インターバル、えれなの“ほえほえタイム” 94
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
5回戦、朝から始まる快進撃
翌日、土曜日の朝。
応援席には、またもや理科部とテニス部の仲間たちが集結していた。
「えれなちゃーん、がんばれー!」
「昨日より人増えてるじゃん!」と笑うゆきな。
5回戦が始まると、最初にサーブを取られたものの、そこからはえれなの圧倒的なテンポ。
6-1で快勝。
「えれな、すごいじゃない!」
「なんとかっ!」と笑顔でハイタッチ。
しかし、次の6回戦からは2セット先取のルールに変わり、相手も小学生時代から全国を渡り歩いたジュニア育成組だった。
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6回戦、接戦を制す
第1セットは、えれなが読み負けて4-6で落とす。
「……これは、きびしいかも」
観客席がざわつく中、えれなは静かに立ち上がり、深呼吸をする。
そして第2セット、見違えるような動き。
スピン、コース、フットワークすべてがかみ合い、6-1で奪い返した。
「これは……行ける!」と部長が叫ぶ。
そして最終セット、気持ちの勝負。
2人の強い思いがぶつかる中、6-4で競り勝つ。
ベスト4進出!
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インターバル、えれなの“ほえほえタイム”
7回戦前、1時間の休憩インターバル。
控室では、えれながタオルを被って、**「ほえぇぇぇぇ……」**と、ぽけ〜っとみすずちゃんと並んで座っていた。
「……あんた、ほんとに勝った直後とは思えないわ」
ゆきなが笑いながらスポーツドリンクを渡す。
「でもすごかったよ、えれな」
「ありがとうございます。……ちょっと疲れましたぁ〜〜〜」
そこには、勝利の余韻と、周囲の温かい空気、そして次の戦いへの静かな気合いがあった。
**「えれな、怪物の名を冠す」——決勝戦と未来へつながる一歩**
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準決勝前、至れり尽くせりのマッサージタイム
「あしもみもみ〜〜、うでもみもみ〜〜」
控室で、理科部&テニス部連合マッサージ隊に囲まれていたのは、もちろんえれな。
「えれなちゃん、やわらか〜い……」
「ほらアイマスクもつけて〜!」
次々に差し出されるタオル、アイマスク、ハンドマッサージ機。
まるで姫様待遇のえれなは、されるがままにされながら小声でつぶやく。
「……あ、準決勝、呼ばれた」
「むくっ!」と起き上がり、爽やかな笑顔を浮かべる。
その笑顔が、何よりの武器だった。
「行ってきます!」
体が軽い。
「みんながマッサージしてくれたおかげかな」
そう思いながら、コートへ歩を進める。
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「……見てた。隣の試合。全力で叩く」
その心の決意の通り、えれなのプレーは完璧だった。
サービスエース。ストレート。スマッシュ。
あらゆるショットが冴えわたり、1ポイントも与えずに2セット連取。
6-0、6-0。
スタンドがざわめく。
「今年は怪物が現れた」
「このままじゃ、インターハイ常連校も危ないぞ……!」
「あっいたっ!」
ラフな服装でふらっと現れた女性がいた。
「えっ……元佐々⭕️プロ!?」
にっこりウインクするその人は、惑星遠征でもらったという青いテニスウェアを身にまとっていた。
「決勝残ると思って来たのよ〜。差し入れ持ってきたわ」
綺麗にカットされた柑橘が並ぶ。
「これ、せとかっていうの。甘くて、消化に良くて、試合前にぴったりよ」
「澄み渡ります……!」
もはや感想が“声”になるえれな。かわいい。
「そうだ、大臣もしユニフォーム要るなら、**予備ありますよ!」
「えっ! ほんとうーー! 嬉しいなあ!」
**“嬉しいなあ”**が、心からの嬉しさを物語っていた。
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副大臣からの戦術アドバイス
「次の相手は?」
「……スピード重視の子ですね。苦戦するかも」
副大臣はうなずきながら言う。
「コースは完璧なんだから、“速さと遅さ”をミックスしなさい。足がついてこなくなるわよ」
「なるほど……“こちらのペース”に引き込むんですね」
「甘い球が来た時に決めるの。無理せず、焦らず、ゆっくり・早く・またゆっくり。ねっ?」
「……ほんと、監督みたいですね!」
⸻
「アナウンスいたします。決勝戦はセンターコートで行います!」
「お姉ちゃん、リストバンド借りてもいいですか?」
「いいわよ〜。べちょべちょだもんね」
「はいっ!」
バッグから渡されたリストバンドをつけたえれなは、にこにこしながら歩き出す。
「いってらっしゃーい!」
みんなが手を振る観覧席へと向かっていく。
——まだ新しい人生が始まって半年も経っていないけれど、これだけの人が私を応援してくれてる。勝ちたい。勝つんだ。
えれなは、強く心に刻んだ。
⸻
第1セットは、どちらも自分のサービスをきっちりキープする立ち上がり。
だが、1本のミスでリズムを崩し、えれなはセットを失う。
しかし誰一人として落胆しない。
みんなが、信じている目で見ていた。
「これだけ走ってたら……足にくるわよ」
その“瞬間”は突然来た。
第2セット・4ゲーム目、相手が足をもつれさせて転倒。
流れが一気に変わる。
えれなが6-3で取り返す!
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3-3の場面で、えれなは“温存していた”最速サーブと、“さらにゆっくりしたスライス”を解禁。
「混ぜる――いま!」
相手はついてこられず、えれなが5-3とリード。
相手がギリギリで右に飛んだ時、左へ落とすドロップショット。
それに食らいついて返した球を、えれなはすでに読んでいた。
構えていた彼女が打ったのは――
羽が生えたような、完璧なスマッシュ。
「……綺麗ね」
観客たちがそうつぶやいた。
⸻
県大会優勝、そしてスカウトの誘い
ゲーム・セット・えれな。
優勝が決まった。
優勝メダルと賞状を受け取り、みんなと記念撮影。
……帰り道。
「そこの君。うちの高校に編入しないかね? 総体、行けるぞ」
突然声をかけてきたのは、対戦相手の監督。
「……いえ。私はこの高校で、総体に行きたいです」
「それは無理だろう」
声が一段高くなる。
「私も、篠塚部長もいますけど?」
「えっ……去年推薦断った……あの……」
「失礼ですね」
声が響く。
「**私が臨時コーチです。**何が“無理”なんです?」
そこに立っていたのは、佐々⭕️元プロ・現副大臣。
相手監督は、顔を引きつらせたまま黙るしかなかった。
「では、総体予選でお会いしましょう♪」
「……コーチ、かっこいいーーー!」
みんなが一斉に尊敬のまなざしを向ける。
「副大臣、お忙しいのでは……?」
「まぁね。でも、なんとかなるわ!」
その笑顔が、とてもまぶしかった。
県新人戦 優勝 やったね えれな♪
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