正装で向かう、中央ホログラム会議室 87
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「制服の方がいいかしら?」
ユリアに問うと、軽くうなずく。
「一応、お願いしたいとのことよ」
「お姉さま一応礼服制服着用で向かいましょう。」
結局いったん貴賓室に戻り、3人は揃って制服に着替える。
中央ホログラム会議室——そこは、完全にバーチャル空間とリンクされた次世代会議ホールだった。
中央円卓に着席すると、すぐに「オンライン」の文字が浮かび、室内の照明がゆるやかに会議仕様へと切り替わる。
向こう側にも、5つの座席が浮かび上がり、徐々に人影が座っていく。
⸻
「会議開始します」
重々しく、それでいて穏やかな声が響く。
「このたびは、輸送船および銀河連邦民を救助していただき、感謝の言葉しかありません」
画面に現れたのは、銀河連邦・総司令 ミヤギ、その隣には、副司令が2名、さらに同盟国より招かれた大使が2名、すでに着席していた。
各自己紹介から始まる。
こちらの番が来る。
「天の川銀河・調査船、艦長のゆきな、副艦長のえれなです」
「では、皆さまご着席を——」
司令が促すと同時に、映像が切り替わり、宇宙地図が立体的に投影された。
その時、一人の大使が立ち上がる。
「ご報告がございます。今回のスリープ保護対象者の中に、我がエルダンカ国 第二皇女——マリア姫が含まれておりました」
「絶望と見られていた状況の中での救出、誠に感謝いたします。あわせて国民10名も保護され、重ねて御礼申し上げます」
言葉の重みに、ゆきなは姿勢を正して深く頭を下げた。
「後ほど、改めてお話しの場をいただければ……」
「もちろんです。私たちも恐縮しております」
映像には、銀河全域の情勢が映し出される。
ここ100年で急速に拡大する侵攻域。大型艦による主砲の威力、そして数の暴力。
「技術的にはこちらが優位ですが、数で押され続けており、状況は厳しい。……そんな中で、今回の戦果は特筆に値します」
「7隻中、2隻拿捕、1隻逃亡、4隻撃破。そして——」
「銀河連邦輸送船の保護、緊急医療対応により、死亡者ゼロ」
「この功績を鑑み、今後、調査船艦長ゆきな様 副艦長えれな様には——」
■ 銀河連邦通行権の付与
■ エルダンカ星系を含む通行自由圏の認定
■ 銀河連邦勲章の授与
■ 基地司令官相当の公式地位保証
が、正式に承認される旨が告げられた。
「えっ、そこまでは……」
思わず言いかけたところで、ミヤギ総司令がにこやかに笑った。
「……まあ、もらってあげてください。これは皆の感謝の気持ちです」
「……わかりました。謹んで、お受けいたします」
その場で勲章は司令がつけてそのまま叙勲となる。
⸻
その瞬間、室内は小さな拍手と穏やかな光に包まれた。
ゆきなとえれな、そしてユリア艦長も——
未来に向かって、確かな一歩を踏み出していた。
決意と連携、そして新たなる共同作戦
「……では、決定事項はこれくらいで」
総司令ミヤギが姿勢を正し、改まって言葉を続ける。
「なお、技術の提供は——望みません。これは、失礼に当たると承知しております。ですが……」
彼は一瞬ためらい、深く一礼する。
「同盟国とは言いません。ですが、連携ぐらいは……結ばせていただけないでしょうか?」
その言葉に、会議室の空気が静まり返る。
「……わかりましたわ」
ゆきながまっすぐに総司令を見つめ、微笑んでうなずいた。
「連携協定は結びましょう。ただし、どうしてもの時は、きちんとご相談の上でね」
「……感謝いたします」
⸻
提案と、静かな衝撃
「こちらからも、一つ提案があります」
ゆきなが言葉を続ける。
「敵国の母星——ご存知でしょうか?」
総司令たちは顔を見合わせる。
「……ある程度の位置は、把握しております。古い情報ですが」
「では、現在こちらで拿捕している大型艦については?」
一瞬、総司令の目が見開かれ、そして頷いた。
「……まさか」
「この艦を調査すれば、母星や工場の位置が判明するかもしれません。もしその制作拠点を叩ければ、流れは変わるかと」
「そんなことが……可能ですか?」
「かなり深い領域です。しかも反対側」
ふっとゆきなが笑みを浮かべる。
「機密ですが——こちらの反対側の世界に通じるゲートを発見しております」
「ガタッ!」
総司令と副司令が同時に立ち上がる。
「そのゲートは強力なシールドで守られていますが、現在——その持ち主と良好な関係を築いております」
「……それは……」
「それと、先日報告にあった通り、私たちはステルス迷彩技術を保有しています」
「はい。聞いております」
「物体の“存在感”までは感じ取れるかもしれませんが、正確な位置の特定は不可能でしょう」
「……その通りかと思います」
「では、2番艦にてステルス迷彩を実演します。検知をお願いできますか?」
会議室の大型モニターに、艦外の映像が映し出される。並んでいる2隻の《ハナフライム》。
「えれな、迷彩発動」
「了解いたしました。——迷彩、開始します」
青白い霧のような光が艦を包み——一瞬後、完全に姿を消した。
「……どう? 測定できるかしら」
「……各種レーダー、超音波、重力波、全てで検知試行中……」
「わずかに異常値あり。しかし座標特定は不可能です」
「この状態で敵本拠地を偵察し、作戦立案が可能です。問題は——**そのゲートを通るための“試験”**が必要なこと」
「……“道徳”のテストですね」
「ええ。かなり厳格ですが、通過可能な者だけが通れるのです」
「承知しました。共同作戦として、ぜひお願いしたい」
「こちらも、テストを通りそうな人材を厳選します」
——こうして、初めての正式な共同作戦が成立した。
⸻
新たな約束と、未来の結び目
「開始は……1.5ヶ月後。艦艇はこちらが提供します」
「……ありがたくお言葉に甘えます」
「……ねえ、ユリア夫妻も参加してもらえると嬉しいんだけど」
ゆきながちらりと笑って、ぶっちゃける。
「もう結婚してるんじゃないの?」とウインク。
「……考慮します」
ユリアが照れ隠しに微笑む。
「じゃあ、1ヶ月間は各自、拿捕艦の徹底調査。その後、結婚式明けに作戦会議でいかが?」
「申し分ありません」
そして、ゆきながふと全体を見渡し、真剣なまなざしで言った。
「でも皆さん。ここで、ちゃんと言っておきます」
「私は、戦争は嫌いです。……だからこそ、“立て直し”のあとは——防衛装置や境界対策を一緒に考えましょう」
「……承知しました」
総司令は、穏やかに、しかし力強く頷いた。
「——笑顔を守るための連携ですね」
「ええ、そう。私たちは“守る側”でいたいの」
はっきりと物事を言うゆきな 戦争は嫌いなんです!
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