屋久島からの帰宅と浅香先生の勇気!53
宇宙を夢見る一人の女子高生と、最先端AIが導く日常。
地球と宇宙を舞台に繰り広げられる、テクノロジーと絆が交差する日常を描いた物語。
これは——とある家族と、その未来を切り拓く少女の軌跡。
静かに、しかし確かに進む“日常”の中に、宇宙の鼓動が聞こえる。
「おかみさ〜ん!美味しかったあああ!」
ごちそうさまの声に、奥から顔を出したおかみさんがニコニコと出てくる。
「あら、ちゃんと全部食べたのね~!若いわ~。嬉しいけどねっ」
お皿がピカピカなのを見て、おかみさんも思わず笑顔。
「JAX⭕️の佐々木さんから連絡が来た時は、正直びっくりしたけど……普通の女子高生さんなのね~」
「えっへへ」
「でもその団結力と行動力は……うん、普通じゃなさそうね、ふふっ」
そんな会話があって、ゆるっとした食後の時間。
ゆきなが、おかみさんに聞いてみる。
「おかみさん、お散歩に出たいんですけど……女子だけでも大丈夫ですか?」
「ああ、ここから港ぐらいまでなら平気だと思うわよ。ただ、横道とか人気のないとこはやめといた方がいいし、絶対に一人にならないようにね」
「わかりましたー!」
「では〜食後のお散歩行く人ー!」
「はーーーい!!」
満腹なのに、みんな元気そのもの。
ゆきながひょいっと手を振って言う。
「笹塚せんせ〜、星空の勉強してきまーすので、浅香先生お願いしますね〜!」
「ほいほ〜い。行ってらっしゃーい」
「浅香先生も無理しないで、座っててくださいね〜」
そう言ったあと、ゆきながふっと浅香先生の耳元でささやく。
「先生、今日のお礼がしたいって言うんですよ。帰るまでに日付ちゃんと決めてくださいね」
「……わかってるわよ、ありがとうね」
ふわっとした笑顔を残して、
「では、しゅっぱーつ!!」
「わーい!」「わーーい!」
テンション高く、理科部女子たちが旅館の玄関を出ていく。
「せんぱーい!」
「なにー?」
「今のさ、どんなことやらせてたんですかぁ?」
「ふふふ…今日のお礼の“デート”の日にちを、ちゃんと決めてってアドバイスしといたのよ」
「ひゅ~~~~~~!!さすが先輩!!✨」
そんな女子トークをしながら、港へ向かう。
夜の空気はひんやりしてて、少しだけ肌寒いけど、心はふわっとあったかい。
港に着くと、そこには…
「うわ……綺麗……」
空には、くっきりとした星空。
天の川がうっすらと、でもはっきりと見えている。
潮の香りと波の音が、いつもの日常よりもずっと深く響く。
「先輩、すごい……天の川ですね」
「ほんとだね。リアルなプラネタリウムもいいけど、自分の目で見る星空って、やっぱり特別だよね」
「カニがいっぱ〜い!!」
足元で小さなカニが横歩き。
後輩たちはキャッキャと騒ぎながらはしゃいでいる。
エレナも、みすずちゃんと一緒に笑顔で歩いている。
あぁ、こんな時間が、いちばんのご褒美かもしれない。
そして旅館に戻ると、中から賑やかな笑い声が聞こえてきた。
「お邪魔しまーす」
襖を開けると、そこでは先生も一緒になって、カードゲーム大会の真っ最中。
ゆる〜いルールのババ抜き、なのにやけに真剣。
笑い声とツッコミが飛び交って、夜がどんどんふけていく。
夜も更けてきたところで、笹塚先生だけが別の個人宿舎へ。
私たち理科部員たちは、布団を敷いた大部屋でそのままごろん。
気づけば、みんな静かに…すーっと、夢の中へ。
今日という一日が、じんわりと胸に残ったまま。
理科部一同、最高の夜を終えたのだった――。
「朝よ~~!7時~~!」
おかみさんの明るい声が、ふすま越しに響いてくる。
旅館の空気がすっと目を覚ますように、窓の外には鳥の声と柔らかな朝の光。
「ご飯食べてね~~〜!」
起こされる頃には、炊きたてのご飯と湯気の立つお味噌汁の香りが、ふんわりと部屋中に漂っていた。
本来、早朝組はもう屋久杉コースの出発時間をとっくに過ぎている。
おかみさんが笑いながら言う。
「今度は、12時間のフルルート目指しておいで!多分、みんななら大丈夫よ」
「はーい!また来まーーす!!」
朝ごはんも見事な豪華っぷり。
焼き魚に卵焼き、煮物、手作りの梅干しまで――
旅館の優しさがそのままお膳に詰まっていた。
食べ終わったら、みんなでお部屋を手早くきれいに片付けて、
旦那さんの運転するバスで空港へ。
車内ではさっそく「おみやげタイム」が始まって、ちょこちょこ買い物も楽しむ。
9時20分、空港でチェックイン完了。
9時55分、鹿児島行きに搭乗。
鹿児島空港に到着すると、乗り換えの時間はなんと20分!
「せんせー、足大丈夫?」
「うん、だいぶいいわ。ありがとう」
「よかった〜!じゃあ10時50分の羽田行き、乗るからねー!」
手際よくお手洗いを済ませて、次に向かうのは……空弁売り場。
部長とエレナはそろって空弁ハンター。
「えれな〜、これ半分持って〜」
「はーいっ!お姉様!これは……しゅうまい弁当的なやつですね?」
「そうそう、それそれ。飛行機の中でのお楽しみ〜♪」
「それと……お、こっちは予約電話しておいたつきあげ!さつま揚げの盛り合わせ!」
「飛行機、ちょうどお昼になるもんねー」
さすが部長、抜かりなしである。
「みんな〜乗るよ〜〜!あ、これ持って〜!」
そのころ笹塚先生はゆっくりと歩きながら、ふとつぶやく。
「……あの部長、すごいですね」
「うん、そうなのよ」
浅香先生が微笑んで答える。
「顧問なのに、私ほとんど出る幕なくて。あの子たちが本当にしっかりしてるから、どんどん成長してて……私、逆に楽しませてもらって、いつもドキドキしてるわ」
ふっと、横を見ると笑顔で幸せそうに寝る浅香先生。
その寝顔に、ドキッとする笹塚先生――
(……昨日、言われたっけ)
「今度、お礼に水族館へのお出かけご馳走するわ」って。
そして、次の日曜日に約束した。
でも――
それはまた、別のお話。
いい感じの先生二人 生徒は浅香先生の幸せをすごく願っている。
今後が楽しみな二人
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ゆきなとえれなの ほんわか 日常を楽しんでいただければ幸いです。




