救助した人との友情と帰還への架け橋 83
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「ありがとう、えれな。……一瞬、本当に死んだかと思ったわ。でも、2番艦、3番艦が……あるとは……」
「びっくりしましたよね」
「いつから稼働してたの?」
「正式運用は、先日の銀河連邦救助任務の後からです。ノアリエル2回目の出立時には、3台で同期運転を始めました」
「……単独でいくら強力でも、大型主砲を連続で食らったら危険。1番艦を守るための布陣だったのね」
「はい。主要システムは本艦側で設計し、船体と融合炉まではノアリエルに発注しています。あと、3艦追加発注中で、1艦は特殊仕様です」
「まあ、任せた以上文句は言わないわ。でも、助かったわ。ありがとう」
⸻
「艦長……ひとつ、悩ましい報告があります」
「えっ、なになに?」
「現在、合計127名の人類が『食料』として格納されていた形跡があります。逃走した艦の人類も転送の際に救出してあります。恐らく、敵の艦は深刻な飢餓状態にあると想像されます」
「……今、どんな状態?」
「90名ほどは意識を失い、休眠カプセルにいます。残りの37名は通常の牢に収容されていました。その中に、銀河連邦の士官と思われる人物も含まれています」
「37名の中で目を覚ましてる人はいる?」
「はい。上級士官2名、下士官を含めると10名ほどです」
「……じゃあ、下の客室にコーヒーと軽食を用意して」
「了解しました。転送場所は……?」
「いきなり部屋の中に転送するのは失礼よね。牢の外側へ私たちをお願い」
「承知しました」
シュワン――転送光の中から、落ち着いた気配の人物が2名姿を現す。
「こんにちは。こちらに銀河連邦の上級士官の方はいらっしゃるかしら?」
「私だ。補給隊・護衛艦艦長、エリオンだ。副艦長ミネルバも一緒だ」
「調査船、艦長ゆきな。こちらは副艦長えれなです」
⸻
「現状は把握されていますか?」
「……いや。アラートが鳴って敵が消えたことまではわかるが、その先は不明だ」
「それでは、お話しづらいと思いますので、打ち合わせスペースへどうぞ」
「ありがとう。では案内を頼む」
4名は《ハナフライム》の作戦ルームへと転送される。
「……すごいな。綺麗な艦だ」
「お褒めいただき光栄です。では、こちらのモニターをご覧ください」
映し出されるのは、アクセラ艦隊の銀河侵攻ルート。
「私たちの星系まで0.5銀河圏へ侵入。私たちは防衛任務にあたりました。大型艦7隻、小型艦含めて5600隻ほどです」
「……絶望しかない映像だな」
「交渉を試みましたが、先行した2隻より主砲の一斉発射があり、戦闘開始となりました。機密につき詳細は伏せますが、最終的に全艦に致命的損傷を与え、敵の運用は1隻を除いて不能となりました」
「その1隻に残っていた人類たちも……?」
「食料化される前に全員を転送で救出済みです」
「……感謝する」
エリオンが静かに手を差し出す。ゆきなはしっかりと握手で返した。
「とりあえず、コーヒーでもいかがですか? 少しだけチョコレートとお菓子も」
「いただこう。……甘くて苦くてほぅっとするな・・・」
⸻
「では艦長、本題に入ります」
「お願いします」
「現在127名の人類のうち、37名が覚醒状態。10名の下士官がおられます。銀河連邦所属の人数や他部族との識別も含め、判別をお願いできますか?」
「任せろ。すぐに確認しよう」
「ありがとうございます。終わり次第、ご希望の場所へ移送します。こちら、ミラステラ艦長ユリア様からいただいた銀河地図です」
「ユリア艦長! 元気か?」
「はい、元気です」
「そうか、それは良かった」
「移送先の候補としては?」
「現在地がここなら、《第12宇宙基地》が最適だ。連邦の最東端の大型ステーションだ。ミラステラもそちらへ向かっていたはず」
「36銀河の距離……通常で36時間。ちょっと遠いけど仕方ないですね」
深く礼をするエリオン。
「とりあえずこのバッジをお持ちください。通信用です。8名の下士官にも。あと、整理用にこちらのタブレットもお使いください」
「助かる。1人12名ほどなら、すぐ終わる」
「チョコレートも37枚、こちらです」
「お心遣い、感謝する」
シュワン。転送完了。
⸻
「……ゆきな艦長、どうやら今日中には帰れなさそうです」
「本当に。最低でも3日はかかるわね」
「中継衛星を通じて、地球との通信は可能ですが、少しラグが生じます」
「ありがとう。……お母さん、つなげてくれる?」
数秒後、画面にお母さんの顔が映る。
『ちょっとトラブル?』
「ううん、私たちのせいじゃないの。またちょっと“おせっかい”してるだけ」
『……いいわ、わかったわよ。3日ね。半日に一度は連絡しなさい』
「うん、ありがとう」
『しっかり、おせっかいしてらっしゃい』
「ありがとう。……いってきます」
画面が切れたあと、ゆきなは小さくため息をついた。
(まさか地球外とは思ってないよね……)
「通信ラグ、意外と少なかったわ」
「最大限調整しました。……教えられた通りにしただけです」
えれなが微笑む。
⸻
その後、エリオン艦長から報告が入る。
「銀河連邦民85名、他同盟国40名、2名は不明だが敵性ではない」
「ありがとう。休眠装置は電源をつなげば問題ない?」
「はい。動力さえあれば安定稼働します」
「じゃあ睡眠チームは2番艦と3番艦に分けて転送。ベッドごと移動して」
「了解しました」
「起きているチームはこの艦へ」
「はい」
「2隻には、ウサギ型アンドロイドを3体ずつ配置して、修復と支援を。状況が安定次第、火星へ進路変更」
「進行ルート、確認します」
「よし。じゃあ、皆さんを第12宇宙基地へ……皆様の家族のもとへ移送を始めましょう」
救助した人たちを家族のもとへ帰すべく第12宇宙基地まで進みます。
新しい関係性ができるのでしょうか楽しみです!
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