表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崖が崩れたらそこは宇宙ステーション♪  作者: Sukiza Selbi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/177

気合の入部説明会 62

宇宙を夢見る一人の女子高生と、最先端AIが導く日常。

地球と宇宙を舞台に繰り広げられる、テクノロジーと絆が交差する日常を描いた物語。

これは——とある家族と、その未来を切り拓く少女の軌跡。

静かに、しかし確かに進む“日常”の中に、宇宙の鼓動が聞こえる。

入学式を終えて部室に戻ると、机の上にきれいに並べられた数冊の冊子が目に入った。


「……ん? これは……?」


表紙には《理科部紹介 20X X》の文字。そしてその中には、過去1年の写真と活動内容、さらには後輩たちが書き込んだ手描きの感想まで――いわば、理科部の小さな写真集になっていた。


「おお、すごいじゃん。後輩諸君、よくやったわね」


そう言うと、後輩たちは顔をほころばせながら「えへへ……」と照れ笑い。


「じゃあ明日の部活紹介では、みんな前に出て、この冊子を希望者に配ってね。印刷は間に合いそう?」


「はい、30部刷りました!」


「ナイスね。じゃあ、明日はJAX⭕️スーツで揃えるわよ!」


「えーーーーー!? 部長もーーー!?」


「えっ、なんか恥ずかしい……」「だめですか〜〜!」


「だーめ。部長も着るの! わかった?」


「……はいはい、わかったわよ……(笑)」


ゆきなが笑いながら部室の鍵を取り出す。


「じゃ、あとは任せたわ。はい、鍵。終わったら閉めて、先生に返してね」


「えっ、ゆきな部長、どこ行くんですかー?」


「テニス部。向こうは向こうでやってる頃でしょ? 一応副部長だし」


「はーい、18時までには帰ることー!」


「了解です!」


部室に残った後輩たちが、にこにこしながら冊子を整理していくのを見届けてから、ゆきなは体育館の裏手、テニスコートの方へ向かった。



テニス部のコートには、動きやすいジャージやスコート姿の部員たちが活発に打ち合いをしていた。春の夕暮れ、まだ少し肌寒い風の中でも、皆の顔は生き生きしていた。


「あ、ゆきな先輩!」


「お疲れさまですー!」


挿絵(By みてみん)


「……ここはここで、やっぱり良いわねぇ」


一人ごちたその直後、部員の一人がパンフレットを手に走ってくる。


「先輩、見てください! 今年の目標、“全国”って書いたパンフ、できました!」


「って、なんで私とエレナが表紙なのよ!!」


「だって〜。私たちじゃ恥ずかしいし……ほら、もう学校の顔じゃないですか!」


「違うわっ! ……まあ、いいわ。発表は頑張ってね。横に立っててあげるから」


すると、別の部員が資料を持ってきて言った。


「あ、先輩、M地区・春の大会のお知らせが届いてます!」


「来たか……最初の公式戦ね。ここ2年は団体で2連覇中。カップは返せないわね」


「負ける気はしないですよ!」と、部員たちは気合い充分。


「それと、新入部員の新人戦エントリー、忘れないようにね。エレナもよ?」


「はい! 出場資格、ですよね?」


「そう、登録しないと総体に出られないから。大事なのよ、これ」


エレナはまじめにうなずき、データ端末にメモを取り始めていた。


「……ふふ、なんだかんだ、今年も楽しみだわ」


「部長、まずはオーダーよりも……明日、いい子がたくさん来てくれるといいですね!」


「ほんとそれ!」


ゆきなは、夕焼けに染まりはじめたコートを見渡しながら、理科部とテニス部――

どちらの「後輩たち」も、とびきりの一年になりますように、と密かに願うのだった


そんなこんなで一日の活動が終わり、部活帰りにふと「理科部の部室、ちゃんと閉まってるかな」と思ったゆきなは、いつもの廊下を歩いていた。


もう夕方近く、校舎の空気も少し落ち着いている。

曲がり角の手前まで来ると、向こうから楽しそうな声が聞こえてきた。


「楽しくできたね〜!」


「ここまでやって、部長に怒られないかな……」


「大丈夫だよ! 発表のとき、ドキッとしてもらおうよ!」


――ああ、後輩たち、ちゃんとやってくれてるんだ。

そっと顔を出そうとしたが、ゆきなは笑ってやめた。


「大丈夫そうだね、そのまま任せておこう」


挿絵(By みてみん)


