リフトオフと浅香先生の恋 50
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
浅香先生がんばれ! 土曜日2回目です!
翌朝、6時。
朝の空気は澄んでいて、潮風が心地よい。
ゆきなはひとり、海岸沿いをお散歩していた。
(昨日は……あれで済んだけど……)
静かな波音とは裏腹に、遠くでは迷彩服を着た軍の人たちが慌ただしく動いている。
「……まだ、解決してないのね」
そう呟きながら歩いていると、数回、**「そこの方、身分証の提示を」**と呼び止められた。
そのたびに正式なJAX◎関係者カードを提示すると、
どの隊員も目を丸くし、やや戸惑ったように敬礼してくる。
「……お、お通りください……!」
(なんか、逆に目立ってるかも……)
そう思いながら、ゆきなは宿舎へと戻ってきた。
ちょうど入り口で、諸星さんとすれ違う。
「よかった……」
「え?」
「……いえ、なんでもないです」
そう言って、諸星さんは去っていった。
その背中に、少しだけ不安そうな色がにじんでいた。
◇ ◇ ◇
朝食。
「おばちゃん、朝ごはん美味しかったあぁ〜!」
「どういたしまして〜!おかわりも言ってくれたら出すからね!」
朝から元気いっぱいのおばちゃんに元気をもらって、理科部員たちは再びJAX◎司令所裏の建屋へ向かう。
そこはもう——カウントダウンが始まっていた。
「うわ……空気が違う……」
「ピリッとしてる……」
大型のガラス越しに見える発射指令室。
中では十数人のスタッフたちが黙々と作業を進めていた。
その中の一人、責任者らしき人物がふとこちらに気づき、
軽く会釈をしてきた。
思わず、みんなでペコリと会釈を返す。
「なんで……?」
理科部員たちがぽかんとした表情で、ゆきなを見る。
「……わ、わからないってば〜」
ざわざわと笑い声が広がるなか、エレナがひそかにゆきなに通信する。
「お姉様、司令室側に“特別来客確認済”の通達が今朝届いています」
「えっ……てことは、もしかして昨日の件が……」
「詳細な情報漏洩はないと思われますが、
念のために**“目標対象がゆきな様であった可能性”も含めて**、
慎重な対応をしているのだと思われます」
「なるほど……」
◇ ◇ ◇
ロケット発射4時間前。
「よし、みんな! お昼を済ませたら、見学場に向かうわよー!」
一同でぞろぞろと移動開始。
ゆきなは、事前に渡されていた専用タブレットで、リアルタイムのロケットデータを表示していた。
「このプログラム、なかなか優秀ね……」
と、後ろからのぞき込むエレナ。
「覗かないの! ……ったくもう……」
「ふふ。ですが、一箇所セキュリティホールを発見しました。
JAX⭕️内ネットワーク以外からの接続を遮断済です」
「……さすがすぎて、怖いわよもう」
◇ ◇ ◇
そして——
カウントダウン60秒前。
「……!」
みんなが一斉に息を飲み、じっと空を見上げる。
10——9——8——7——6——5——4——3——2——1……
「リフトオフ!」
——ドォンッ!!!!!
轟音とともに、巨大なロケットが空へと昇っていく。
あまりの迫力に、理科部員たちは言葉も出ない。
ただただ、その瞬間を見つめていた。
そのとき。
「お姉様、侵入プロトコル検知。遮断中につき問題なしですが——」
「えっ?」
「……指令パターンを照合したところ、“強制落下命令”が含まれていました。
……この発射場が、ターゲットだったようです」
ゆきなの眉がぴくりと動いた。
「……エレナ、ありがとう。その詳細情報——匿名で送っておいて。
またやられても嫌だし、記録は残しておきたいの」
「了解いたしました」
エレナの手元にある回線から、静かに通信が発信されていく。
◇ ◇ ◇
発射の感動と裏腹に、
確実に動き出している何かが、背後にあった。
だがそれでも、
ゆきなは今日も堂々と空を見上げていた。
——「誰にも、邪魔はさせない」
未来へ向かって、今日も一歩進んでいく。
夜。
2日目の研修を無事終えたあと、理科部一同はJAX⭕️職員の皆さんからバーベキューパーティーにご招待されていた。
「うわあ〜〜〜っ、お肉〜〜っ!!」
「先輩、このお肉分厚いですっ!!」
「こっち、焼けてきたわよ〜、タレは甘口と辛口あるって!」
炭火の香ばしい煙が、夕暮れの風にふわっと揺れて広がる。
みんなの笑顔が、焚き火の光に照らされて、それぞれ輝いていた。
そして、ちょっと離れた場所では、諸星さんもゆきなと話していた。
「……朝のあれ、びっくりしましたよ。あんなに焦った諸星さん、初めて見ました」
「……申し訳ない。色々と、重なってしまってね」
「でも、自衛隊の人、あんなにいましたっけ?」
「……まぁ、“あれ”の防衛もありますからね」
「“あれ”、ね……ふふっ」
言葉を交わす2人の間に、少しだけ真剣な空気が流れていた。
◇ ◇ ◇
バーベキューから戻ると、**宿舎は「女子会モード」**に早変わり。
みんなお風呂を済ませて、Tシャツやジャージに着替えた姿で、大部屋に集合していた。
「ねえ、浅香先生〜」
「なによ、急に?」
「今回、笹塚先生と同じ部屋でも良かったんじゃないですか?」
「……なっ、何言ってんのよ!?///」
「ええっ、先生たちって、付き合ってるんじゃないんですか?」
「ちょ、ちょっと、待って! そういうの聞いてないよ!? え、ホントなの?」
一気にざわつく理科部女子9名。
「だ、だから! 付き合ってはないわよっ!!」
「じゃあ、“好意がある”ってことですか〜?」
「……ぐっ、う……っ……」
詰め寄られて、観念したように先生が口を開く。
「……わかったわよ。……そうよ、少しぐらいは……“お近づきになれたら”とは思ってるわよ……」
「「「きゃああああああ〜〜〜〜〜!!」」」
「でも! でもね! 何も進展はないからねっ!? ゼロだからねっ!?」
◇ ◇ ◇
そして、自然な流れで、女子たちの**“理科部恋愛作戦会議”**が始まる。
「よし、みんな! 集合っ!」
「理科部最大のミッション、発動である!」
「まずは笹塚先生、付き合ってる人いるのか、聞かないとね〜」
「え、でもそれは聞いたよ。いないって!」
「でもさ〜、旅行の話した時、乗り気だったよね」
「ってことは……JAX⭕️に興味があるか、誰かに会いたかったか、ってことよね?」
「これはもう、部長の出番ですね!」
「えっ、わたし!? えーれーな〜!?」
「お姉様、私の助言が必要であれば、いつでも通信回線を開いておきますね♪」
「やれやれ……」
そんな女子トークが、夜更けまで続いていく。
——こうして2日目の夜は、星空の下で「恋バナ」と「ミッションブリーフィング」が入り交じる、不思議で楽しい夜となったのであった。
暑いですね・・・心も熱くなれればいいなあ
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ゆきなとえれなの ほんわか 日常を楽しんでいただければ幸いです。




