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動力炉起動 ④

とある家族の女子高生 と AI

宇宙ステーションの日常を描いた物語

その夜。


「ねえ、副艦長……じゃなくて、お父さん」


「ん、どうした?」


「お母さんには、“山の倉庫に行く”ってことにしない?」


「了解。そろそろちゃんと話すべきだとは思ってたんだがな。機会を見て、打ち明けるよ」


「うん。じゃあ、夜出発ってことで……そうそう、明日、ヘリウム転送に入るわ」



翌日。


ガレージに置かれたヘリウムのボンベが、ほんのりと光りながら音もなく消えていく。


「ちゃんとそっちに行った?」


「艦長。受領いたしました。変換器に先行注入いたします」


「了解。副艦長、行くわよ!」


「はいはい、清掃道具積み込んだよ。近くの公園の駐車場で大丈夫か?」


「十分よ」


エレナの声が車内に響いた。


「準備完了致しました。開始してよろしいでしょうか、艦長?」


「許可するわ、エレナ。くれぐれも安全第一で」


「了解致しました。補助核融合炉──シーケンス、スタート」



艦内の深部、補助核融合炉が静かに点火される。


「融合開始。ヘリウム4の回収シーケンス起動。反応安定、出力上昇中。徐々に50%まで上昇させます」


窓の外、静かな山から鳥たちが一斉に飛び立った。音は何もない。けれど自然は、何かを感じ取っている。


「現在、稼働出力28%突破。充電率4%。目標反応50%到達。ヘリウム4、合成処理開始──照射劣化率3%。充電率20%突破。艦内システム、全制限解除。フルチェック、開始」


空気が変わる。艦が、400万年の沈黙から目覚めようとしていた。



「メイン核融合炉、システムチェック開始──」


突如、警報が鳴る。


「警告:残り10分でヘリウム3は消耗予定。予測より少ない残量です」


「10分で大丈夫? エレナ」


「問題ありません。現在照射劣化率70%。充電率45%。メイン核融合炉、駆動部に15%程度の損傷確認。使用不能と判定されました。このコアブロックは飛行想定外であるため、修復は行いません」


「……了解」


「まもなく、充電率80%。照射率95%。残り稼働時間5分──2分──」


「照射率100%。充電率87%。再循環プログラム起動。精製ヘリウム3を予備タンクへ移動中。補助炉出力を2%まで降下させます」


「現在、システム予測による稼働可能年数:6年。出力次第で変動あり。過剰精製分、ボンベへ移行完了」


「転送装置、生物プログラムに切り替え。センサーデータ解析──周囲に猫、犬、イノシシを確認。実験転送を実施後、パラメーター再チェック」



「艦内転送、完了。センサー異常なし。帰還シーケンス、正常」


「艦内気圧、正常。酸素濃度、基準値。二酸化炭素濃度、許容範囲内」


「艦長。すべての準備が整いました。400万年ぶりのご乗船、お待ちしております。転送、許可いただけますか?」


私は一瞬、深呼吸した。心臓の音が静かに響いてくる。


「……ちょっと怖いけど──転送を、許可するわ」


転送室にて


「転送シーケンス起動。トリプルバッファで開始します。」


一瞬だった。


目の前に現れたのは、白く輝くクリスタルのような美しい部屋。床にはコイル模様が広がり、天井はまるで鏡のように反射している。広さはおよそ10メートル四方だろうか。


「艦長。お帰りなさいませ。お待ちしておりました。」


案内役の声が響く。


「司令所は上階にございます。移動エレベーターをご利用になりますか? それとも…歩いて向かわれますか?」


「せっかくだから、歩いて見て回りながら向かうわ。」


「では、床にルートを点滅表示いたします。ご注意の上、安全にお進みください。」


「ありがとう。…さすがね、内装も外観も綺麗。」


「ご確認、感謝いたします。」


「そんな大げさなものじゃないけど、隣が行きたがってるみたいだから。」


隣を見ると、副艦長でもあり、そして父でもある人物が、目を輝かせて待っていた。



巨大ドックへ


扉が開くと、目の前には想像を超えた空間が広がっていた。


広さは東京ドームを遥かに凌駕し、100メートル級の宇宙船が2隻。さらに、小型の宇宙艇が7隻ほど整然と並んでいる。



「ねえ、エレナ。あれって動くのかしら?」


「メンテナンスを行えば可能性はございますが、ステーションとは違い設計耐用年数は数百年です。順次、再資源化のため解体予定となっております。」


「そうなの…。じゃあ、せめて説明だけでも聞かせて?」


「はい。100メートル級の2隻は、護衛艦と貨物輸送艦です。護衛艦はワープ航行と敵性生物への対応任務に。貨物輸送艦は高速輸送を重視した設計です。


小型艦は、戦闘艇3隻、人員輸送艦2隻、科学調査船1隻、来賓用客船1隻となっております。人員輸送艦は、転送が困難な状況や電磁障害下で使用されます。」


「なるほど…でも、全部使えないのね?」


「はい。修理よりも新造の方が効率的です。」


「造船はできるの?」


「可能です。必要な資材の補充があれば、設計からの建造も可能です。」


挿絵(By みてみん)

初めての投稿になります。

初めの1週間は早めに7話投稿 その後3日に1回ぐらいを目安としています。

書くことが初めての物語になりますので応援していただければ幸いです。

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