ノアリエル との交流 59
宇宙を夢見る一人の女子高生と、最先端AIが導く日常。
地球と宇宙を舞台に繰り広げられる、テクノロジーと絆が交差する日常を描いた物語。
これは——とある家族と、その未来を切り拓く少女の軌跡。
静かに、しかし確かに進む“日常”の中に、宇宙の鼓動が聞こえる。
ゆきなとエレナが地上に降り立つと、静かに周囲が明るくなり、まるで歓迎するかのようにアンドロイドが一礼した。
「ようこそ、お越しくださいました」
声は、まるで昔からの友人のように自然で、柔らかい。
「えっ……もう日本語、解読したの?」
「はい。最初の“数式”でほぼ全てを把握いたしております。
あの問題を突破されたのは、かなり稀な事例です」
「そうなのね……。確かに、あそこは1週間ぐらいかければ何とか解けそうだけど、でも――」
「あなた方は、“三回再計算”されましたか?」
問いかけに、エレナが頷く。
「はい。一応、誤差を想定して三度、別プロセスにて再計算を行っております」
「……よく“予測”で当てられるものね」
「**いえ、それはできませんでした。シールドの関係で中身は一切スキャン不可能。
ただ、艦の制御技術や反応速度から見て、**“こちらの技術水準を超えている”と判断しております」
「見た目だけだと**“似たもの”**を造れそうに見えるけど、中身がまったく別物ってことね?」
「その通りです。それと……お二人とも、とてもお綺麗です」
「……お世辞まで言えるの? すごい文明ね」
ゆきなとエレナは、制服姿で背筋を伸ばしていた。
その姿が、この場所でひときわ凛と見えたのかもしれない。
「それでは、中央コンピューターまでご案内します」
⸻
目の前にやってきた車両に乗り込むと、スッと空中に浮かぶような感覚とともに加速していく。
「……これ、すごくスムーズに動くのね。どれぐらいかかるの?」
「5分ほどです。道中、こちらの“自然との共生都市”をご覧ください」
窓の外に広がる景色は、海の蒼と、草原の緑がまぶしく調和していた。
「海も緑も……綺麗ね」
「はい。ただ、後ほどご説明すべき“課題”もございます」
⸻
やがて到着したのは、都市の中心にある中央コンピューター区画。
中に案内されると、部屋の中心には3メートルほどの円盤型の装置が浮いていた。
「どうぞご着席ください」
言われるままに、ふたりが装置の座面に腰を下ろす。
ふわっと浮かび上がるような軽やかさ。
その瞬間――
空間全体が静かに変化し、光の粒が集まり始めた
「っ……!」
数秒後、異なる姿をした5人の人物が、ホログラムとして投影された。
容姿の異なるような姿、でもそれぞれが、どこか「心」を感じさせる表情だった。
「久方ぶりの外部からのご訪問、歓迎いたします」
5名が同時に、丁寧に一礼した。
「こちらこそ、ご招待ありがとうございます。
このような機会をいただけて光栄です」
⸻
説明が始まる。
この惑星には中央コンピューターが5基存在し、各自が独立して運営されている。
そしてこの5名は、それぞれのコンピューターの代表的存在。
全ての重要事項はここで議題として挙げられ、最終的には多数決にて決定されるという。
「“惑星名”に特に意味はありませんが……」
1人が、静かに言葉を続ける。
「惑星名は、我々にはあまり意味を持ちません。そちらの言葉で自由に名づけていただいて構いません」
ゆきなは少し考えこむ。
「そうね……じゃあ、“ノアリエル”ってどうかしら。人と人を静かにつなぐ、優しさのイメージなの」
その名を口にした瞬間、エレナはふっと微笑んだ。
「……素敵です」
こうして、惑星ノアリエルとの交流が始まることとなった。
「ご質問などございますか?」
「交易などすることはできる?」とゆきなが聞くと、
「ぜひお願いします」と返ってくる。
「実は、いろいろと足りない物もございます。ノアリエルでは魚や小型の動物はおりますが、大型の動物が存在しません」
その時、エレナが何かに気づいたような顔をした。
「お気づきになられたかもしれませんが……」
「圧倒的に、二酸化炭素が足りません」
「え?」
「艦長、私も入った瞬間から大気中の環境で検知しております。窒素が多く、二酸化炭素が極端に少ないのです。このままでは、美しい植物群が近い将来絶滅する可能性がございます」
「つまり……二酸化炭素が欲しいってこと?」
「はい。ただし、他の惑星などからの搾取はおやめください。その生態系への影響が大きすぎるため、我々としては承認しかねます」
「なるほど。火星から持ってくるのも禁止と……」
「艦長、また悪いことを考えてますね?」
と笑顔でエレナがつっこむ。
「ちょっと! 私が悪代官みたいじゃないの。違うでしょ!」
「違いますね。艦長はいつも、ちゃんと正論に持っていきます」
「……も〜、言うようになったわね」
そんなふたりのやりとりに、中央のコンピューターたちも和やかな空気になっていた。
「では、その対価として何を提供いただけるの?」
「我々は製造業を主としています。設計図をいただければ、どんなに大きなものでも作成可能です。スキャニングさせていただければ、お乗りになられた宇宙船でも再現可能。ただし、システム部分はご提供をお願いします。もちろん守秘義務契約も結びます。他への流出は一切ございません」
「それはいい条件ね。どう、エレナ?」
「申し分ございません、艦長」
「わかったわ。検討しておくわね。だいたい、2週間後ぐらいでお返事してもいいかしら?」
「承知いたしました。お取引、楽しみにしております」
「それと……この国、おすすめスポットをツアーしてくれると嬉しいのだけど?」
「もちろんです。製造工場、海中都市、天空都市、山岳地帯、などを見て回るプランはいかがでしょうか?」
「いいわね、それでお願い」
「では、手配いたします。30秒ほどお待ちください」
時間がないけれど各都市をまわります。
後でゆっくり見て回ります!
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ゆきなとえれなの ほんわか 日常を楽しんでいただければ幸いです。




