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崖が崩れたらそこは宇宙ステーション♪  作者: Sukiza Selbi


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175/178

にゃーん族のノアリエル新居 175

とある家族の女子高生 と AI

宇宙ステーションの日常を描いた物語

「お姉様、火星到着です。火星ゲート管制より通信——歓迎とのことです。」


「ぶっ、通常で歓迎されるの初めてかもしれないわね、この規模で。」


エレナが少し楽しそうに笑う。


「はい。子供たちがこんなにわいわい来るのは本当に久しぶりだそうで、

 みんな本当に楽しみにしているみたいですよ。」


「いいわね。……小学校も使っていいって?」


「はい、正式に許可が出ています。教育もしっかりできそうですね。」


「戻った時も、学校の先生ごと派遣してもらえそうね。

 中央と工場の間、居住区の使用許可も正式に下りました。」


「了解。それじゃあ、向かいましょう。管制、繋いでもらえる?」


エレナが回線を開くと、管制官の元気な声が返ってきた。


『ゆきな艦長、こんにちは。本日はどのようなご用件で?』


「依頼をひとつ。——いつもの美味しいお肉と、お魚と、お野菜をたっぷり。

 着いたらみんなでバーベキューをするの。道具とコンロも一式、お願いできるかしら。支払いはまとめ  て落として。」


『おお、それは楽しそうだ! こちらとしても歓迎です。

 いろんな人が参加してもいいですか? 私も本当は行きたいくらいなんですが。』


挿絵(By みてみん)


「いいじゃないの、どうぞどうぞ。せっかくだから各都市代表も呼んで“懇親会”にしましょうよ。

 子供たち、絶対喜ぶわ。」


エレナがくすっと笑う。


「お姉様、あれ……使うんですね?」


「もちろんよ〜。倉庫にこっそり入れておいてって頼んでおいたの。

 子供の心、わしづかみにしてやるんだから。私、プロ級なんだからね?」


(その“あれ”は、たこ焼き鉄板セットと、ふわふわ綿あめ機と、カラフルかき氷機一式であるのだが、

 それはまだ秘密だ。)


そうしているうちに、アースは静かに減速し、指定座標上に降り立った。


目の前に広がった光景に、一同は息を呑む。


挿絵(By みてみん)


「……うわ。」


そこには、木々の香りが満ちた森の中に、

ログハウスがずらりと並んでいた。

全部で十八棟。

その間には、小さな広場、木製のブランコ、アスレチック遊具、

子ども用の低めの滑り台、キャンプファイヤー用のサークルまである。


まるで、絵本からそのまま切り取ってきたような“森のコテージ村”。


「わーーーーーっ!!」


ニャーん族の子どもたちが一斉に駆け出す。

親たち、関係者たちも目を丸くしながら後を追い、

新しい住居に、きらきらした視線を注いでいた。


「えっ、これが……今まで使われてなかったの?」


シーザーが信じられないという顔であたりを見回す。


すぐそばに、森の中央コンピューター用ホログラムが現れた。


『はい。定期的に整備はしていましたが、

 しばらくは“予備”として保管していた施設です。』


「これ……下手したら、キャンプ好きなアウトドア派の人たちが泣いて喜ぶわよ?」


『えっ、本当ですか?』


森コンの声が、ちょっと誇らしげになる。


「本当よ。今度、銀河連邦の“道徳テスト合格者”だけを対象にした

 ノアリエル旅行ツアーでも提案するつもりなの。そのパンフレットに、この写真も入れさせてもらうわね。」


『ぜひお願いします。

 同様の施設は、各地に三十ヶ所以上ございます。』


「……三十ヶ所以上?」


ゆきなは、呆れ半分、感心半分でため息をついた。


「今度、“情報共有会議”しましょうね、本気で。あ、そうだ。今後、私たち、銀河連邦の本星にも招待されているから、一緒に行って会議に顔出してね。森コン代表として。」


『光栄です。どの中央コンピューターが行くか、抽選になるかもしれませんが……。 代表名義は一応、森の中央でよろしいかと。』


「じゃあ、その方向でお願い。」


広場の真ん中に、ゆきなが立つ。


「はーい、みなさーーん!」


子どもたち、保護者、シーザーたちニャーん族のメンバー、

さらにはノアリエルの受け入れ担当クルーたちまで、

ぞろぞろと集まってくる。


エレナが横で鍵束の載ったトレイを持ち上げた。


「ここに、鍵があります。

 家族ごとに一つ、大きめのお部屋付きログハウス用。

 単身の方にも、半分ずつ使えるルームキーを用意しました。」


隣には、森コンが映し出した地図がホログラムで浮かんでいる。


「この地図に、希望の番号とお名前を書いてください。

 決まったら、荷物の搬入を始めましょう。

 ——そのあと、三十分後に歓迎バーベキュー大会をスタートします!」


「バーベキュー!」


「お肉!」


「お魚も?!」


わーっと子どもたちの声が弾ける。


「もちろんお酒もあるから、大人はほどほどにね。酔っぱらって子どもより先に寝ないこと!」


周囲の大人たちから笑いが起こる。


「さー、スタート〜!」


「うちここ!」「こっちがいい!森が見える!」「滑り台の近くがいいー!」


好きな小屋を指差しながら走り回る子どもたち。

シーザーたち独り身組は、少し後ろからその様子を見守りながら、

なんとも言えない優しい表情を浮かべていた。


挿絵(By みてみん)


そこへ、シーザーがゆきなに歩み寄る。


「ゆきな艦長。」


「なに?」


「……あんなに怯えて震えていた子どもたちが、こんなに走り回って笑っている。……本当に、ありがとうございます。」


ゆきなは、少し照れたように笑った。


「まだスタート地点よ。ここから“日常”を作っていくのは、あなたたち自身だもの。私たちは、ちょっと背中を押しただけ。」


「それでも……です。」


シーザーの瞳が、少し潤んでいた。


エレナも隣で微笑む。


「みんなで仲良くしていきましょうね。ノアリエルも、地球側も、銀河連邦も。“ご近所付き合い”は、大事ですから。」


「……はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」


頭上には、淡い空。

遠くには、工場都市のシルエットと、空中都市へと続くゲート。


その真ん中で、ニャーん族の新しい生活が、

ゆっくりと、しかし確実に動き始めていた。


——そしてこのあと、

ゆきなの“秘密兵器”たこ焼き&綿あめ大会が、

子どもたちの心を完全に持っていくのだが、

それはまた別のお楽しみである。


新しいおうちに移った にゃーん族の子どもたちは、もう大はしゃぎ。

走り回り、跳ね回り、ふかふかの布団にダイブしてみたり――

その姿は、まるで失われていた“日常”がようやく戻ってきたようでした。


そして、その笑顔を支えてくれたのは、

ノアリエルの人々。


長い年月を経て誰にも使われなくなった家を、

丁寧に、心をこめて、ひとつひとつ修理し続けてくれた人たち。

「また誰かが使ってくれるなら、それで十分だよ」

そんな想いが込められた住まいに、にゃーん族は深い感謝を抱きました。


優しさがつないだ新しい暮らし。

その温かさは、きっと星の未来にも広がっていくのでしょう。


どうぞ次回もお楽しみに!


もしこの物語を気に入っていただけましたら、

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