帰宅レポート提出からハナフライムの本気 54
宇宙を夢見る一人の女子高生と、最先端AIが導く日常。
地球と宇宙を舞台に繰り広げられる、テクノロジーと絆が交差する日常を描いた物語。
これは——とある家族と、その未来を切り拓く少女の軌跡。
静かに、しかし確かに進む“日常”の中に、宇宙の鼓動が聞こえる。
最後のフライト。
搭乗したのは羽田行き644便、シートは窓側にズラリと並ぶ理科部チーム。
「部長チーム」
「えれなを囲むチーム」
「みすずちゃんを囲むチーム」
「そして先生チーム」
機内はまるで修学旅行の延長戦。
キャッキャと静かに盛り上がりながら、ふわっと空へ飛び立つ。
「はーい、まだ少し早いからね〜!離陸して30分ぐらい経ったら、お弁当食べましょう〜」
配られたのは――
・黒豚丼弁当(個別)
・つきあげ(さつま揚げ)盛り合わせ(真ん中に1パック、全員でシェア)
「1人4個ずつあるわよ〜〜!」
「わーーい!」
離陸して、飲み物が配られたあたりで、いよいよ空弁タイム。
ちょっと賑やかだったかもしれないけど、ここは“若さ”でお許しを!
「うわっ!うまっ!!」
「黒豚やばい!やわらかっっっ!」
肉女子爆誕である。
「さつま揚げ、甘っ……!」
「これ……クセになる……」
「父が言ってたけど、九州のは甘めらしいよ」
「なるほど……甘くて、あとひく……!」
部員たちは口々に感動の声を漏らす。
「これ、お土産に買えばよかった〜〜!」
「言うと思って、余った予算で全員分、買ってありますっ!」
「うわーー部長サイコー!!✨」
「先生たちと職員室用は、特大でありますからね〜!」
「……なるほど、だからあの重いやつ、俺に渡したのね?」
と、笑いながら笹塚先生。
「ちゃんと先生の分もありますから〜〜!」
「ありがとう!」
爆笑と拍手が巻き起こる機内。
お腹も心もぽかぽかで、あっという間に飛行は終盤へ。
ふと、隣を見ると――
浅香先生が、窓にもたれて可愛くすやすや。
その姿を見て、みんなは思わずにっこり。
(あぁ……やっぱり、いい先生だなぁ)
先生も、ちゃんとリラックスしてくれてる。
そんな空気が嬉しい。
「先生、つきましたよ」
着陸後、笹塚先生がそっと声をかける。
「ん……あっ……よく寝たわ……ありがとう、先生」
眠たそうに微笑んだあと、
「上の荷物、取りますね」
と、先生がスッと立ち上がり、荷物を下ろしてくれる。
その様子を見た生徒たち――
「……もう、これいけるんじゃね?」
「うん、これ…いけるね」
「来週の約束、ちゃんと聞いてるし……楽しみ〜〜〜♪」
当事者じゃないのに、なぜか部員たちはほっこり嬉しそうだった。
⸻
学校に到着すると、みんなで仲良く報告タイム。
職員室に顔を出して、校長先生にも手渡しでお土産をお届け。
「お疲れさまでしたー!これ、お土産です〜!」
「……よし、返さないからね」
「えーーー!!」
「ほらほら、みんな!3時間でレポート書き上げてしまえば、あとは自由時間なんだから!」
「「「はーーーいっっ!!」」」
気合いを入れてレポート作業スタート。
内容は「同じものでOK」なので、写真を共有して、
チームに分かれてそれぞれが自分の得意なところを担当。
・レイアウト班
・写真選抜班
・文章構成班
・自然観察レポート班
・ロケット/宇宙技術紹介班
まさかここまでしっかり作るとは思っていなかったが――
できあがったのは立派な冊子タイトル:
「春休み理科部特別活動記録」
~宇宙ロケットのしくみと自然探訪 in 種子島・屋久島~
表紙には、みんなが揃って撮った⭕️3ロケット前での記念写真。
カラー印刷で映える、堂々の仕上がり。
部員×2冊分作成!
・提出用
・個人保存用
・+1冊は部室の本棚へ
・顧問用2冊
「ちょっと作りすぎたかも……」
時計を見ると、18時。
でも、誰も文句を言う様子はなかった。
むしろ、達成感と笑顔が溢れていた。
「反省してるけど……うれしいよね」
「うん、これは残るね」
そんな春の終わり、そして次のステップへと進む、
理科部の冒険だった。
次の日の朝。
いつも通り、お父さんと一緒にテニスでひと汗かいたあと、行きつけのパン屋さんへ。
焼きたてのパンの香りに包まれながら、
「これと、あれと……はい、お父さん、持って帰って〜」
「はいはい、まったく朝から元気だな〜」と笑いながらパンを託す。
ゆきなとエレナはそのまま秘密基地へ向かう。
司令室に入ると、エレナが紅茶を入れてくれて、朝のパンと一緒にテーブルでゆったりブレイク。
そんなとき、テーブルの上に置いていたパンを勝手に食べていたお母さんから、メッセージが届いた。
「パンありがとね〜」
「はーい!」
打ち明けたことで、心が軽くなったのか、最近では“ひいばあちゃん”とよく一緒にお風呂に入っているそうだ。
(それを想像するだけでも、なんだか嬉しい)
上のドックにある宇宙船、ハナフライムも、ピカピカに磨かれて陽の光を反射している。
「さてと……」
「艦長、すべてのシステム、試運転完了しております」
「では、その新しい宇宙船の“性能とやら”──見せてもらおうか」
(……ちょっと弟の口調入ったわね)
「ぷっ……!」
エレナが吹き出す。
「弟さんの影響で“見させていただきました”。開発にも、参考になるかと」
「ふふっ、では──艦長、ハナフライムへ」
艦長席。長時間座るのにも慣れてきた。
腰を落とすと、エレナが言う。
「生体認証と音声で起動するように設計してあります。基本は私が補助しますが、万一に備えて、艦長だけでも起動できるようにしてございます」
「わかったわ。そんな事態がないことを願うけど……“もしも”の時ね」
「はい、もしもの時、です」
これから宇宙の秘密が少しづつ進んでいきます。
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ゆきなとえれなの ほんわか 日常を楽しんでいただければ幸いです。




