学校が緊急事態 まさかのご招待? 77
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「学生の方には心当たりがございまして」
「いいわよ率直に許可を出す。」
その言葉を聞いた瞬間——ジャックさんと諸星さんが、少し慌てたように口を開いた。
「実は……この設備の燃料基礎技術を提供された方と、我々は正式に契約を交わしておりまして」
「現在の実験体制は、その方の支援あってこそ、成立しているのです」
「……えっ?」
「その方……高校生なんです」
「え?」
「今回、その高校の理科部、引率の先生方も含めて。あと、スポーツ系ということで……部活にも積極的な方でして、特に“テニス”をされています」
「……」
その瞬間——ぶっ、と吹き出しそうになったえれな。肩がぴくぴく震えている。
(まさか、私のこと言ってる……!?)
「……わかりましたわ」
艦長は必死に平静を装った。
「お二人が同時に推薦するなんて、よほど素晴らしい人たちなのでしょうね?」
「ええ、とても——」
「有望な方々です」
ジャックと諸星が、にこやかに返す。
「では今回、道徳試験については——事前と、搭乗中に2回実施します。前回の件で、人が途中で変わっていたという報告もありますので、その可能性も考慮した上で」
「承知しております。今回は、そのようなことがないよう、細心の注意を払います」
「それと……処理したようですが」
ゆきなが目線を少しだけ鋭くする。
「前回、毎回変わるパスワードと通信パスワード合計したものを解除コードにしておりましたが、通信パスワードがばれておりましたわ……」
「合計値としていなければ——最悪の結果になっていた可能性もあるのです」
「……!」
「おっしゃる通りです」
諸星さんもジャックさんも、きちんと頭を下げた。
「こちらも今後は、念入りに対応いたします」
少しの沈黙。そして——
「ぜひ参加したいのですが、国の許可も必要ですので……」
「ええ、もちろん分かっています。明日、正式なメールでお返事をいただければ」
「承知しました。必ず、良い返事をお届けします!」
「では、明日ご連絡をお待ちしていますわ」
——通信が終了し、ゆきなはため息をひとつ。
「えれな……理科部とテニス部、これはもう大騒ぎになるわよ」
「はい。今からでも少しずつ来客室準備しますか?」
「座席の準備もできる?」
「可能です。予備含めて360名ぐらいは対応できます。拡張オプションも展開可能です」
「ふふ、頼もしいわね。じゃあ、準備は万端に。明日は……忙しくなるわよ」
—
未来のヒーローたちを乗せた、星への扉がまた一歩近づいていた。
次なる旅は、理科部とテニス部の「夢の合同体験ミッション」かもしれない——!
次の日、学校。
普通の一日が始まったかと思いきや——
「ガチャッ」
突然、教室のドアが勢いよく開く。
入ってきたのは教頭先生。空気が一瞬ピリッとする。
担任の浅香先生に何やら耳打ち……
「えっ!?」と大きな声を上げた瞬間——
「……あっ、すみません。続きはこちらで。ゆきなさん、浅香先生、校長室までお願いします」
生徒たちがざわざわし始める中、2人は廊下へ。
「えっ、何かやらかした!?」とひそひそ声が飛び交うが……
「文部科学副大臣と、JAX〇の理事長がいらしてるそうです」
と、教頭先生が小声でぽつり。
「えぇえぇぇぇえ!?」
目を丸くするゆきなと浅香先生。
──校長室のドアを開けると、そこには見知った顔。
「お久しぶりです」
山◯理事長が微笑みながら立ち上がる。
「お初にお目にかかります」
隣には文部科学副大臣。なんと女性だ。
深々と頭を下げると、「いや、私JAX〇職員として以前からお会いしてますよ」とにっこり返される。
「そうですね」と、笑顔で握手。
「副大臣の佐々◯と申します」
品のある柔らかな口調で、名刺を差し出す。
「こちらが理科部顧問の浅香先生で、私の担任でもあります」
「ご紹介ありがとうございます」
浅香先生も丁寧に名刺を交換し、少し緊張気味に微笑む。
「……あ、ゆきなさん。はい、これ名刺です」
「わ、ありがとうございます」
JAXA理事長から手渡された名刺には、
《技術開発室 特許管理課 研究員》の肩書きが!
「えっ……!」
さすがのゆきなも一瞬固まる。
「……では、おかけください」
皆が座ったところで、副大臣が口を開く。
「これからお話しする内容は、守秘義務の対象になります。国家機密、ひいては国家反逆罪にも関わる重大な事案となります。サインをお願いします」
「私はすでに契約済みなので大丈夫ですよね?」
とゆきなが言うと、「はい、結構です」と即答される。
浅香先生も一枚一枚しっかり読みながら、サインをする。
そして——
「実は……テレビでも報道された、宇宙での救助劇、お聞きになりましたか?」
「はい」と2人はうなずく。
「実はあれ、“異文化交流”の端緒となる出来事でした。つまり、高度な文明を持つ星から、正式に“ご招待”をいただいたのです」
「え……!?」
校長先生も浅香先生も、目をまん丸にして絶句。
「招待されたのは、国際宇宙ステーションでの英雄5名。諸星理事、NAS〇のジャックさん——」
「えっ、ジャックさん!?」
と、ゆきなが反応すると、先生も「もしかして……」という表情。
「さらに、各国から功労者5名ずつ。そして学生からも選抜されることになりました」
「学生、ですか?」
「はい。理科部を代表して——ゆきな部長率いる理科部の皆さん。そして運動系からも、ゆきな副部長が所属する“テニス部”が招待対象に選ばれました」
「な、なるほど……!」
「日程は2泊3日。初日は“理科部のつくば見学”の後、そのまま宇宙旅行へと出発します」
「ええええええ!?」
信じられない話に、浅香先生も思わず声を漏らしていた。
——ついに始まる「宇宙への特別修学旅行」。
世界が注目するそのメンバーに、
この学校の“理科部”と“テニス部”が選ばれたのだった——!
まさかの・・・自分で自分を招待するゆきなとえれな
ばれずには行けますが・・・
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