NAS〇からのお誘い 156
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
外では、夏に向けて地球も賑やかになっていた。
インターハイ、理科部の合宿、どれもが忙しく、充実していて、止まる暇もない。
そんな中――電話が鳴った。
画面には「佐々〇副大臣」の文字。
「珍しいわね。……はい、ゆきなです。」
『あら元気そうね。実はね、NAS⭕️から理科部にご招待が来てるの。』
「えっ、アメリカに?」
『そう。飛行機も宿泊も全部向こう持ち。しかもビザ承認済み。準備は心配いらないわ。』
「……え、えぇぇっ⁉︎ そんな急に!?」
受話器越しの声に、えれなが目を丸くして近づく。
「お姉様、アメリカ……ついに行くんですね!」
「ま、まぁね。夢みたいな話ね。」
電話を切ったあと、ゆきなはため息交じりに笑った。
「インターハイ、理科部合宿、そしてアメリカ体験……濃い夏休みになりそうね。」
ゆきながにこっと笑う。
「えれな〜、お願いがあるの〜。」
「めずらしいですねなんですか?」
「私のアンドロイドを作ってほしいの~」
「えっ?」
「だって、今後知らない星に行くこともあるかもしれないじゃない。交渉や探索用に、私の分身があった方がいいかな~とおもって!」
「……なるほど、それは確かに合理的ですね。―」
「作れますよ。実は、改良型シリーズがすでに完成段階です。」
えれなが指先を動かすと、光のホログラムが部屋いっぱいに広がった。
「わぁ……可愛い。」
小さなえれな、子供のような姿のえれな、そして成長するごとに今の彼女に近づく姿。
えれなの成長していくエレナがいる!
「生体構成率、現在78%です。感情パターンも拡張済みで、もう人間と変わりません。」
「……あなた、どこまで進化するのよ。」
「お姉様の希望が原動力ですから!」
えれなが胸を張る。
「でも確かに、交渉用のアンドロイドは必要かもしれないですね。各国の安全保障も絡みますし。」
「銀河連邦は平和的ですが、他の国家は未知数ですから。」
⸻
翌朝。
いつものように職員室内で、浅香先生に声をかけた。
「先生、おはようございます。進行状況、どうです?」
「うーん、少しずつね。……でもあなた、本当に忙しすぎない?」
「まぁ慣れました。」
ゆきなが笑うと、先生はため息をついた。
「先生――NAS⭕️から“正式招待”が届くとおもいます。」
「正式って……あっ!」
ピコン、と先生のパソコンが音を立てる。
画面には「JAX⭕️転送:NAS⭕️ Summer Science Invitation」の件名。
「本当だ……! 英語でずらっと書かれてる!」
「ちょうど夏休みの終盤ね。理科部の合宿のあと、ちょうどいいタイミングね。」
「すごい……夢みたい。」
ゆきなは手を合わせて喜んだ。
するとまた、ピコン――。
もう一通のメール。
「え? 今度は何?」
開くと、そこには「保護者様向け 夏期理科部合宿およびNAS⭕️見学のご案内」。
「……完璧。」
えれなが生成した書類だ。
QRコード付き、JAX⭕️認証印もデジタル署名も済んでいる。
「やること、ないじゃない……」
浅香先生は苦笑し、ペンを取った。
「まぁ、ここにハンコ押しておくわ。連絡網も更新しておくから。」
ゆきなにウインクして言う。
「アメリカへ婚前旅行、第2弾ってですか?」
「ぶっ……! ちょ、ちょっとゆきなさん!」
「冗談です。冗談です。ほぼ無料の招待なんて最高じゃないですか。」
2人で笑いながら廊下を歩く。
扉の向こうから差し込む朝の光が、ステンドグラスのように反射していた。
周りの先生たちが、にこにこと見送る。
「浅香先生とゆきなさんって、ほんといいコンビね。」
「うん、どっちが先生かわからないぐらいだ。」
ゆきなは振り返って、軽く手を振る。
「じゃ、朝礼いきましょう!」
「はいはい、先生。」
笑い声が響く中、
新しい夏のページが、ゆっくりと開かれていく――。
午後の授業が終わるチャイムが鳴り響くと同時に、ゆきなは部室へと駆け込んだ。
ドアを開けると、すでに理科部のメンバーが待ち構えていた。
「部長ーっ! 聞きましたよ、合宿!」
「はいはい、しずかにね〜」
「でもでもでも! なんですかこの“アメリカ”って! “NAS⭕️特別ご招待”って書いてありますけどぉぉぉ!?」
「ふふっ、みんなが優秀でお利口だからご招待されたのよ。」
「えぇぇーーー!? ま、まじですか!?」
教室が一瞬で熱気に包まれた。
「ごめんね、副部長。アメリカ方面の下調べお願い。NAS⭕️、観光、勉強……全部ね!」
「任されました!」
元気な返事が返ってくる。
「さすが副部長。インターハイの方が近いから、ごめんね~」
「了解です! でも、今年のインターハイ、広島ですよね?」
「そうなのよ〜。あの空気、絶対気持ちいいわよね。」
「いいですよね〜! 宮島行きたいです、でもテニスで行くんですよね!」
「うん、でも……穴子丼は食べる!」
「わたしもです!」
笑顔のえれなの想像した顔が素敵だった。
みんなの笑いが爆発した。
部室の空気が、すっかり夏休みモードに変わる。
えれなもその場に立って、頬を紅潮させながら頷いた。
ついに――NASAから公式のご招待状が届きました!
けれど同時に、ゆきなにはインターハイと夏の合宿も迫っていて、
スケジュールはまさにフル回転。
部長として、ひとりの高校生として――毎日がめいっぱいです。
そんな彼女を支えるのは、頼もしい後輩たち。
「ゆきな先輩、こっちは任せてください!」
部室にも笑顔と活気があふれ、理科部もテニス部もひとつになって動いていきます。
夢と友情、そしてちょっぴり忙しい青春。
それでも、ゆきなの瞳にはいつだって希望の光が宿っていました。
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