今季最初の高校公式試合とおばあちゃんの夢を! 68
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「行けるようにしましょう。せっかくのご招待、もったいないものね」
「はい。新入生の中に、国の発表前に先に予測と介入を言い当てた強者がいるので、資料も持っていこうかと」
「いいわねぇ。楽しみねっ!」
* * *
放課後の部室にて。
「みなさーん、今度は――つくばですよー!」
「おっ!?」「わーい!!」
「今回は宇宙関係スペシャル! さらに、あの“奇跡の宇宙ステーション”の船長との面談もありまーす!」
ざわつく部員たち。
「新入生諸君。先日、国から“隣人”について発表があったけれど……実はその前から入部試験の時予見してた私たちの資料もあるの。持って行きましょう!」
「はーい! 理論に基づいて、きっちり計算しまーす!」
「それと……ごめん、今週末テニスの大会があるので、今週はしっかりよろしく!」
「はーいっ!」「了解でーすっ!」
頼もしい返事が響く理科部だった。
* * *
「よーし、エレナ、行こっか!」
ゆきなとエレナは、並んで練習コートへ向かう。
「最近、2年の鈴木さんがしっかりしてるのよね」
「……ああ、私も思いました」
「次の副部長、鈴木さんってのもいいかもね」
「はいっ、そうしましょう。まずは先生にも相談してみませんか」
* * *
【土曜日・日曜日:大会当日】
「では、団体戦のメンバーです――
シングル1:部長、ダブルス1:副部長とエレナ、シングル2:3年の浦川さん。
それ以外の皆さんは、個人シングルとダブルスにもエントリーです!」
「よっしゃー!」「がんばろー!」
まずは個人戦、シングルスからスタート。
部長は順調に勝ち上がり、エレナとゆきなもベスト4に進出。
「……あら、部長。決勝に行くなら、私を倒してもらわなきゃね」
激しいラリーの末、惜しくもゆきなは敗北。
「くやしいぃ〜〜〜っ!」
決勝戦は、部長とエレナ。
試合中、観客席からはざわめきが起こる。
「えれなちゃん、予測力がすごい……!走らされてるのに、なんで拾えるの……?」
接戦の末、部長がなんとか勝利。
シングルスは――
一位・篠崎部長、二位・エレナ、三位・ゆきなで独占!
「今年のあの学校、強いわ……」
「毎年強いけど、今年はなにか“光るもの”を感じるのよね……」
続くダブルス決勝――
ゆきな&エレナ vs 部長&浦川ペア。
「ダブルスは……負けないわよ〜〜〜っ!」
試合は意外にもストレート勝利。
「さすが、姉妹連携! 勝てないわよ〜〜!」
翌日は団体戦。帰り道――
「先輩っ」
「ん? なあに?」
「うちの部 今年……いけそうな気がしますよね」
「うんいけそうね、でも、団体戦は2勝とれたら、3戦目は浦川さんに任せてもいいし……後輩を出して試合慣れを考えていかないとね」
「長丁場になりますし、誰がリタイアするかも分かりませんから……」
「そうそう、2年生で3回戦まで行った子もいたし、仲良しコンビの4回戦組もいたし。まだまだ今年は層が厚いわ」
「それにしても、この服すごいですね……軽いし、体温調整が完璧で。汗もサラッと消えていきます」
「……まぁ、まだ実用段階じゃないから、あんまり声高には言えないけどね」
と、ゆきなは少し照れ笑い。
* * *
【団体戦・翌日】
快勝。――そして、優勝。
「来月の新人戦も楽しみね♪」
* * *
【翌週:校長先生への報告会】
「――全部、取得です!」
団体、シングル、ダブルス。
すべての優勝トロフィーと二位・三位トロフィーが、学校の玄関ホールにあるトロフィールームに並べられていた。
先生たちも笑顔。
校内は、誇らしげな雰囲気に包まれていた。
* * *