隣を歩いていたエレナも、くすっと笑っている。


「エレナは、どんなの作ったかもう知ってるんでしょう?」


「はい!」


「じゃあ、私は明日まで楽しみにしておくわ」


そして、ふとつぶやいた。


「再来年は……あなたか、みすずちゃんが部長ね。たぶん」


エレナは首をかしげながら、少し照れたように答えた。


「願わくば、みすずちゃんに託して……私は副部長でいいかな、って思ってます」


「なるほど。テニス部の方も、どうなるか分からないものね」


「はい。どっちも、ちゃんとバトン渡せたらいいなって思ってます」


「みすずちゃんの成長も、楽しみね」



家に帰ってきたゆきなとエレナは、玄関で靴を脱ぎながら声を上げる。


「お風呂行ってくるー!」


お父さんがずるいなあとぼやく


2人で仲良くタオルを持って、大浴場の方へ。

扉を開けると、湯気の向こうに誰かがいた。


「……あれ? 誰かいる?」


「あら、おばあちゃん!」


「おやおや、あんたたちも来たかい」


ひいばあちゃんが、のんびりと肩までお湯に浸かっていた。


「おばあちゃん、常連だよねぇ」


「そりゃもう。ここが一番いいのよ。風呂上がりにソファーでゴロゴロするのが極楽なの」


「テレビも声でつけられるしねー」


「そうそう、昔はこういうの嫌いだったけど……音声操作、意外と楽でね。エアコンも照明も、全部声で済むんだもん。もう戻れないよ〜」


「……さすが最新設備(笑)」


湯船でしばらくのんびりしたあと、エレナがふと思い出したように話す。


「おばあちゃん、この前の研究ノート、確か216ページに”火星に何かが見える”って書いてありました。写真も、ぼやけてはいますが……確かに写ってましたよ」


「見に行ったの?」


「はい。すごかったです……今度、ご一緒しましょう」


「そうかいそうかい……おじいも、なんだかんだでがんばってたんだねぇ……」


やさしい声と、ぽこぽこと静かな湯の音。

その夜は、ゆきなもエレナも、ぐっすりと眠ることができた。



そして翌日――


「掲示板お願いしまーす!」


理科部メンバーが手分けして、理科部募集のポスターを校内にぺたぺた貼っていく。

午前中は一年生向けの説明会、2・3年は授業。

午後はいよいよ、全クラブによる部活紹介が始まる。


まずは運動部の発表から。


「テニス部です!」


体育館の壇上、スポットライトの下に立つと、スクリーンに昨年度の実績が映し出された。

ゆきなとエレナが優勝カップを掲げている写真、練習風景、試合のスローモーションリプレイ。

最後に「今年度目標:全国大会出場」の文字が大きく表示され、《強化指定部》と書かれた立派なテニスコートの映像が映し出される。


「興味のある方は、テニス部ユニフォームを着た部員からパンフレットを受け取ってください!」


挿絵(By みてみん)


プレゼンが終わると、数分後には10人ほどの一年生たちがパンフレットを手にしていた。


「よしっ……なかなか好感触じゃない?」


エレナが小声で言うと、ゆきなもニヤリ。


「さて、次は理科部のターンね。後輩たち、仕込んだムービー、魅せてくれるかしら」


静かに、でも楽しげに、次のステージへと移っていくのだった。

次回理科部発表 新規の新入部員ははいるのでしょうか!

たのしみです!

お好きなところにアクション・評価・ブックマークをお願いします。

モチベアップのためにぜひ・ほしい・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