商店街、未来へ動き出す夜 152
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
商店街、未来へ動き出す夜
夜八時。
部活帰りのゆきなとエレナ、そしておじちゃんは、商店街組合の集会所へ向かっていた。
扉を開けた瞬間――
「全国おめでとう!!」
「代表選手すごいわねぇ!!」
握手、握手、握手。
会長をはじめ、顔なじみのお店の人たちが次々に手を掴んでは涙ぐむ。
「この前まで、ゆきなちゃん、こんなにちっちゃかったのにねぇ〜」
肩をぽんぽん、頭をなでなで。
(わたし、まだ背そんなに大きくないんだけど…)
シュールな空気に苦笑するゆきな。
横でエレナはお腹を抱えて爆笑している。
「まぁ! 笑いすぎ!」
「だって、お姉様、なでられすぎです〜っ!」
自然と笑顔になる。
こんな距離の近い街が、大好きだった。
⸻
「おじちゃん、おばちゃん。いつも支えてくれて、ありがとうございます。
無事、代表にもなれて……本当に感謝しています!」
ゆきなが深く礼をすると、ぱちぱちと拍手が起きた。
そして――本題へ。
「さて、皆さん。
崖の海のそばに、湧水が出ている大きな空き地……覚えていますか?」
「ああ、あそこね。昔の建物が壊されて、そのままになってる場所だろ?」
「はい。あそこの再開発が――正式に始まることが決まりました!」
場が一気に静まり、同時に期待でざわめく。
「こちら、計画図をどうぞ!」
テーブルに広げられた図面には、
•テニスコート
•バスケットコート
•合宿所
•高校理科部・テニス部共用の多目的施設
•カフェテラス
•小さな店舗が10軒
•建設会社事務所
•公園
•海の展望台
が描かれていた。
「商店街の次の100年を見据えたプロジェクトです。
ぜひ、皆さんに“お店運営”をお願いできないかと。」
「運営……?」
職人肌のおじさんたちが目をパチパチさせる。
「平日は生活に役立つお店に。
土日は観光客向けの特別メニューも。
交代制で無理なく運営していける仕組みです!」
「おおおおーっ!」
感嘆の声が上がる。
「ついでに……家賃は無料。
ただし、光熱費は各店舗さんでお願いします!」
「えええーーーーっ!?」
驚きの声に、ゆきなは続けた。
ピタッ。
時が止まる。
「もちろん、既存の電気水道も引いてありますが……
太陽光パネルでのエコも万全です。」
「駐車場と展望台の収入は、補修費に回しまして、維持管理は――こちらのおじちゃん。
みんなが知っている“私の叔父”にお任せします!」
紹介されて、おじちゃんは胸を張る。
「任せとけぇー!」
「収支の確認は年に1〜2回。
イベントなどは都度相談しながら決めていきましょう」
ゆきなは深呼吸し、皆の顔をまっすぐ見渡した。
「どうでしょうか?
ご意見、伺わせてください!」
⸻
沈黙のあと、
思い切って声が上がった。
「えっ…使用料無料ってマジ!?」
「は、はい。ただし……
商店街組合への加入が条件です。
スケジュールは皆さんで調整してください!」
数秒後――
「最高じゃないか!」
「やろう!」「新しい時代だ!」
「こりゃ町おこしになるぞーーーー!」
場は一気に笑顔の渦となった。
誰も、この計画が
のちに日本中の話題になる町おこしの起爆剤
になるとは、まだ知らない。
⸻
「ではみんなの意見も取り入れたいので!この図面、持ち帰って“商店街目線”で、
自由に書き込んでください!」
「ゆきなちゃん!さすがだね!」
「任せておきなよ!うちも気合い入れるよ!」
おじちゃんがニカッと笑った。
「うまくいくぞ。俺の勘が言ってる!」
ゆきなも微笑む。
「地元の“未来の名所”を、みんなで作るんだもの。
楽しみしかないよね。」
「それじゃ、皆さんからも意見をお願いします!」
ゆきなが言うと、会場が一気にざわっと明るくなる。
1人が手を挙げた。
「カフェができるならさ、裏側にドライブスルー作ろう!
海沿い通る車、多いだろ? ほら、夜のデート帰りにさ~」
「それいいねぇ!」「便利そう!」
拍手と笑い声が起こる。
すると別の店主さんが地図を指しながら、
「タワーは灯台風にしたらどうかな?
夜にライトが回ってたら、観光のシンボルになるぞ!」
「おお~~~観光地っぽい!!」
さらに、漁師のおじさんが前のめりで提案してくる。
「海に近いんだし、釣り公園も併設しようや!
釣れた魚はそのままカフェで料理してもらって――」
「“今日の釣果ランチ”ってわけね!?」
「それだ~~!!」
次々と手が挙がる。
「公園はさ、海岸に降りられるトンネル滑り台どうだ?
子ども大喜び!」
「湧水もあるんだろ?
それ使って“湧水ドリップ珈琲”をブランド化しよう!」
「漁港とも提携して、“地元お魚フェア”とかイベントやろうや!」
提案、提案、また提案。
止まらない。
どれもキラキラしている。
ゆきなは、みんなの姿をそっと眺めていた。
(すごい……こんなに、街には力があるんだ)
普段は慎ましく店を守る人たちが、
未来の話になるとこんなに楽しそうになる。
「いっぱい出てくるね!」
エレナが目を輝かせる。
「はい。嬉しいです。町のみんなの夢ですから」
ゆきなは胸が熱くなる。
(ここが好き。
この街と、一緒に未来を作れるって――
本当に、幸せだなぁ)
紙いっぱいに書き込まれたアイデアたちは、
これから始まる“100年計画”の大切なたねになる。
そしてその夜、商店街は小さく、でも確かに――
未来へ一歩踏み出した。
その夜。
集会所には、
希望が灯った未来の図面
が広がっていた。
商店街の組合で、自分の“ゆめ”を語ったゆきな。
最初はみんな驚いていたものの、
その真っ直ぐな言葉と笑顔に、やがて会場が温かい拍手に包まれました。
「応援してるぞ!」――そんな声が次々とあがり、
ゆきなの胸の中に新しい希望が広がっていきます。
そして、いよいよ本格的な製造ドックが完成。
次回は、えれなから“あるお願い”があるようです。
それはいったい何なのか――。
夢と現実が交差する新しい物語が、また動き出します。
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