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崖が崩れたらそこは宇宙ステーション♪  作者: Sukiza Selbi


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ノアリエル での新しい試み 76

とある家族の女子高生 と AI

宇宙ステーションの日常を描いた物語

「……ふと、えれなー。火星と中継って、今繋がる?」


「はいっ、可能ですよ。繋げますか?」


このとき、ゆきなはまだ、そこまで深くは考えていなかった。ただ、ふっと浮かんだだけだった。


「おお、じゃあノアリエル。あの街と通信できる?」


「接続可能です。繋ぎますね」

パネルを操作するえれな。数秒後、やわらかな声が届く。


『ゆきな様、通信ありがとうございます。ご用件はなんでしょうか?』


挿絵(By みてみん)


「ノアリエルの道徳試験……あれって、ランダム出題のコンピュータープログラムだったわよね。あれ、いただけないかしら?」


『内部に干渉しないという条件であれば、お渡し可能です』


「ええ、それでいいわ。逆に解除しようとしたら警報が鳴る仕様にしておいて」


『承知しました。ですが……ゆきな様、なにをお考えで?』


「地球の功労者に、ノアリエルへ2週間の旅行をプレゼントしようと思ってるの。道徳テストで60点以上、そして私たちが“この人だ”って思ったら——」


『素晴らしい考えです。問題ございません』


「この前思ったのよ」


ゆきなはふわりと微笑む。


「——あのカフェの店員さん、歌いたそうだった。シェフは料理をもっと作りたそうだった。ホテルマンはおもてなしを、誰かにちゃんといろんな人とやりたそうだった。ユニフォームの開発者も、新しいデザインを着てくれる人がいなくて寂しそうだった。あの完璧なテニスコートも、誰も使ってなかったわ」


「……そんな場所や人が、まだまだきっと、たくさんあると思うの」


「1泊2日か、2週間の選択制で滞在できるようにしたいの。費用は私が出す。残高カードを渡して、上限はあるけれど、ちゃんと楽しめるように設定するわ」


『技術の持ち出しは禁止として』


「でも服とか食べ物とか、文化的なものは持って帰ってもOKにしたいな。お土産文化っていいと思うし、商品化の検討もしてみて」


『万が一の不正者は?』


「ちゃんと事前に話は通しておく。支払いカードに監視装置を付けてもらう。そんな人いないと信じてるけど、念のためね。もし悪用したら、その人は出禁にするわ」


『……活性化につながるかと存じます。ゆきな様、そこまでこの星のことを想ってくださり、深く感謝申し上げます』


『最初にえれな様がアンドロイドだと知ったとき、我々は考えました。どうしてこのようなAIが育つのかと。でも今は、ゆきな様のそばにいたからだと納得できます』


「いかがですかえれな様」


「はいっ! 素敵なお姉ちゃんです!」


「ふふっ、ありがとうえれな。じゃあ、これで……中央コンピューターの判断をお願いしても?」


『はい。まずは山岳・海・空に限定し、工場は機密対象とし存在はなしにします』


「了解。あ、でも……先に皆さんで多数決が必要ね!」


『はい、実は……えれな様が以前より工場関係者と親しくされておりまして、山岳以外は点数票が入るかとまだ山岳は行ってないけどそこは大丈夫です。今後最初の訪問者を見て判断ダメなら出入りを外していいこととしましょう。』


「それはそれでいいわねでも、えれな、工場いつの間に!?」


「えへへ……この前、ちょっとだけお願いしてました〜」


『えれな様は工場でとても好かれておりますので』


「……ま、いいことだわね!」



地球とノアリエル、2つの星を結ぶささやかなプロジェクトが、今静かに始まりつつあった。

ゆきなとえれなの想いは、また一歩、誰かの未来へと繋がっていく——。


「ありがとう」


『いえ、こちらこそ。では、また』


「……あの、もし今後こちらからもお話ししたいことがあれば、通信してもよろしいですか?」


「もちろん! えれな、急ぎのときは私の携帯にも転送できる?」


「はい。お姉様と私へ同時に届くよう、司令基地の設定を調整しておきます」


「よろしくね。それじゃ、またね」


通信が切れると、ふっと静けさが戻った。


「さて次は……諸星さんとジャックさんに連絡を取っておきましょうか」


希望の時間を送信すると、2人とも“40分後”との返事。


「よし、それまでに——お風呂!」


「はいっ!」

エレナも嬉しそうに小さくガッツポーズ。2人でさっと入浴を済ませた。


ちょうど出た頃、ピピッと音が鳴る。

2つの通信窓が並んで開かれ、向こうには諸星さんとジャックさんの姿が映った。こちらは背景を宇宙船の映像に設定していた。


挿絵(By みてみん)


「通信依頼、びっくりしましたよ」とジャック。


「こんばんは、諸星さん、ジャックさん。最近は各国の友好も順調そうね?」


「はい。かなりの反響となっております」と諸星。


「ええ、とてもいい流れだと思いますわ。それで、こちらで測定していると、現在地球の核融合炉効率が——私たちの基準で5%を超えました」


「その通りです。各施設周辺の電力をまかなうだけでなく、CO₂の吸収清掃も順調に進んでおります」とジャックが補足する。


「それは素晴らしい成果ですわね。記念として、こちらからプレゼントを差し上げたいの」


「プレゼント……ですか?」


2人が目を見合わせる。


「はい。今後、費用や仕組みは交渉としますが……こちらの同水準の惑星へ、旅行してみたくないかしら?」


呆気に取られた2人。画面越しでも“ぽかーん”という顔が伝わってくる。


「基本的に旅行中、上下関係はなし。皆さん平等です。また、こちらで用意する“道徳問題”に合格した方だけに限定します」


「……ということは、不正などがあった場合は?」


「もちろん、出入り禁止。その上で、そちらの国でも重い罰をお願いしたいわ。技術の持ち出しは禁止。写真撮影も禁止。心の中にしまっておいて」


「ただし——衣類やお土産文化に関するものは持ち帰ってOK。滞在中の飲食も、自由にレストラン等を使って構わないわ」


「今後は、各国で功労のあった方々に2週間程度の旅をプレゼントする予定。でも今回は“先行招待”として、2泊3日でどうかしら?」


2人は再び驚く。


「まずは、国際宇宙ステーションの英雄たち5名、そしてジャックさん、諸星さん。お2人もどうぞ。それに、合格できそうな人材を各国から5名ずつ選んで」


「さらに……若い学生たちも。将来の希望よね。理科・文系・運動・スポーツ系から——それぞれ14名ずつ。合計56名を今回は招待するわ」


「各国の方々、いかがかしら?」


少しの沈黙。そして——


未来への扉が、またひとつ静かに開かれようとしていた。

地球と宇宙、心と心をつなぐ“希望の旅”は、もうすぐそこまで来ているのだった。

挿絵(By みてみん)

ついに地球からの旅行者が宇宙に飛び出します。

学生たちは誰が選ばれるのでしょうか?

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