巨大戦艦 電子防壁突破 166
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
【電子戦開始】
巨大砲、発射。
眩い光が空間を裂き、時空が震える。周囲の星々さえ一瞬、光を失った。
「来ます!」
ブリッジの中に緊張が走る。
衝撃波が迫る、その刹那——
「シールド、最大保持!」
エレナの声と同時に、アースの船体を包む多層シールドが重なるように展開された。
重なる光の壁が、まるで天使の羽のように艦を覆う。
直撃——だが、光線はシールドの表面で砕け、無数の粒子光に変わり、宇宙空間へ霧散していった。
「エネルギー衝突確認。シールド損耗率、わずか3%」
「ほぼノーダメージね」
ゆきなが静かに言う。エレナは手元の端末を操作し、艦の出力をさらに安定させた。
敵艦のブリッジでは、警報が鳴り響いている。
「な……ありえん! 直撃のはずだ! なぜ無傷なんだ!」
***
電子戦:階層突破戦 ― アース圧勝
「えれな、手加減なしよ!やっちゃって。」
ゆきなの静かな声が、艦橋に落ちた瞬間——
アース内部の全デバイスが、まるで鼓動を合わせるように震えた。
「了解。電子戦モード、第2階層へ移行します。」
リング状のホログラムが艦橋中央に浮かび、
えれなの姿は純白の光に包まれる。
それは、もはや“人”ではなく
〈情報の女王〉と呼ぶにふさわしい姿だった。
◇敵艦ネットワーク解析開始
「敵艦群の内部構造、取得開始——投影します。」
ブリッジの空間に、
数十隻の敵艦隊のワイヤーフレームが立体的に浮かび上がった。
赤い層が七枚。
それは敵の防衛ファイアウォールを示す。
「防壁層、七枚。ふふっ……旧式ね。」
えれなの指先が軽く振れるたび、
百、二百……千単位の電子パルスが放たれ、
光の網となって敵艦隊に降り注ぐ。
ピシュッ、ピシュッ、ピシュッ——。
一瞬で敵艦の通信層を覆い尽くし、
内部プロトコルが次々と解体されていく。
◇第1防壁突破
「第1層、防衛シールドプロトコル・C型……展開速度遅いわね。
カットします。」
力強く、しかし優雅な指先の一撫でで
敵艦のファイアウォール第一層が“霧”のように溶け落ちた。
「突破。敵艦、認識できていません。反応遅延、0.31秒。」
ゆきなが眉を上げた。
「0.3秒……完全に丸裸ってことね。」
「はい。“完全先読み状態”です。」
◇第2~4層 突破:敵艦AIに異常発生
「第2層、量子乱数防壁——固定パターン。
こんなの久しぶりね、可愛くて笑える。」
えれなが指を三本揃えて放つ。
バシュッ!
ホログラム空間の赤い層が割れ、崩れ落ちた。
「第3層、ミラーリング・プロトコル。
攻撃を反射するつもり? 甘いわよ。
逆にあなたの“内部鍵”、全部いただきます。」
鏡のように光る防御層が表示され、
その表面に“鍵穴”のアイコンが浮かんだ。
「鍵、取得完了。そっちのデータリンク……開けます。」
カシュン!
ミラー層が一瞬で透明化し、
敵艦内部データが雪崩のように流れ込んできた。
「第4層……脆弱性、39カ所。美味しすぎる。」
指をパチンとはじくと、
その4層目も静かに崩落した。
◇敵AIがパニック状態に
「敵AI反応遅延、0.3から0.7へ上昇。
完全に“混乱状態”ですね。」
モニターに赤いアラートが表示される。
—《WARNING》
—《UNKNOWN INTRUSION DETECTED》
—《SYSTEM OVERLOAD》
「うわ……完全にテンパってるわね。」
「AIコア内部で自己チェックループに入りました。
これ、もう詰んでます。」
◇第5~7層:瞬殺
「じゃ、仕上げ。」
えれなが両手を広げた瞬間、
艦橋全体の光が青白く染まった。
「電子戦モード、第3階層へ。」
アースの中央AIがえれなの指示に同期し、
多重演算モードに切り替わる。
「第5層、ビット揺らぎ型。対処完了。」
光の粒がはじけるように、防壁が粉砕される。
「第6層……ふふっ、思った通り。
2層目と同じコードの“コピペ”ね。
はい、突破。」
ゆきなが思わず吹き出す。
「コピーしてんじゃないわよ、戦闘データ管理……。」
えれなは肩をすくめた。
「低予算国家なんでしょうね。」
最後の1層が表示される。
「第7層。敵艦AIの“本丸”です。」
ゆきなが真剣な表情に変わる。
「ここから先は慎重に。」
「はい、お姉様。——全感覚リンク、開放。」
えれなの瞳が白く光り、
指先から無数の光の鎖が敵艦へ伸びていく。
ゴォォォォ……ッ!
