テニス大会とみすずちゃん 37
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
みすずちゃんが可愛くて1日2回目の投稿です。
皆様のおかげで1ヶ月かからず5000pvとなりました。
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これからも頑張って書いていきますのでよろしくおねがい申し上げます。
朝、目をこすりながらベッドからむっくりと起き上がったゆきなは、時計を見て小さく叫んだ。
「やばっ、寝坊したっ!」
慌てて支度を始めようとしたその時、リビングからえれなの落ち着いた声が聞こえた。
「お姉様、行く準備できていますよ?」
「なんでーっ!いつも通り起こしてくれれば良かったのにー!」
「昨日かなりお疲れのようでしたので…」
そんなやりとりがありつつも、まだ時計は6時半。テニス大会の受付は9時なので、少し余裕はある。
この日は、一般参加可能な地方のテニス大会。普段なら初心者も混じるC級に出場することが多いが、今年はゆきなが本気モード。ダブルスの実力を試すため、B級に挑戦してみることにしたのだ。
「えれな、準備して。ご飯食べて、軽くアップしてから行こう」
「はいっ!」
台所に降りると、温かい味噌汁の香りとともに、ラップで丁寧に包まれたおにぎり、そして可愛らしい包みに詰まったお弁当が並んでいた。
「……お母さん……ありがとう」
「何言ってるの。食べて元気に行ってらっしゃい」
母の優しさに胸がじんわりと温かくなる。えれなと2人、手を繋いで外に出ると、冷たい朝の空気に頬を刺された。
「お姉様、お母様って本当に優しいですね」
「でしょ?普段は寝てるのに、こういうときは人一番気がつくの。すごい人なのよ、私のお手本にしなきゃ」
「はいっ!」
会場へ向かう前に、高校のテニスコートで軽く体を動かすことにした。
守衛室に顔を出すと、おじさんがにこやかに迎えてくれた。
「あけましておめでとうございます。コート使ってもいいですか?校舎には入りませんので」
「もちろん。部室も開けなくて大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です!」
「じゃあ、どうぞ。……おや、えれなさんも。あけましておめでとう」
「おめでとうございます」
すっかり覚えられているえれなに、ゆきなも微笑む。40分ほどラリーを繰り返し、汗をうっすらとかいた後、試合会場へ向かった。
受付で名前を告げると、係員がにこやかに対応してくれる。
「ゆきなさんと、えれなさん。高校2年生と中学3年生ですね。受付完了しました。時間になったらあちらにトーナメント表を貼り出しますのでご確認ください」
時間になると、8面のコートで一斉に試合が始まる様子だった。貼り出されたトーナメント表を見て確認していると、フェンスの向こうから見覚えのある女の子が手を振っていた。
「みすずちゃん!?どうしてここに?」
「えへへ……応援に来ました。えれなちゃんと部長の応援です」
「可愛い……あれ、今日はメガネは?」
「今日はコンタクトっす!」
その笑顔に元気をもらい、ゆきなは心の中でぐっと拳を握った。
1回戦の相手は、元気なおばちゃんペア。
「娘達みたいなのがきたわね、ふふ」
「よろしくお願いします!」
試合は丁寧なラリーとボレーでテンポよく進み、ゆきなとえれなのペアが1セットを先取。おばちゃん達もさっぱりとした方々で、「今度一緒に練習しましょ!」と声をかけてくれた。
みすずちゃんがフェンス越しに飛び跳ねながら拍手を送ってくれる。
2回戦は高校生のペア。手強そうだったが、前試合見ているえれなの分析が光った。
「右側サーブの確率、84%。リターン狙いましょう」
その戦術が功を奏し、ストレート勝利。ベスト8入りを決める。
「えれな、すごいわ……ちょっとズルな気もするけど、まあいいか(笑)」
3回戦ではベテランの巧みなショットと読みが炸裂。試合は6-6まで持ち込まれ、タイブレークへ。疲労が見える中、最後はえれなの完璧なボレーとゆきなの真ん中を突くサーブで、15-16の接戦を制した。
「ありがとうございました!」
と深くお辞儀をすると、相手のおばさまが笑顔で返してくれた。
「そんなに真面目にならないで〜(笑) また一緒にやりましょうね!」
会場からも拍手が起きた。
昼休憩。お母さん手作りのバナナサンドに感激するえれな。
「おいしーい!」
みすずちゃんもお弁当を開いて微笑む。お父さんだけが「みんなずるいなぁ」とぶつぶつ言いながら、売店へ向かっていった。
午後、ベスト4戦はやや疲れが見えた対戦相手にサクッと勝利。
そして決勝。相手は親子ペア。40代の母と大学生の娘。実力は拮抗していたが、途中で娘が足を痛めてしまい、無念の棄権。ゆきなとえれな、初優勝となった。
「優勝おめでとうございます!」
副賞はスポーツショップの買い物券。えれなの新しいラケットを選ぶ楽しみが待っていた。
「今度、えれな専用のを2本ね!」
帰り道、まだほんのりと試合の余韻に包まれながら車に揺られていると、ゆきなに着信の通知が入った。相手はおじさまだった。
「はい、ゆきなです」
『おお、お疲れさん。今、現場から連絡があってな。今日の夕方から測量と墨出しに入るそうだ。』
「えっ、もうそんなに早く?」
『うん、建築確認は今朝出した。スムーズにいけば、着工は7日から14日あたりになりそうだな。』
思ったよりもずっと早い展開に、ゆきなは驚きつつも胸の奥が高鳴るのを感じた。自分の計画した設計が、いよいよ形になっていくのだ。
『そういえば、起工式はやるかい? 神主さんが、“あれはゆきなさんの計画した建物なんでしょう?”って、なんだかやけに乗り気でな(笑)』
「あー……またどこからか聞きつけたんですね。おじさま、また情報出しましたね?」
『いやー……俺からは言ってないよ?たぶんどこかから自然と…(笑)』
「ふふ、まぁいいです。起工式、お願いします。日程は……再来週の日曜日ぐらいがいいでしょうか?」
『そうだな。それか成人の日でもいいぞ。どっちが都合いい?』
「再来週の日曜がちょうどいいかも。えれなも一緒に行けますし」
『了解。じゃあ準備進めとくな。』
「ありがとうございます」
通話を終えると、えれなが不思議そうにゆきなの顔を覗き込んでくる。
「お姉様、何か良いことですか?」
「うん、秘密基地、いよいよ始まるって」
「それは……着工、ということですか?」
「そう。墨出し、つまり基礎の位置決めが今日から始まるの。建築確認も出せたし、順調にいけばもうすぐ工事が始まるのよ」
「わあ……本当に、夢がかたちになるんですね」
えれなは感動したように瞳を輝かせた。
「でもその前に、起工式っていう儀式をやるの。地鎮祭って言ってね、土地の神様にご挨拶をする大事な儀式。再来週の日曜の予定だって」
「私も……参加してもよろしいでしょうか?」
「もちろん。あなたはこの計画の仲間なんだから」
「はいっ、ありがとうございます!」
車窓には夕焼けに染まる雲が静かに流れていた。新しい一年の始まりとともに、また一つ、大きなプロジェクトが動き出そうとしている。
初めてのプロアマの市主催テニス大会
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ゆきなとえれなの ほんわか 日常を楽しんでいただければ幸いです




