銀河連邦アザト総司令の一日 ★170 ★ 記念作品
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
【銀河連邦主要会議 ― アザト司令の決断】
——時を少しだけ戻そう。
銀河連邦本部・時空ドーム会議室。
十二の国の代表たちが集う円卓には、光の資料が浮かび、淡い青の照明が天井を巡っていた。
「さて、次の議題は——」
その瞬間、重厚な扉がバタンと開いた。
「アザト総司令、なんだね今は主要会議中だぞ!」
側近が慌てて立ち上がる。
だがアザト司令は表情を変えず、ゆっくりと腕を組んだ。
「……いや、それよりも——ふと考えてしまってな。この会議より大事なものが、もしかすると今あるのではないかと」
「……まさか、あの“二人娘”か?」
「その通りです。」
会議室がざわつく。
エルダンカ国王が、ふくよかな笑みを浮かべながら髭を撫でた。
「ふふっ、あの子たちのことですか」
「皆様、申し訳ない。一時間、休憩をいただきたい。この詫びは——今日の懇談会で“特上のワイン”をご馳走しよう」
「特上だと!?」
「では、異議なしだ!」
一瞬にして会議は和やかな空気に包まれた。
「アザト司令、助かりましたな」
「国王、ありがとう。まったく、君の笑顔はいつも酒の香りがする」
「はっはっは、それは褒め言葉と受け取ろう!」
そのまま国王はにやりと笑い、他の代表たちに向かって言った。
「では、アザト司令が戻るまで——噂の“二人娘”の話でもしようではないか!」
会場は一気に明るくなり、各国の外交官が興味津々で頷いた。
***
その頃、廊下を歩くアザト司令は足を速めながら呟いた。
「それにしても珍しい……だが、なぜゆきな司令たちが“時空通信”を? 本来は連邦の最高階層しか扱えんのだが」
「はい。ゆきな司令は“妖精伯”でもありますので、独自の時空魔法を使用されております。通信はエルダンカにある邸宅経由で確立中です」
「なるほど……妖精の仮宿か。便利なものだな」
側近が続けて報告する。
「連絡メールによると、三十分後の中継時間に“直接対談”を希望されています」
「なるほど……例のハナフライムも関係しているのか?」
「はい。先日のハナフライム到着により、今回の銀河会談も迅速に。以前は集合に三週間かかる領主たちも、今やわずか数日です」
アザト司令は笑いながらコートのポケットからメモを取り出した。
「まったく……あの子たちは便利なものを次々に作る」
「司令、コーヒーをどうぞ」
「ありがとう。……ふふ、ゆきな司令にえれな司令、“妖精伯”に“伯爵”か。次は何の肩書が増えるやら。来年には留学予定だろう? 講師としても迎え入れねば」
「銀河連邦アカデミーも、彼女らの戦術論の講義を待ち望んでおります」
「そうだろうとも」
通信士の声が響く。
「アザト司令、通信繋がります!」
「よし——では応答だ」
***
数十分後、通信が終了。
アザト司令は椅子にもたれ、ゆっくりと目を閉じた。
「……まさか“グレート・グレズ”か。敵対してはいないとはいえ、また厄介な相手と揉めておるな」
彼は机に手を置き、低く唸る。
「あそこは昔から、技術を“盗む”ことしか考えておらん。正義も理想もない。……だが、今回ばかりは相手が悪かったな」
彼の口元に、微かな笑みが浮かぶ。
「天秤にかければ百に一つの確率でも、私はゆきな司令とえれな司令を信じる。……いや、百どころか、万に一つでも」
壁のスクリーンに映る戦闘報告映像を眺めながら、アザトは独り言を続けた。
「さて……どんな形でグレート・グレズが泣きついてくるか。だが、あの二人のことだ。文明ごと消し飛ばすこともできるだろうに、そうはしない。平和第一主義——あれこそ真の強さだ」
カップのコーヒーを飲み干しながら、彼は小さく笑った。
「……それにしても、なぜ関わったのか。まったく、お節介な二人め」
「また誰かを助けたんでしょうね」
と、側近が苦笑する。
「だろうな。だが、それでいい。あの二人は、銀河の“灯”だからな」
***
再び会議室に戻ると、騒がしい声が飛び交っていた。
「アザト司令! なんでそんな大事なことを隠していたのです!」
中央で、主要国代表達が堂々と立ち上がっていた。
「えっ……まさか、もう話してしまったのか」
「もちろんだとも! こんな素晴らしい子たちを隠す理由がどこにある!」
会議ホールの中央では、ゆきなとエレナの映像と写真がホログラムで投影され、代表たちが口々に感嘆の声を上げていた。
「この二人が……!」
「若いのに司令官だと!?」
「妖精伯だと!?」
会場が一気に熱を帯びる。
アザト司令は思わず額に手を当てた。
「やれやれ……まったく早いな」
すると、アザト総司令がにっこり笑いながら言った。
「ここにな——あの二人からの“贈り物”がある」
そう言って取り出したのは、透明なクリスタルボトル。
中で淡く赤い液体がきらめいていた。
「どうだ、会議が終わったら皆で飲もうではないか!」
「おおっ!」「それはぜひ!」
「それはサクッと議題を片付けねばな!」
全員の笑い声が響き、会議の空気は一気に和らぐ。
アザト総司令も思わず吹き出した。
「はは……まったく、あの二人の影響力は恐ろしいな。
——だが、悪くない。これこそ、平和な銀河の証だ」
こうして十二カ国主要会議は予定より早く終了し、
その日の夜、銀河連邦のホールには笑い声とグラスの音が響いた。
エルダンカ国王が掲げたボトルのラベルには、
——《From Yukina & Elena》の文字が刻まれていた。
平和な銀河連邦は、今日も静かに回っている。
その裏で、二人の少女は再び、遠い星の空を越えていた。
銀河連邦の主要国会議の真っ最中。
各国代表が銀河の未来を議論する場所――
その流れを、突然ひとつの報告が止めました。
それは、ゆきなとえれなの名。
会議よりも優先すべき“重大事項”が発生したとして、
議長は緊急中断を宣言。
場の空気が一瞬で張り詰めます。
なぜ彼女たちがそこまで重要なのか。
なぜ会議を止めてまで相談が必要なのか。
今後にお楽しみに!
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