「とりあえず戻ってきてください」


「え〜〜? まだ遊べそうじゃない?」


「ダメです!今後スーツごと没収しますよ!!」


「わ、わかったってば〜! 変形飛行モード、ワープ開始。ノアリエルへ帰還ルート、スタート」


→「ワープアウト」


→「中央都市 管制、応答願います」


「おかえりなさいませ。なお、えれな様が現在、おかんむりです。直通帰還ルートをご希望ですか?」


「……うーん。空中都市のあのレストラン寄ってから帰るってのはどう?」


「だーーーめーーーーです!!」


すぐに割り込み通信が飛び込む。


「嘘です嘘です、戻りますからっ!!」


工場の出入口、モニターが開き、パイロットスーツを着たゆきなが現れる。


「お姉様!! もうっ……でも……そのスーツ、素敵ですね」


挿絵(By みてみん)


「でしょう? かっこいいのよ?」


「とりあげますからね」


「ダメー!! 気に入ったのー!!」


「もうっ……無理はしないでください。消化されたお姉様なんて見たくないですから!」


「いや〜、でも性能すごかったわよ? そういえばこのオプション装備ってなに?」


「大型出力砲と、大型ブレードです。なお、現在は試作機仕様です」


「もちろん……三機発注済みなのよね?」


「はい。お姉様用、弟くん用、わたしようとして。こちらが第一号です」


「とりあえず、ハナフライムに積んでおきますね」


「ありがとう〜♪」


「……で、どこでまた遊ぶつもりですか?」


「ふふふ〜、楽しみね。どこの星にしようかしら?」


——と、楽しそうに笑うゆきなだった。


「続く」——そんな文字が浮かび上がりそうな展開に、えれなは微笑みながらも、胸の奥に小さな決意を灯していた。


「お姉様を…守らなきゃ」


心の中で、そっとそう呟く。


「えれな、終わったの?」


「はい、完了しました」


「じゃあさ、お昼食べよ〜!」


「そうですね…空中都市のカフェにしましょうか?」


「うんうん!あそこで食べたい気分!」


ハナフライム号へと乗り込むゆきなとえれな。

しかしその裏で、ゆきながまだ知らない“巨大な計画”が静かに進行していた。


「…行かれてしまいましたね」


「ええ、まあ、完成させたのはいいけど……この特別艦、本当に使う日が来るんでしょうかね」


肩をすくめながらも、工場のスタッフたちはどこか楽しげだ。


「まあまあ、えれな様が関与してるなら、いずれ必要になると予測してるんだろう。あの方の読みは的確ですから」


「ま、そういうことにしておこう。特別艦なんてそうそう出番はないに越したことはないさ」


どこか軽やかで、頼もしい空気が工場内に満ちていた。


そのとき、工場長がにやりと笑いながら言った。


「ところでさ、オプションパーツのコンテストでもやらないか?」


「それいいですね!テーマ決めて、パーツ案を投稿するってやつ!」


「よし、Web掲示板にでも貼り出しておけ」


「了解ですっ!」


盛り上がる工場スタッフたち。

その一方で、ゆきなたちは知らぬまま、空中都市の青空の下へと向かっていくのだった——。

楽しんできた ゆきな艦長 いいなあ 私のも欲しいなあ と思うこの頃です。

★評価・★ブックマーク・★アクションをお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
プテラノドンどもはもしかしたら食欲じゃなくってあの子可愛い!是非嫁に!!って集まってる可能性
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