JAX◎ 種子島 屋久島へ出発 48
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「じゃあ、お母さん、行ってきます!」
玄関で手を振るゆきなとエレナ。
お母さんはふたりをぎゅっとハグして見送る。
「みんなで、気をつけてね。理科部のみんなは優秀だけど、無理してそうな子にも気づいてあげてね」
「うん、わかった!」
◇ ◇ ◇
朝6時55分。
ゆきなとエレナは、少し早めに高校最寄駅に到着。
改札前には——
「……先生!? 全員もういる!?」
なんと、理科部員全員+先生2名もすでに集合済み。
「えっ、先生もですか!?」
「ええ、普段あまり電車乗らないからね〜、みんなで一緒に行くのが正解かなと思って」
しかもみんな、先日いただいたJAX⭕️ジャージをバッチリ着用している。
「わぁー、そろってるー!」
予定通り、7:07発の特急品川行きに乗り、京急蒲田で乗り換えて羽田空港行きへ。
遅れることなく、羽田空港に8:08到着!
「先生〜、荷物全部預けますねー!」
生徒たちは協力しながら、大きなスーツケースをカウンターに預けていく。
その間に、ゆきなはふらりとお買い物へ。
高校7名・中等部2名・先生2名の計11名分、手には6個の紙袋を持って戻ってくる。
無事にチェックイン完了!
エレナの金属探知ゲートも何事もなく通過でき、みんなでセキュリティエリアを抜ける。
「あと30分くらいあるねー!」
「お姉ちゃん、すごいです!」
「えれなちゃん、飛行機初めてなのー!?」
後輩たちに囲まれて、エレナはちょっと照れながらうなずく。
やがて搭乗案内が始まり、優先搭乗の案内を受け、全員わいわいと機内へ。
「ここ、4人席3列ね! 座って〜!」
飛行機が滑走路へ向かうなか、ゆきなが笑顔で紙袋を開ける。
「はい、羽田空港名物! カツサンド!」
「2人で1つね〜、お茶もセットよ!」
男性先生だけはしっかり1箱分。「やったー!」と嬉しそう。
エレナは窓の外に目をキラキラさせて、
機内Wi-Fiでタブレットに書き込む。
『いつも飛んでるじゃん』
『それとこれは別です!』
すぐにエレナからツッコミが入る。
◇ ◇ ◇
鹿児島空港 到着!
小さなプロペラ機に乗り換え。
「わー! プロペラだあ!」「かわいい〜!」
30分ほどの空の旅で、種子島に到着。
「本当に午前中に着いちゃった……!」
「みんな、これ付けてー!」
ゆきなが1人ずつに名前入りのJAX⭕️ビジターパスを配る。
そのタイミングでJAX⭕️の巡回バスがやってきた。
「あれが来たわよ!」
バスの運転手さん、乗り込んでくる一団にびっくり。
「女子高生……先生……全員ジャージにパス付き……!?」
バーコードをかざすと、ひとりだけ“職員”と出る人物が。
「えっ……あの……確認します……え、間違いないですね……」
「では、出発しまーす! このバスは司令所・発射場・空港を結んでいます。途中下車OK。パス提示で停車できます!」
広大な自然の中を、バスはゆっくり進む。
海の見える道、緑の丘、そして——
「司令センターに到着です!」
降りると、発射台が遠くに見える。青く透き通るエメラルドグリーンの海が、その先に広がっていた。
「きれーーい!!」
歓声があがる。
「さて、まずは食堂でお昼だよ〜!」
ゆきなが言うと、すでにテーブルには料理が整っていた。
「えっ!? 用意されてる!? 予約したの!?」
「はい、バスの中からお願いしておきました!」
「……職員カードって、すごいなぁ……」
「先輩! ロケットカレーです!」
後輩たちの声が弾む。
エレナの目も、キラキラ。
みんなで揃ってカレーを食べ、お腹を満たしたあとは徒歩で宿泊所へ移動。
ゆきなのカードでドアが開くと、管理人さんが出てくる。
「あら、可愛らしいわね。こちらへどうぞ」
女性陣は大部屋へ、男性陣1人は2人部屋へと案内される。
荷物を置いて、ひと息ついたところで——
「さあ、行くわよー! 先に発射場の見学へ!」
「明日は打ち上げで入れないからね〜!」
再びバスに乗って発射台へ。
運転手さんが振り返る。
「あら、またお嬢ちゃんたち! 今度は発射台かい?」
「そうでーーす!!」
笑顔いっぱいにバスが進むと、遠くに巨大な発射台が見えてきた。
「かーーーい!!」「デカいー!!」
みんなで大興奮。
「諸星さん!?」
バスを降りた瞬間、驚いた表情の人物がひとり。
「……あはは。覚えていただいて何よりです」
えれなの腕の時計に、小さく文字が浮かぶ。
『こちらに実験炉があります。カモフラージュされていますが、微弱な融合反応が検出されています』
「えっ……ここに?」
「まだまだ初期段階。小型炉の1%にも届かないですが——」
ゆきなが諸星さんに向き直る。
「ということは、ここで実験してるんですか?」
「さすが鋭いですね」
諸星さんは目を細めて、笑った。
「……ですが、それについてはここではお答えできません。——あとで、ひとりのときに」
その一言だけを残し、ふたたび皆の前では通常の説明に戻る。
発射モジュールエリアは立ち入り禁止区域。
けれど、その外周部の柵越しからでも、そのスケールは十分に伝わってきた。
「この巨大なロケット、組立工場から8時間かけてこの場所まで専用の運搬車でゆっくり運ぶんですよ」
「ええ〜〜〜っ!?」
一同が驚きの声を上げるなか、諸星さんは続ける。
「発射のとき、ロケットの下に大量の水を撒くのは、騒音と熱を抑えるため。水蒸気にして音を吸収するんです」
「へえ〜〜!」
「燃料は液体水素と液体酸素です。とても冷たい状態で保管され、点火と同時に超高温になります」
ゆきながふと尋ねる。
「諸星さん……このエンジンも、担当されてるんですか?」
「はい、そうなんです。やっとひと段落したところですが……難儀しましたよ」
まだまだ改良が必要です、と微笑む諸星さん。
ふと、ゆきなに目配せをしてそっと声をかけた。
「——先生、ちょっとお願いしてもいいですか?」
「はい? ええ、もちろん」
「ちょっと、呼ばれていて。生徒さんおひとり、お借りしますね」
先生がうなずき、ゆきなは静かに頷いた。
種子島へ出発です! 怪しい組織も次回…
ブックマーク! 評価! お好きなところにアクションお願いします。
ゆきなとえれなの ほんわか 日常を楽しんでいただければ幸いです。




