朝焼けのパンと、未来の約束 28
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
朝焼けのパンと、未来の約束
夜の大冒険のあと、
焼きそばで満たされたお腹を抱えたまま、
理科部のみんなはその場で爆睡していた。
部室には、穏やかな寝息と静けさ。
時計の針が、朝の7時を指している。
「うてーーーーー」「ワープ……」
誰かが寝言をつぶやいている。
――きっと、昨日の夢の続きを見ているのだろう。
微笑ましくて、愛おしいかわいい後輩たちだった。
「エレナ、起きてる?」
「起きてます、お姉ちゃん」
「じゃあ、みんなに焼きたてパン、買いに行こっか」
⸻
先生にもひと声かけてから、
ふたりは制服の上にコートを羽織って外へ出た。
「先生、ちょっとパン屋行ってきますね」
「了解。学校の鍵は貸すけど、戻ったらちゃんと閉めてね。
ここ女子校だから、施錠は内側からよ」
「はいっ、任せてください!」
⸻
向かったのは、学校のそばにあるパン屋さん。
ふだんは購買で買えるパンも、今日は特別。
「おはようございます」
「おはよう、ゆきなさん。できてるわよ〜」
焼きたての香ばしい匂いとともに、店のおばちゃんが出してきたのは――
「宇宙船パン・ウインナー入り 星⭐️6個付き、それにコーヒーと甘〜いデザートパン!
みんなの分、揃ってるわよ〜。お代は前払い済みだから、そのまま持っていって〜」
「ありがとう、おばちゃん!」
「こちらこそ〜。理科部恒例合宿の最後はパンって、もう伝統だもんね」
「はいっ、伝統ですから!」
笑いながら、袋を抱えて戻っていくふたり。
⸻
部室に戻ると、まだみんなぐっすり。
だけど、パンの香りが立ちこめると……
「ん……いい匂い……」
「うぅ〜お腹空いたぁ……」
「焼きそば食べて爆睡しちゃった……」
生徒たちがひとり、またひとりと目を覚まし始める。
みすずちゃんも、毛布にくるまりながら、ふにゃっとした顔で起きてきた。
「朝ごはん食べたら、お片付けね〜」と、先生の声。
「屋上の道具、部室の整理、終わったらシャワー浴びて帰りますよ〜」
「えっ、お風呂? やったー!」
「今日はね、**寮が帰省中で誰もいないから、沸かしてくれてるんだって♪」
「先生も一緒にどうですか〜?」
「え〜? 誰も見てないし……入るーーーっ!」
大爆笑が起こる。
⸻
朝ごはんが始まると、再び歓声があがった。
「アトランティス号パンだー!」
「でしょ? 部長が毎年テーマに合わせてパンを頼んでるのよ」
「おお〜! コーヒーもうまっ」
みんな口を動かしながら、昨日の冒険を思い出していた。
そして――ゆきな部長がふと呟く。
「先生……8年前の理科部部長でした?」
「……あ、バレた?」
みんなが一斉に驚く。
「先生、創立者のひとりなんですか!?」
「ええ。最初にこの部活と合宿を始めたメンバーのひとりだったのよ」
ゆきなが、倉庫から見つけたという古いアルバムを広げた。
「この写真、おさげの子が先生!」
「わーっ! 恥ずかしい〜〜〜見ないでーー!」
笑いが起きる。
でも、ゆきながそっと胸に手を当てて言った。
「でも、思いはちゃんと受け継いでますよ。私たちも」
その言葉に、先生も目を細める。
「……本当にね。この部活って、卒業生の支えが大きいのよ。
あの自動望遠鏡だって、寄付してくれた卒業生がいたから買えたんだもの」
「じゃあ……来年、卒業生全員招待して合宿しません?
