小さなトラブルとティータイム 26
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「では……暑いけど、太陽へ行きますよ〜!」
「えーー!! 暑すぎる〜!」
「フレアに当たると死んじゃうので、慎重にいきましょうね!」
「機関部、エンジン出力80%まで上昇。保護フィールド最大!
ワープカウント、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1!」
「前方、レーザー照射入りました。次の排出予定は……7分後です」
「……ちょっと暑いかもね。エレナ、お願い!」
「はい。アイスアップルティーを皆さんに提供いたします」
「デザートもあります! ただし……メダルを持ってる人限定!」
「えーーー!? 聞いてなーーーい!!」
⸻
【デザート条件一覧】
・3メダル:エレナ作のシフォンケーキ
・2メダル:カップケーキ
・1メダル:クッキー
「では、お飲み物をどうぞ!」
椅子の下からテーブルがせり上がり、アイステーが一人ひとりの前に置かれる。
「わぁ〜〜〜♡」
「美味しい〜〜!」
「みすずちゃん、全部欲しそうな顔してる」
「全部くださいっ!」
「では、テーブルにメダル6枚入れてくださいね♡」
ピッ、と音がしてテーブルが拡張され、豪華なデザートコースが出現。
「うわ〜〜〜っ♡」「このケーキ最高!」「エレナちゃん、ほんとに手作り?」
「はい。お母さんに仕込まれました!」
⸻
そのとき──。
「ピピッ、ピピッ……。間もなく到着します」
「皆さん、バリアがあっても光で暑くなるので、無理そうだったら教えてくださいね」
ワープ解除と同時に、目前に現れる巨大な太陽。
グルグルと回転し、巨大フレアが立ち昇る。
「うわーーー!」「すごい……!」「暑っ!」
「でもここは、天然の核融合炉です。そして、ヘリウム3も副産物として生成されています」
「形を保てないような過酷な世界……それが太陽なんだね……」
全員が仰ぎながら、手で顔を扇いでいる。
⸻
「では、太陽はこの辺にして、次は……火星へ!」
「はいっ!」「了解っ!」
「機関員、出力80%、ジャンプ時間は20分。安定出力を!」
「出力安定です!」
「ワープ、開始!」
⸻
火星到着。
「出力20%まで低下……安定しました」
「ここが火星です。地球のお隣だけど、平均気温は−60℃」
「さむ〜い!」
「大気のほとんどは二酸化炭素。重力は地球の1/3ほど」
「テラフォーミングの話、ありましたよね?」
「うん。ドームに植物を植えて酸素を……って考えもあります」
「でも現実的にはかなり厳しい。とはいえ――」
「ほら、あの川の跡!」
「そう、昔は水があったのではと考えられています。
今は痕跡しか残ってないけど、バクテリアくらいなら……生き残ってるかもね」
「火星の土、まだ地球に持ち帰れてないんだよね」
「ええ。でも、その謎を解く日は、そう遠くないかもしれません」
⸻
「さーて……次は木星、そして土星へ!」
と、楽しい時間が続くはずだったが――
突然、船内に警報が鳴り響く。
「ワープ中、警報発令!」
「融合炉が不安定です!」
「何かしらの重力干渉を受けています!」
「緊急ワープ解除! エレナ、即時対応を!」
「ワープ解除。周囲観測を開始します!」
「砲撃手、警戒を! 何が来るかわからない!」
アラームが続く中、モニターが示す。
「報告! 水星の尾に入っており、氷の重力波に引き込まれています!」
「リミット解除! 艦長、自由砲撃の許可を!」
「許可! 全方位、撃ちまくりなさい!」
「主砲、起動準備!」
「エレナ、シークエンス入りまーす!」
「主砲、起動完了!」
「砲撃開始ー!!」
機体が震えるほどの砲撃の連続。モニターが眩しく明滅する。
「前方、通路形成完了!」
「ワープ、入りました!」
「機関員、出力安定確認!」
「出力安定です!」
全員、安堵の吐息。
「ふぅ……」
ワープアウト。木星到達」
「機関員、出力10%まで減少、安定しました」
前方に現れたのは、巨大なガスの惑星。
「でっかい……! 本当に太陽系最大ですね」
「木星は主に水素とヘリウムの雲で覆われていて、地球の11倍の大きさ。
衛星も40個以上ある、まさに“ミニ太陽”って呼ばれる存在なのよ」
「エウロパ、ガニメデ、カリスト……氷の下に海があって、生物がいるかもしれないって話、ワクワクしますね!」
「でも巨大生物だったら……」
「うわ、それはちょっと怖い〜!」
「ちなみに豆知識。木星は、太陽になり損ねた星とも言われてるの。主成分が同じで、あと重力が80倍あれば核融合が始まるらしいのよ」
「へぇ〜!」
船窓の向こうには、巨大な渦巻き模様と、意外にも存在する薄いリングが見える。
「じゃあ、次は……土星へ!」
⸻
ワープ時間:5分。
「はい、到着! 土星です」
「わあああ……綺麗……!」
「地球の約9倍。降り立つことはできないけれど、衛星の中にとても興味深いものがあるわ」
「エンケラドスは氷殻から水蒸気を噴き上げてるって。
そしてタイタンには液体メタンの海と湖、有機物もある……もしかして生命も?」
「今はまだ遠くから観るだけ。でも、将来、きっと行けるようになる。そう信じて、今は見届けましょう」
重力波に巻き込まれる危機も乗り越え宇宙をクルージングする理科部一同
このまま大きなことも起きずおわればいいのですが・・・
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ゆきなとえれなの ほんわか 日常を楽しんでいただければ幸いです。




