ワンピース部隊出動 ⑧
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「さてみんな〜、来月は天体観測合宿だよー!」
「おお〜!」
「それと、今日先生から両方とも保護者向けの許可プリント出るはずだから、明日ちゃんと持ってきてね〜!」
「了解でーす!」
「木曜日は朝いつも通り、8時半に学校集合だからね!」
と思ったら、先生が小走りで戻ってくる。
「OKだって〜!」
「先生、プリントは?」
「あっ……作ってない〜!」
部室内がずっこける空気に包まれたそのとき。
「こそっと……エレナ、作れてたりしない?」
「今、3秒で作ります」
カタカタカタッおとはないがそんなきがする——
「艦長できました。PDFをそこのパソコンに送りましたので、印刷可能です」
「だろうと思って作っておきました」
「さすが〜〜〜! できる部長だわ……先生がぼそっと」
「エレナ、ありがとう……こそっと!」
「いえいえ、こちらこそ。任務ですから」
「先生、私服で大丈夫?」
「うん、私服でオッケー! かわいくしてこー!」
⸻
木曜日はもうすぐ。
理科部の誇りと、未来の希望と、ちょっぴり不思議な“仲間”とともに——
彼女たちは、またひとつ未来へ進もうとしていた。
「……と思ったけど、去年の合宿用に理科部でワンピース買ったんだった」
「それなー!」
「おそろいで行こうよ〜!」
そう言うやいなや、部室の奥にある備品倉庫ががらがらっと開かれる。
「はいっ! じゃあ何色がいいー!? 早い者勝ちですよ〜!」
「きゃー! 水色ほしい!」「ピンク残ってる!?」「あっ、ラベンダーあった〜!」
わらわらと群がる後輩たち。みんな目がキラキラしている。
その様子を、部屋の隅で先生がポツンと見ていた。
「……いいなー」
「先生……」
「さすがにね、先生がその中に混じるのは……」
「明日は革靴にワンピース! で、統一だよ〜!」
「洗って、明後日ちゃんと着てきてね!」
「はーいっ!」
「プリントは写真でもOKサインもらったら、いつもの連絡アプリで送ってね〜!」
「はーい!」
と、その指示をテキパキ出すのは、もちろん艦長(=部長)である。
「……私より先生してる……」
いじいじと拗ねたように、先生が小さく呟いた。
「先生、顔、顔!」
「だって……先生なんだけど……先生じゃないみたいな気が……」
「じゃあ、ワンピース着ます?」
「……っ、ちょっとだけ悩んだじゃないか、今!」
部室中が笑いに包まれた。
⸻
次回、出発当日。
理科部のおそろいワンピース部隊、いよいよJAX⭕️へ出動——!
と思いきや翌日
テニス部の活動中――。
中学から続けていることもあり、そこそこには動ける。
思いきり汗をかくのは、とても気持ちがいい。
休憩中、ふと通知が届く。
エレナからだった。
「エレナ、完成いたしました」
「夜に見に行くねー」と返信を送り、スマートウォッチを閉じた。
「艦長、すごい心拍数ですね」
「そうよー、運動してるからね。鍛えることも大事なのよ」
「今度、一緒にやってみることは可能ですか?」
「ぜひ! でもね、意外と計算どおりにはいかないのよ。やってみると難しいから」
「お勉強しておきます」
そんなやり取りをしていると、部長が隣にやってくる。
「ゆきなさん、お隣いいかしら?」
「どうぞ、部長」
「私もそろそろ三年引退だわ。来年は部長、引き受けてくれないかしら?」
「ふふ、二つの部の部長掛け持ちはできませんよ」
「そう、そこなのよねぇ」
――というのも、理科部には三年生がいなかったため、二年生の私が部長を引き受けていたのだ。
「後任、悩んでるのよね」
「そうですねえ……2年生は、悩ましいところです」
「一度、名前なしの投票してみたらいかがですか?
あの一年生なんて、ジュニアからやってて上手いし、2年の私でも尊敬できますよ」
「わかったわ、ありがとう。同じ学年の子にも、それとなく聞いておきますね」
「気を使わせてしまって、ありがとう」
「いえいえ。――今度、先輩、一緒にお出かけしましょう!」
「ええ、ぜひお願いするわ」
そんな、いつも通りの一日が過ぎ、夜になった。
⸻
父――副艦長も帰宅し、すべての用事が終わると、
「さて、エレナの確認に行くか」と、父の部屋へ。
小さなバッジはそのまま置いていく。
⸻
「エレナ、準備オッケー?」
「艦長、副艦長。承知いたしました。転送いたします」
2回目の転送室に入る。
「艦長、そちらの起動エレベーターよりお越しください」
乗り込むと、
「どちらに参りますか?」
「エレナ、融合炉でいいの?」
「はい。艦長、お願いいたします」
ホワン、ホワン――と静かに起動するエレベーター。
「融合炉です。認証バッチの提示をお願いします」
父と二人で認証すると、扉が開いた。
そこに座っていたのは、一人の女性だった。
1週間
7話ありがとうございました。
もう1話お送りいたします。
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