七層目の防壁が、
まるで氷が割れるように砕け散った。
◇電子戦、完全勝利
「敵AIコア、掌握。
全艦の姿勢制御・攻撃管制・推進制御を……
はい、完全に私の手の中です。」
「……えれな、どれくらい?」
「艦隊全体の98.9%、制圧済み。
残りはただの“漂流ゴミ”です。」
ゆきなは笑うしかなかった。
「圧倒的じゃないの……。」
「はい、お姉様。
これが“アースの電子戦”です。」
⸻
◇敵艦隊沈黙
一斉に、敵艦の機関音が消えた。
推進炉は止まり、砲塔は降ろされ、
まるで“礼儀正しく”膝をつく巨人たちのように、
アースの前で沈黙した。
えれなが静かに言った。
「戦闘能力、完全消失。
こちらへの敵意は検知できません。」
「降伏……ってことね。」
「はい。“抵抗の余地なし”と判断されました。」
ゆきなは深く息を吐き、静かに言った。
「……よくやったわ、えれな。」
ホログラムの少女は、
ほんの少し誇らしげに微笑んだ。
「お姉様のためですから。」
エレナの口元がにやりと笑う。
「中枢電源系統に虚偽データを流します。出力を上げてるつもりで、実際は冷却装置が暴走します」
敵艦ブリッジ——
「出力を上げろ! あいつらのシールドを突破しろ!」
「ですが司令、エネルギー制御が不安定で——!」
「黙れ! 撃てぇっ!」
その瞬間、艦内のエネルギーコアが閃光を放ち、制御が崩壊。
「わっ!? 反応炉暴走!?」
「温度上昇——臨界まで十五秒!」
敵艦のクルーが一斉に立ち上がる。
ゆきなは、腕を組んだままモニターを見つめていた。
「えれな、止めなさい」
「了解。中枢だけ切断、命令系統を隔離します」
電光が走り、敵艦の全武装が一瞬で沈黙した。砲門が降下し、照明が次々と落ちる。
艦は静かに漂い、まるで力を失った影のように見えた。
「制御、停止確認。彼らは再起動不能状態です」
「……いいわ。これ以上は必要ない」
ゆきなは軽く息をつく。
モニター越しに、敵の司令——クジモの顔が映る。
「なぜ……我らのシステムが……」
「単純よ。正義の側に立たない技術は、いずれ腐るの」
「おのれ……!」
通信が切れる
「攻撃及び艦内復旧を急げ!」
***
「ニャーん族のシェルター、通信完全回復しました」
「シーザー、こちらアース。敵艦は撤退したわ。被害状況は?」
『こちら無事です! 子どもたちも安全です!』
その声に、ゆきなはようやく笑みを浮かべた。
「よかった……えれな、ログの記録を」
「完了。戦闘時間、実質三分二十秒」
「ふふ、ずいぶん短かったわね」
「だって、“お姉様仕様”ですもの」
二人の間に、わずかな沈黙——そして柔らかな笑いが漏れた。
宇宙の闇の中、アースの灯がゆっくりと穏やかに瞬いていた。
それは、戦いの終わりを告げる平和の光だった。
ついに、E.L.E.N.A. Systemが本格稼働。
艦のAIコアとエレナの意識が完全に同期し、
圧倒的な演算能力が艦全体を包み込みました。
その結果――
戦闘を行うことなく、敵の巨大戦艦を完全に制御下へ。
あらゆる攻撃システムを封じ、相手はただ静寂の中に沈んでいきます。
エネルギー干渉、通信遮断、制御奪取――
すべてが一瞬の出来事でした。
誰もが息をのむその光景に、誰も“勝ち負け”という言葉を思い浮かべることはできません。
ただそこにあったのは、知と心が一体化した力の証明。
しかし――この静寂が永遠に続くとは限りません。
次なる波が、確実に動き始めています。
どうぞ次回もお楽しみに。
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