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崖が崩れたらそこは宇宙ステーション♪  作者: Sukiza Selbi


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174/178

にゃーん族の新技術 協力型融合炉システム 174

とある家族の女子高生 と AI

宇宙ステーションの日常を描いた物語

新しい交渉材料


アースの作戦室に戻ると、

ゆきながすぐに声をかけた。


「どう? うまく行った?」


エレナは胸を張って微笑む。


「はい、完璧です。くるりさんの人格転送も成功。新しい身体にも問題なしです。」


「さすがね、えれな。」


「それと——」


エレナの表情がすこし真剣になる。


「中央コンピューターの最深部で、すごい技術が眠っていました。 ニャーん族の“協力型融合炉システム”です。これは彼らの技術ですから、まずはシーザー様の許可を取ってからになりますが……。」


「そう……。」


ゆきなは少し考え、ふっと目を細めた。


「ふと思ったんだけど、そのシステム。“くまさんたち”が持ち出した融合炉からも——理論上、出力を“奪える”ってことよね?」


「原理的には、そうなりますね。同系列、もしくは同じパラメータを持つ融合炉なら、出力の分配や吸収が可能になります。」


「……これは、交渉の時の“切り札”になるわ。」


ゆきなは、静かに拳を握った。


「好き勝手に星を滅ぼしてきた相手に、“あなたたちの融合炉も、こちらで握れるのよ”ってちゃんと伝えられる。」


エレナも頷く。


「はい。暴力に対して、ただ殴り返すだけじゃなく、“技術”と“知恵”で対抗できる。 ……それが一番、平和に近い形かもしれません。」


ゆきなは天井を見上げ、

まだ何もない“この星の未来の街並み”を思い描いた。


「ニャーん族の技術も、思いも、絶対無駄にしない。この星も、くまさんたちの無茶も——全部、ちゃんと“次の時代”の材料にしてやるんだから。」


その言葉に、

新しい黒豹アンドロイド“くるり”も、どこか誇らしげに微笑んでいた。


シェルター再生計画、本格始動


「お姉様。シェルター基地の合成機をバージョンアップしました。これより周囲の造成に入ります。」


エレナのホログラムが投影され、星の地形図が開く。


「上空の大型ステーションから資材移動も自動で開始しています。造成予測――周囲10キロ、所要期間はおよそ1ヶ月かと。」


「い、一ヶ月でできちゃうの? シーザーは耳をぴんっと立てたまま固まっていた。


「はい。平地化、道路敷設、基礎インフラまでは何とか。 ただ、町の設計はそれまでに決めていただく必要があります。」


ゆきなは、ふっと口元をゆるめる。


「まあ……早いに越したことはないわね。」


しかし、ここで彼女はふと思い出したように言う。


「シーザー。くるりは知っているけど、もうひとつ話があるの。」


シーザーは姿勢を正した。


「あなたたちの星に残った最後の科学者からのプレゼントよ。 ――協力型融合炉。」


ゆきなが倉庫の扉を開くと、そこには古いが特殊な装置が置かれていた。


「これのおかげで、ニャーん族系列の融合炉は全部操作可能になるわ。もちろん、あいつら――“自分の技術”と主張していた連中の融合炉もね。多分、中身の根本的な技術はニャーん族の著作権でしょうし。」


ゆきなが軽く肩をすくめる。


「どう使うかは、お任せするわ。」


数秒の静寂。そして――


「……ゆきな艦長。これまでのご協力、感謝に堪えません。ぜひ、この技術……共同開発をお願いできますか?」


「もちろんよ。こちらも“宝物級”の技術だもの。ノアリエルの科学者なんて、喜びすぎて目が飛び出るわね。」


背後で待機していた科学クルーたちが、


「はい、ぜひともご一緒に!!」


と勢いよく挙手するものだから、ゆきなは思わず吹き出した。


「エレナ。ノアリエル都市全代表とのオンライン会談を準備して。」


「了解。中央・空・海・岩・工場――全チャンネル接続します。」


五つの都市代表の hologram が並び、一斉に挨拶した。


挿絵(By みてみん)


