テニス部 新ユニフォームと理科部の新たな遠征 67
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「えー、だめよ、外に出しちゃ!」
「それはどうでしょうねぇ」
「もぉ〜〜〜っ、いじわる! エレナっ!」
でも、そんな軽口のあとには――
「……ふふ、でも私、ぐだーってするわ」
ゆきなはソファに沈みこむ。ほんわかとした空気が、秘密基地の司令室に漂っていた。
「……でも、まだ土曜日なのよね」
少しだけ時間に余裕のある日。
「せっかくだから、お風呂入ってから帰りますか!」
と、湯けむりに向かうと、今回はお母さんもいた。
「お母さん、ただいま〜」
「あら、おかえり〜」
どこか照れたような、でも楽しそうな雰囲気。ゆっくり3人で湯船に浸かって、のんびりと過ごす。そして服を整えて、玄関へ出ると――
「では、一緒に帰りましょうか」
3人そろって、玄関に並ぶ姿はどこか微笑ましかった。
* * *
次の日の朝。
今日はちょっと珍しく、テニス部の朝練がある日だった。
「部長、最近張り切ってるから……来週からは毎朝やるらしいわよ」
「まあ、いいんじゃない? 私、朝は好きだし」
「おばちゃんのパン、買っていこっと」
「私もですっ!」
笑うエレナに、つられてゆきなも笑う。
「……先生、今日はどこでデートしてるのかなあ」
そんなことをぼんやり考えているうちに、朝練が終わっていた。
* * *
帰り道。
「ねえエレナ、前は宇宙の位置って曖昧だったけど……最近はわかってきてる?」
「はい。確証はありませんが、ある程度の座標はつかめてきました」
「そっか。じゃあ……」
「司令室へ転送、お願い」
「はい。――シュワン」
司令室の光が灯り、モニターが静かに起動する。
「周囲の銀河情報、表示して」
「はい、表示します」
「……では予測全体地図を。ノアリエルが反対側、地球はこの端。銀河連邦の範囲は?」
「この赤い表示です」
「なるほど。じゃあ……あの気持ち悪いのがいる領域は?」
「この反対側の、かなり広い地域になります」
「昔、他にも勢力が存在したの?」
「はい、ありました。今、そちらも投影します」
4つの勢力が追加で表示される。
「……まあ、あくまで予測ね。落ち着いたら、調査に行きましょう。安全第一で」
「はい。スキャンで正確な勢力図を確認してからがよいかと」
「そうね。慎重に、ね」
* * *
地球では、日本ともう一か国による平和協定と技術協力が進んでいた。
二酸化炭素排出を無くした新技術は、各国にCO2排出が割り当てられ、それが技術理論の飛躍的な進展へとつながっていた。
「――あっ、お姉様。2週間後、また二酸化炭素の搬送要請が両方から来ております」
「わかった。また金曜日あたりかしら?」
「そうですね」
「ふふっ……ひいばあちゃんも連れて行こうかしら」
「いいですね。体力的には問題ないかと。休憩や睡眠スペースも用意しておきます」
「そういえば転送中って、診断してるのよね?」
「はい。一部、血液検査で不足が見つかったため、補正しております。それ以外は健康そのものです」
「体力的にはちょっと不安だけど……でも、ずっと笑顔でいてほしいわ」
「本当に、そうですね」
* * *
新年度が順調に進んでいたある日――
JAX⭕️の佐々木さんから連絡が入った。
『ゆきなさん、新入生、入りました?』
「はいっ、入りましたよ! 優秀で……ちょっと怖いくらいです」
『それは楽しみですね。今度、つくば本部に来ませんか? ゴールデンウィークなんて、どうかなと思って』
「おお……新入生の歓迎会も兼ねて、いいですね! 先生に学校の許可、聞いてきます!」
『ぜひお願いします! 今回は宇宙ステーションから、あの奇跡の船長も帰ってきてますから。時間が合えば会えるかもしれませんよ』
「えっ……」と言いかけて、思わず口を閉じる。
(あの船長……! バレないようにしなきゃ)
心の中で、そっと作戦を練るゆきなだった。
* * *
「テニス部長、提案があるのだけれど」
「はいっ、ゆきな先輩。なんでしょうか!」
「私、JAX⭕️と共同開発してる繊維があるの。宇宙服の素材なんだけど……テニス部のユニフォームとして、進呈しようかと思ってるの」
「えっ!? どんなのですか!?」
「私とエレナ、もう着てるのよ。ウィンドブレーカーの中に……見たい?」
「見たいですっ!!」
「では……えいっ」
ジャーン、と初披露。
「わーーーーーっ……!!」
「可愛いっ!!」
「先輩、ゆきなちゃんに……惚れました……!」
笑いと歓声が響くコートに、春の陽射しがまぶしく降りそそいでいた――。
「先輩、これ……やばいですね……!」
「でしょ〜! 着てくる?」
「もちろん! 着てくる〜!」
テンションの上がった部員たちは、さっそく更衣室へ。新ユニフォームに身を包んで、みんなで「はい、パシャリ!」
水面のようなきらめきをもつテクノロジー素材のユニフォームは、光を受けてまるで星の粒をまとっているようだった。
「いい記念になったね」
「うん!」
ゆきなは全員に2着ずつユニフォームを手渡していく。
「今週の半島大会、またカップ持ってくるわよ〜!」
「よゆうよ〜〜!!」
みんなで笑いながら拳を掲げる。いつもより、少し強くなった気がしていた。
「先輩、でもこれ……ほんとにいいんですか? 高そうですけど……」
「んー……まあ、実験用の試供品ってことで見てもらえれば?」
ゆきなはお茶を濁しながらにっこりと笑った。
* * *
次の日の朝。職員室前の廊下で――
「せ〜〜んせ〜〜い!」
「ぶっ……!? いきなり驚かせないでよ!」
鼻歌まじりに歩いていた浅香先生は、びくっとして帽子を押さえる。
「幸せそうですね、先生」
「んもう……びっくりしたぁ……」
頭をカリカリかきながら、ちょっと照れたように笑う。
「先生、今度のゴールデンウィークの最初の土日、つくばに新入生を連れて行きませんか?」
「え? つくば?」
「はいっ! なんと、国際宇宙ステーションの奇跡の船長も来てるそうですよ!」
「ええええええっ!? いついつ!? その日!? すごいわぁあ!」
目を輝かせる浅香先生。
「……校長先生に許可とっておくわね! どうしようかしら、車も3台くらい必要よね……」
「人も多くなったから、笹塚先生と部長のお父さんが運転してくれると助かりますね」
「……もしくは、学校のバス借りるか……」
悩む浅香先生の頭の中では、すでに遠足のようなルートと持ち物リストがぐるぐると回り始めていた。
つぎはつくば本部とのこと! でもじつは・・・・・今後の展開が
楽しみです!
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