銀河系間 星図作成開始・・・救助要請 73
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
翌朝。時計は4時半を指していた。
「……ふう」
ゆきなは、リビングでのんびり一人、コップに水を注ぐ。
「お姉ちゃん、早いっ!」
「ふふっ、目が覚めちゃってさ」
「お父さん、行くー?」
「……し、死んでる……寝かせてくれ……」
「じゃ、えれな、早いけど行こうか!」
「はいっ!」
* * *
まだ日の出の淡い朝
テニスコートで打ち合いをしていると――
そこに、パン屋のおじちゃんが現れる。
「おっ、ゆきちゃん! えれなちゃん! やろうぜー!」
いつもの“朝練”がはじまる。
「今日のユニフォーム、おそろいで綺麗だなぁ〜!」
「えへへっ。高校の公式ユニフォームなんです」
「えっ、2人、女子校だったのか!」
「そうですよ〜!」
しっかり汗をかいたあと、おじちゃんのパン屋で朝ごはんを買って、家に戻る。
パンをみんなに声をかけて、リビングで一息。
「お姉様」
エレナが静かに報告する。
「すべてのハナフライムの調整、試運転完了いたしました。宇宙船、現在ほぼ100%での運用が可能です」
「……ふふっ、頼もしいわね」
地球でも、宇宙でも。
変わらぬ毎日と、ちょっと未来の希望と――
今日もまた、ゆきなとエレナの時間が穏やかに動き出していた。
「じゃあ、朝早いし――お出かけしましょうか!」
「お母さん、パン置いといたよー!」
「はーい。行ってらっしゃーい。……早いのねぇ、ほんと」
朝のまだ静かな空気の中、2人はいつものように宇宙船へと乗り込む。
「では、発射シーケンス開始します――」
「しゅっぱーつ!」
* * *
船がゆっくりと浮上し、空を裂くように滑り出す。
「なんか……やっと“調査船”って感じするわよね」
「はいっ。やる気と一緒に飛び立ってる感じです」
「宇宙領域……やっぱり綺麗ね。地球も」
ゆきなが窓の外を眺めながら、ふと考える。
「さて、どこ行こうかしら。とりあえず星図、作っておきたいのよね。地球上でフルスキャンはちょっと気が引けるし……海王星くらいまで行ってみようか」
「了解いたしました」
「2台連結、出力40%。シールドは4台連結、クロスシールド展開」
「ワープエンジン、出力3.8に達しました」
「その“3.8”って、どのくらい?」
「通常の1が地球圏内基準です。2で外宇宙対応。ですので……」
「かなり速いじゃないの!」
「そうなんです。技術躍進というか、常識を飛び越えましたね」
「……つきました」
青い惑星、海王星。その光はどこまでも静かで、凛としていた。
「綺麗ねぇ……」
「では、銀河系スキャンを開始します」
「3号炉・4号炉、出力30%。3D・360度スキャン、開始します」
「データベース蓄積中……艦長、シミュレーション室でご覧になりますか?」
「せっかくだからみにいくわ♪」
「わあ……! きれい……」
天の川銀河が、流れるようにスクリーンに映し出される。
星々の軌跡が繊細な光を描き、幻想的な光景を生み出していた。
「処理完了まで10分程度の予定です」
「……じゃあ、のんびり眺めていようかしら」
スキャン画面に映し出された天の川を、指で拡大すると――
星々がより細かく、美しく見える。
「スキャニング、完了しました。天の川銀河、全域マッピング完了です」
「素敵だったわ……では、艦長。周辺移動を進めてよろしいでしょうか?」
「いいわよ〜」
「では外へ出ます。実験含めて、70%。融合炉2台連結、起動」
外周部のスキャン開始――
ワープ、スキャン、ワープ、スキャン……
調査船は次々と銀河を飛び越えていく。
「艦長、1時間でおおよそ完了予定です」
「すごいスピードね。このゲージ、7.2って出てるわよ?」
「はい。私もこの速度は初めて見ました。400万年前の記録で最高は2.0でした」
そんな会話の最中――
それは、突然やってきた。
「ビビーーピピーピピー緊急入電中ーッ!」
「救助要請を受信。位置測定中――位置でました。
・・・・・・・センサースキャニング、ギリギリ外側です」
「……遠すぎて通信不可です。でも、最大ワープ出力で5分程度で到達可能との試算です」
「通信は?」
「最大ワープ後3分程度で可能になるかと」
「防衛装備は?」
「フル稼働中です」
「攻撃装備は?」
「同じくフル稼働中です」
「救助救援装備は?」
「救命装置現状、医療治療カプセル3台稼働中。ナノ治療薬100名分、うさぎさんロボット10体、未使用ポッド20台待機済み。現在稼働率、99.3%です」
「……そう。なら、行くしかないわね」
「周囲に他の救助艦は?」
「確認されていません」
「なら、トランスポンダーセット――
地球調査船・1番艦、ハナフライム。発進!」
「融合炉90%、シールドフル。ワープエンジン起動。最大予定ワープ出力、開始」
星々が線となって流れていく。
「艦長、速度9.34――記録更新中です」
「通信、可能圏内に入りました」
「繋いで」
「……こちら、地球調査船ハナフライム。艦長、ゆきな。
救助要請を受信。現在、銀河0.5地区より救援中」
『通信感謝します。こちら、輸送船ミラステラ。現在、惑星間移民輸送中――
しかしアクセラ宇宙艦隊に襲撃を受けています。大型艦1、他に小型艦多数……!』
「メッシッ、メッシッ、メッシッ……!」
向こうから、不気味な混線通信が流れてくる。
『本来、安全域のはずでしたが……食糧確保のため、彼らは出てきたようです』
「めしっーーーーー!」
「……逃げ切れそう?」
『……いえ、不可能です』
ゆきなの目が静かに鋭く光る。
なら……間に合ってみせる!と心で思った。
そして、調査船は――“救援”のための戦闘態勢へと切り替わる。
「艦長 救助宇宙船、銀河0.5領域……到着までおよそ30分と推測されますと通信士官より報告が入る」
船内には、アクセラ艦隊の不穏な交信が断続的に流れ続けていた。
「ゆきな艦長……ですが、その頃には“胃袋”に収まっていそうですね」
ゆきなが、静かにモニターを見つめながら言った。
語気は穏やかだが、その目には鋭い光が宿っていた。
「悪いことは言いません。――お戻りになって。“胃袋の仲間”にならなくて済むうちに」
その言葉の直後、艦に新たなデータが届く。
「お姉様、通信データを受信しました。“このメッセージを本国に渡してほしい”とのことです」
「えれな、データ保存を」
「はい。受信完了。転送先の暗号キーも一致確認済みです。」
「……そう。じゃあ、“こちらからの返答”も用意しなきゃね」
銀河の静寂を破るかのように、船は静かに軌道を描きながら進んでいく。
ゆきなの声は穏やかだったが、その奥にある意志は――救うべきものへの強い決意に満ちていた。
ついに・・・めしっです・・ゆきなたちは救助することができるのでしょうか!
今後いろんなことに挑戦していくことになります。
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