平和な試験で終わらない・・・にゃーん族の危機 163
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
投稿したつもりができていませんでした。
ぺこりぺこりぺこり すいません!
「釣れた! 本当に釣れたわ!」
「おめでとうございます艦長、これは……カツオ、ではなく“ノアリエルブルー”ですね。」
テーブルの上で調理されたその魚は、
脂がのっていて絶品だった。
「……おいしい。人気が出るのもわかるわね。」
「でも量が……食べ切れませんね。」
「大丈夫。瞬間冷凍してお土産にしてくれるらしいわ。」
ゆきなが笑い、えれなが頷いた。
「これで地球でもノアリエルの味が楽しめますね。」
食後、えれながタブレットを取り出す。
「ところで、お姉様。
先日のニャーん族の星から受け取った資料の解析が完了しました。」
その声には、少しだけ陰があった。
「……ちょっと不穏です。」
ゆきなが表情を引き締める。
「どういうこと?」
「例のウイルス。あれは他の惑星で“開発されたもの”の可能性が高いです。
というか――間違いなく“他の星”のものです。」
えれなの指が走る。
スクリーンに映し出されたのは、
ニャーん族の都市の崩壊ログと、停止したAI群のデータ。
「なぜそんなものを……?」
「目的は不明ですが、ニャーん族を“滅ぼすため”に設計された可能性があります。」
その言葉に、工場の空気が一瞬止まった。
ゆきなは拳を握る。
「……他の星の誰かが?」
「はい。しかも、全滅を確認しに来ていた艦隊の記録がありました。」
モニターに映るその映像には、
黒鉄色の艦隊が無音で着陸する姿があった。
船体の紋章は、熊に似た獣の意匠。
巨大な爪と牙を象ったエンブレムが、不気味に光っている。
「……くまっぽいわね。見た目で判断したくないけど……悪い予感しかしないわ。」
「ええ。その艦隊が去った後、ニャーん族のコンピューターと融合炉が同時に沈黙しました。
起動していた融合炉のコアがすべて“持ち出されていた”のです。」
「つまり……動力を奪われたのね。」
「はい。その結果、惑星の地熱地下以外のAIは、都市も停止したと考えられます。」
沈黙。
外では海の風がドームを撫で、
波の音がかすかに響いていた。
「えれな、各惑星の融合炉って波形は違うの?」
「もちろんです。地球のものは特に特殊で、外から反応が見えないように“シールド化”されていますが、
それでも微弱な固有波形は存在します。それぞれが“指紋”のように異なるんです。」
「ということは――その“くま族”が持ち出した融合炉の波形を
追えば、どこへ運ばれたか追跡できる?」
「はい。理論上は可能です。実際、ニャーん族のものも波形記録が残っていました。」
「つまり、同じ波形の痕跡を辿れば……犯人の文明圏がわかるわけね。」
えれなは深く頷く。
「ただ、これにはリスクがあります。融合炉波形の追跡は、同時にこちらの位置を“相手側にも晒す”ことになります。」
「……つまり、覗き返される可能性があるのね。」
「はい。戦闘国家であれば、即座に反応してくるでしょう。」
ゆきなは息を整えた。
「構わないわ。もう何も失いたくない。あの星の子どもたちの笑顔を思い出して――何もしないなんてできない。」
その声は静かだったが、艦橋の全員の胸に響いた。
⸻
夕暮れの工場 ― 赤い空の下で
外に出ると、夕陽が赤い空を焼いていた。
ノアリエルのドームの向こうで、
巨大なクレーンが光を反射し、溶接の火花が星のように舞う。
工場長が近づいてきて、そっと言った。
「艦長、正義とは時に孤独な選択を迫ります。でもあなた方のような人がいる限り、この宇宙にはまだ希望があります。」
「ありがとう。必ずこの手で真実を掴むわ。」
ゆきなが笑みを浮かべた瞬間――
通信装置にに、微かな緊急の文字青白い光が閃いた。
「……今の、何?」
「不明です。空間波動を検出――お姉様、ニャーん族の波形と酷似しています!」
「……まさか。」
「はい、にゃーん族の誰かが、緊急事態を知らせたのかもしれません。」
風が止まった。
工場のすべての人々が空を見上げる。
「……行くしかないわね。」
「了解。アース、再点火準備開始。」
夕陽に染まる赤い火星の空で、
再びエンジンが目覚める。
その光はまるで、“正義への烽火”のように燃え上がった。
宇宙に走る警報 ― アース、出撃準備完了
静かな宵。
火星工場の上空には、橙色の夕陽がゆっくりと沈みかけていた。
ゆきなとえれなが遅い昼食を終え、ほっと一息ついた――その瞬間だった。
えれなの瞳が、鋭く光る。
「……お姉様。地球アトランティスより、緊急通信です。」
「え?」
箸を止めたゆきなに、えれながすぐ続けた。
「ニャーん族からの一方通行救助信号。最高位。妨害にて返信は遮断されています。」
「攻撃を受けている……ということね。」
「はい。ただ、妨害電波が発生しており、通信は断続的。状況の詳細は不明です。」
画面が一瞬ノイズに包まれ、
歪んだ電波の中から、必死な声がかすかに聞こえた。
――“攻撃……シールド……持って……一週間……誰か……助けて……”
「だめだ、これ以上の受信は不可能です。」
えれなが歯を噛み締める。
ゆきなは一瞬、深呼吸した。
その目が、静かに艦長のものに変わる。
「えれな、準備を。」
「了解。アース、緊急発進体制へ移行。通常通信を一時停止し、妨害波対抗モード起動。」
赤いランプが艦内を照らし、
無重力空間に浮かぶ端末が次々と起動していく。
その頃、銀河の果て。
ニャーん族の宇宙基地は、激しい閃光に包まれていた。
本来、防衛艦も戦闘機も持たない平和拠点。
研究と農耕、そして文化保存を目的とした静かな基地だった。
突如、上空から降り注ぐ無数の光弾。
警報が鳴り響き、制御塔が揺れる。
「シールド、最大出力!100%を維持!」
「電力消費率上昇!一週間が限界です!」
指揮官の女性が叫ぶ。
「どこの国家が……私たちを攻撃しているの!?」
しかし返答はない。
通信回線は、すべて“無音”――。
爆発。
外壁を叩く光弾。
それでも、彼らは希望を捨てなかった。
「ゆきな艦長……どうか……この声が届きますように……!」
そして、最後の通信回線で、
一方通行の緊急波を“全方位”に放った。
光となって宇宙を駆け抜けるその信号は、
まるで祈りの矢のようだった。
釣りたての魚をお刺身で、塩焼きで、香ばしい匂いが漂うノアリエルの昼下がり。
ゆきなとえれなは満面の笑みで「おいしいね」と言い合いながら、
束の間の休息を楽しんでいました。
――その時。
艦の通信端末が、けたたましく警告音を鳴らします。
画面に浮かび上がったのは、不吉な通信信号。
発信元は不明、しかも暗号化レベルは最高位。
静かな食卓に走る緊張。
その瞬間、ふたりの瞳から笑顔が消えました。
いったい何が起こるのか――
物語は、また新たな局面へ。
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