“アトランティス第二弾・地球外生命体に迫る”ってテーマで!」
「いいわね〜! 卒業生リスト、私が集めておくから!」
「じゃあ、今日のストーリーも物語風にまとめて、パンフレットにしましょうか!」
笑いながら話す中で、
ゆきなは、窓の外の空をふと見上げる。
夜明けの名残を溶かす、穏やかな朝。
そこに浮かぶ雲は、どこか、宇宙船のように見えた。
「夢は……まだまだ続くわ
「よーし、じゃあサクッと片付けちゃいましょ!」
ゆきなの一声で、みんなが動き出す。
手慣れた様子で望遠鏡をたたみ、寝袋を片付け、ダンボール製の宇宙船も静かに解体。
「ふぅ……これで全部かな」
「あとは、お風呂ー!!」
⸻
寮のお風呂は広くて、冬でもぽかぽか。
みんなで入る湯船には、どこか旅の終わりのあたたかさがあった。
「……ここで全身見れるんだから、守秘義務ってここでも発生してるのかな〜?(笑)」
誰かが笑いながら冗談を飛ばす。
「いやいや、あれはね、“それっぽく”言っただけで……投影機の仕組みとかはまだ企業秘密なのよ」
「なるほどぉ〜〜」
みんな笑い声をあげながら、ぽかぽかと芯まで温まっていく。
⸻
着替えて、荷物をまとめて――
いよいよ帰宅の時間。
「じゃあ、みんな、気をつけて帰ってねー!」
先生の声に見送られて、校門を出る。
冬の冷たい風が、少しだけ名残惜しさを運んでくる。
⸻
帰り道。
みすずちゃんが、エレナの隣でぽつりとつぶやいた。
「エレナちゃん…私…今日、楽しかった!」
エレナは微笑む
「私もずっと1人だったでもお姉ちゃんが引き上げてくれたのあの暖かい性格ですごいでしょ!」
「はい、最高でした。数学ももちろん楽しいですけど、
先輩たちのやさしさ、先生の穏やかさ……そして、部長の細やかな気配り」
「うんうん!」
「人って、あったかいんですね。私……もっとみんなと関わればよかったな、って」
それを聞いて、エレナはうれしそうに笑った。
「じゃあ、これから! 一緒のクラスだし、仲良くしようね♪」
「はいっ!」
ふたりはすっかり打ち解けて、楽しそうに並んで歩いていく。
⸻
少し後ろを歩いていたゆきなに、誰かがくすっと笑いながら声をかける。
「部長~、後輩に手ぇ取られちゃってますよ?」
「なにそれ(笑)」
「でもこれ、家族に言ったらダメなんですよね~? “守秘義務”♪」
「うっ……それは……でも、“楽しいアトラクションした”くらいならいいかな?」
「はーい、了解でーす!」
そんなやりとりも、今では**部の中のひとつの“物語”**になっていた。
「写真、できたらみんなに送りますね~!」
デジタルデータはやばいわ 心の声
「わーい!」
⸻
――そして、その写真は。
後日、先生の机の横に、あの星のついたバッジと一緒にそっと飾られていた。
いつまでも、温かい思い出として。
⸻
「おかあさーーーん! ただいまーーーーっ!」
夕暮れの帰り道、玄関がバタンと開く。
「おかえり~~~! 楽しかった?」
「うん! サイコーだったよ!」
2人が元気いっぱいに言うと……
「えっ……お父さんは? ねぇ、お父さんは!?」
「……あ、どうでもいいかな(笑)」
「えぇええ!? 泣いちゃう〜〜〜!!」
家の中には、また笑い声が響く。
今日は特別な日だった。
だけど、何気ない日常にちゃんと戻ってきた。
年末の、あたたかな帰宅。
冬の空には、うっすらと星が輝いていた。
やっとお正月!とりあえず合宿までは連続投稿ができました・・
でも中型級秘密基地完成までも行きたい気もする頑張りたいので・・
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ゆきなとえれなの ほんわか 日常を楽しんでいただければ幸いです。