『ゆきな艦長、ごきげんよう ニャーん族の受け入れについて、事前に連絡を受けている。』


「ありがとう。本来なら道徳テストを受けてもらうところだけど、今回は例外でお願いしたいの。」


『もちろんだ。あなたとエレナの信頼の証と受け取っていい。友好種族が増えることは、ノアリエルにとっても大きな喜びだ。』


画面の向こうで、全員がやわらかく笑った。


『ちょうど、工場都市と中央都市の間に、昔、家族向けの大きな寮がある。そこをニャーん族の新しい拠点にどうだろう?』


映し出された映像に、子ども達は歓声を上げた。


「お姉ちゃん、ここに住めるの?!」


「そーよー♪おっきい水たまりみたいな海でも泳げるし、空島でも走り回れるわよー。」


「わーいっ!!」


挿絵(By みてみん)


星の未来が、一瞬で華やいだ。


アースの作戦室――。


「エレナ、最高速度で火星ゲートへ向かうわよ。融合炉、稼働へ。」


「了解。ワープエンジン接続――スタート。」


アースが黄金の保護幕をまとい、宙へと――跳ぶ。


光の尾が背後に弧を描き、

次の瞬間には星々が流れ線となって消え去る。


《現在速度:ワープ19.8……20.1……上昇中》


挿絵(By みてみん)


「これでまだ土曜日って……もう疲れたわ。」


ゆきなは椅子に倒れ込みながらため息をつく。


「明日は帰ってテニス、できますかね?」


「できることを願うわ。火星までは……17分です。」


「早すぎるわね……もう。」



■勢力圏を“地図”にする計画


ふと、ゆきなが言った。


「エレナ。天の川銀河における“私たちの勢力範囲”を算出してくれる?それから、ニャーん族が支配していたエリアも加味して。」


「了解……ですが、お姉様。かなり広くなりますよ?」


「いいのよ。決まっていないなら、広い方が守りやすいわ。」


エレナは高速演算に入り、銀河地図が広大に描き直される。


「ノクリエル側の現勢力範囲も記載ね。それを全部包むように線を引いて――」


「……お姉様、一体何を?」


ゆきなは指先で銀河の端を軽くなぞった。


「探索・防衛衛星を全周囲に配置するのよ。あの巨大艦からとめしの大型艦の分解資材が山ほどあるでしょ?それを全部使うわ。」


エレナは息を呑む。


「お姉様、まさか……あの“協力型融合炉”を?」


「そう。

 小型融合炉かもしれないけど、2000億個作ったとして――」


ゆきなは笑った。


「その衛星網の周囲一帯では、必要な瞬間だけ2倍の出力が引き出せるのよ。」


エレナの目が輝いた。


「お姉様……!それってアースだけじゃなく、ハナフライム、アトランティス、ノアリエルのシステム全部に……!」


「そう。“星ごと巨大なネットワーク”にする。スーツの連結補助で100%出力維持も可能になるわね。」


エレナは少し震えた。


「……これは、宇宙が変わります。」


「変えるのよ。ノアリエルにも正式に打診するつもり。三種族合同の銀河防衛計画としてね。」


挿絵(By みてみん)


そしてゆきなは、少し照れくさそうに言った。


「銀河連邦には……そうね。大学に入ったら、論文で発表するわ。」


エレナが目を丸くして笑った。


「お姉様らしいです!」


アースは青色の光をまとったまま、

静かに火星ゲートへ向けて疾走していく。


「……忙しいけど、楽しいわね。」


ゆきなの声は、少し誇らしげだった。



にゃーん族の全盛期の最後の開発技術――

それは、えれなが想像していた以上に、途方もない代物でした。


星を動かし、文明を支えてきた系列の融合炉そのものを操作し、

さらにエネルギー供給まで自在に行えるシステム。


それは単なる機械ではなく、

まるで“星の鼓動”と直接つながるような、

神話級の技術でした。


くるりの誕生、にゃーん族の復興、そしてこのエネルギー技術。

すべてがひとつにつながったとき、

銀河の未来はどんな姿を見せるのでしょうか。

ゆきなとえれなの旅は、さらに深い宇宙へ――。

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