その足で理科部へ。
「先週はごめーん、鈴木さん。で、どうなった?」
「はい。笹塚先生が大型免許を持っているということで、学校の部活バスを借りることになりました!」
「わあ〜、楽しそーーー!」
そこへ、浅香先生も登場。
「ということで、そうなりましたああ!」
「鈴木副部長、ありがとう!」
「えっ……副部長ですか!?」
「そこっ! 一年間、よろしくね。次の理科部を見据えて、後輩も優秀なのがそろってるし、任せたわよ」
「そこは……心配していませんけど……でも、ゆきな先輩には……」
「いいのよ、鈴木さんの色を出して。来年はお願いするわ」
鈴木の目に、そっと涙が浮かんでいた。
「先輩……」
「なぁに?」
「こんないい部、ないですよね」
「ないと思うわよ」
「夏休み、絶対いなくなった後も呼んでおもてなししますから!」
「楽しみにしてるわ♪」
みんなで見上げた未来は、どこまでも明るく、そして――限りなく広がっていた。
週末の夜が近づいた頃。ゆきながバッジ越しに呼びかける。
「ひいばあちゃん、聞こえるー?」
『なんだーい?』
柔らかな声が返ってくる。通信越しでも、笑顔が目に浮かぶようだった。
「火星、見に行く? ずっと言ってたでしょ、最後に一度見てみたいって」
『行きたいねえ……あれが心残りでねえ』
「わかったわ。じゃあ今夜、21時ごろに秘密基地のリビングでゆっくりしててくれる? そこから一緒に行こう」
『わかったわ〜〜〜♪』
ゆきなはそっと端末を閉じ、すぐさまエレナに指示を飛ばす。
「エレナ、今週の納品と回収のスケジュール、JAX⭕️とNAS⭕️に連絡しておいて」
「了解いたしました」
だが――その裏で、彼女たちの知らない不穏な動きが、静かに始まっていた。
* * *
「お母さん、今日はひいおばあちゃんと秘密基地に泊まって遊ぶわ」
「わかったわ〜。私もお風呂くらいには行くかもね」
「いいわねぇ、おばあちゃんひ孫たちが遊んでくれて!元気なはずだわ」
* * *
「さあ、行きますか。エレナ、転送お願い」
「はい。転送します――シュワン」
リビングに到着すると、ひいばあちゃんはのんびりとテレビを見ていた。
「うふふ、もうここ、お気に入りになっちゃったさ」
「それはよかった♪ すきにつかってね! じゃあ……降りますか。エレベーターで」
エレベーターで地下へ降りると、ひいばあちゃんは懐かしそうに、一冊のノートを開いた。
「これ、あの人……おじいちゃんの記録。火星の上空に、何かが光ってるってほらここ書いてあるわ!」
「うん。じゃあ行きましょうか。――火星へ」
* * *
船内に乗り込むと、左の座席には特別仕様のふかふかマットが敷かれ、介助用のうさぎさんロボットが2体配置されていた。
「さあ、おばあちゃん。こちらへどうぞ」
「ありがとうねぇ……こんな体験ができるなんて……。あんたたちの制服も、かっこいいねぇ」
「はい、おばあちゃんの分も、ちゃんと用意してあるの♪ かけるタイプの制服ね」
「まぁ……ステキじゃないの」
「では、えれな、発射シーケンススタート」
「ステルスネット、展開完了。格納庫開放、始めます」
「きれいだわねぇ……」
「離陸開始します」
無音に近い加速で、宇宙船はふわりと浮き、空へと昇っていく。
「……静かだねぇ。」
「あっという間よ♪」
「では種子島とエリア5◎、経由しますね」
「えっもう種子島? 3分も経ってないじゃないかい……!」
全部のカップを持ってきた テニス部員
副部長も決まって来年も安心な理科部
おばあちゃんの夢と昔の思い出とともに火星に向かいます。
今日は2連続投稿でお盆休み最後を皆様にお届けです。
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