宇宙修学旅行 テストの結果 79
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「学生はみんな合格だったって〜!」
いろんなところで合格通知を後輩たちはうけている。
教室のあちこちで喜びの声が上がっている。
合格組はすっかりワクワクモードで、
「どんな都市があるのかな?」
「服ってどこで買うの?」
なんて話題で持ちきりだ。
一方で、他の場所ではちらほらと浮かない顔をしている大人の姿も。
「…何が基準なんだよ」
「俺の方があいつより絶対マシだろ…」
「代わってくれって言われた」
なんて噂も聞こえる。
(ま、仮に変わってももう一回テストあるんだけどね…)
そう思いながらも、ゆきなは複雑な気持ちで周囲を見守る。
——でも、人って、見てる人にはちゃんと見えてる。
人となりって、そういうものだ。
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この日の朝練夕練習、テニス部は朝全力で走り回っていた。
試合形式でぐるぐる回して、とにかく汗をかいて、叫んで、笑って。
「スッキリしたーーーっ!」
爽快な気分でシャワーに駆け込む部員たち。
ロッカールームでえれながゆきなに近づいてきて、そっとスマホを見せる。
「お姉様、不合格になった方の追加枠で、再調整の指示が入りました」
「ありがとう、そのままメール送信お願い」
その時点で、ほぼすべての参加者が確定。
「…って、え、校長先生も行くの? うまくやったなあ…(笑)」
思わず吹き出しそうになる。
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数分後。
ゆきなの元に、JAX⭕️ から予定表が送られてきた。
(これは…私がみんなに説明してくれというのね)
すぐさまグループチャットを開き、全体にメッセージを送信。
「みんな、に説明したいことがあるので、お昼食べたら理科部室に集合でお願いします!」
先生にも手短に連絡して、校長先生にも回してもらう。
やがて理科部室には、テニス部メンバーや関係者も集まってきていた。
ゆきなはスッと立ち上がって、スマホの画面をスクリーンに共有する。
「皆さん、JAX⭕️から事前予定が届きました!」
「まず、日本チームは『つくば集合』が基本ですが…」
「高校生チームは——朝7時半に横須賀駅集合です! そこから歩いて横須〇地方総監部のヘリポートへ向かいます。そこで——」
「オスプレイに乗ってつくばへ!」
「所要時間は約30分、めっちゃ速い。さすがね〜」
「到着後は、宇宙飛行士たちとの面会と、施設紹介が約1時間。そのあと宇宙船が迎えに来ます!」
「そのままNAS⭕️へ行き、乗客を乗せて…その後、どこに行くかは不明だそうです」
(ここで、ゆきなが自分にツッコミ)
「なにひとつ分かってないじゃん!」
苦笑する部員たち。でもどこか、楽しそうだ。
「…私もね、あんまり細かく把握してないの。反省はしてます!」
そう言って照れ笑いを浮かべるゆきなに、みんながあたたかく笑い返す。
——そして、どこへ向かうか分からないからこそ、期待が高まる。
未知への第一歩は、いつだって少しだけ不安で、でもすごくワクワクするものなのだ。
理科部の資料も完成し、いよいよ当日がやってきた。
「みんなー!」
の掛け声とともに、部員たちは横須賀駅に集合。歩いて向かったのは、いつも乗り物フェスタで訪れるあの場所だ。入り口で身分証の提示を求められ、中へ入ると——
「あれ、ひゅうががいる!」
予定は急きょ変更され、発着はひゅうがの上からになったらしい。
その巨大な艦に全員乗り込み、すぐに発進。
びっくりするほど滑らかで美しい飛び出し方に、エレナが感嘆の声を上げる。
「すごい制御ですね」
「昔は事故も多かったみたいよ。今は日本も導入してるけど、私も初めて乗ったわ」
会話をしているうちに、気づけばもうつくばの上空。運動場にそのまま着陸した。
「本当に早いわね…」
まずは説明会場で、いつものJAX⭕️説明を受ける。
その後、あのときの船長が登場。名前を名乗ったその人は——大○さん。
あの時、近くで聞いた声、胸に輝くバッジ…間違いない。いろんな話をしてくれたあと、質問コーナーが始まる。
「はい!」
と理科部から声が上がる。
「今は助けていただいたことを理解していますが、発表前の段階で、不可能という計算結果が出ていました。こちらの計算を見ていただけますか?」
提出されたのは、成功確率4%という計算。ブースター到着まで最短28時間、落下まで推測10時間——その公開されたことのない数値に、船長の頬を一筋の涙が伝った。
みんなが驚く中、船長は笑顔を戻す。
「いや、すまない。あの時の状況を思い出してしまった。
詳細は言えないが…ほぼ間違いない。すごいな君たちは、ここまで理論的に証明できるなんて。あの時、一瞬だけ諦めかけた。でもな、誰一人諦めない4人のクルーがいた。その瞬間、最後までやり抜こうと決めたんだ。
みんなも、これから絶望を感じることがあるかもしれない。でも諦めないでほしい。無駄かもしれない、でもそれでいい。それが必ず君たちの成長になる」
その言葉に、部員たちの瞳がうるみ、涙がこぼれそうになる。
「さあ、悲しい話はここまでだ。今日は希望の日だ。こんなご招待は滅多にない、みんなで楽しもうじゃないか!」
力強い声が、心に深く響いた。
特別に案内された宇宙飛行士訓練施設。そこで——
「エレナ、ハナフライム起動」
「起動します」
離陸からわずか2分でつくば上空へ。そこから船の通信が入る。
『こちら調査船ハナフライム。お迎えに参りました。現在、上空でステルス迷彩中。名簿確認後、転送いたします』
諸星さんの合図で、全員が一斉に転送される。周囲の見学者たちはその光景に驚き、口を開けたまま。
転送先は整然と並んだ椅子が用意され、そこへ全員着席。
「船長、お久しぶりです。平和な形でまたお会いできて光栄です」
短い挨拶のあと、船は高速で種子島上空へ——なんと1分もかかっていない。その後、エリア5○へ資材転送、さらにNAS○ジョンソン宇宙センターへ。到着後、仲間たちが抱き合い、ジャックが握手を交わす。
さあみんなで宇宙旅行の始まりです!
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