団体戦・予選最後の一戦、そして街の祝福へ 146
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
団体戦・最後の一戦、そして街の祝福へ
準決勝を勝ち抜き、ついに団体戦の最終マッチを迎えた。
部長も、ゆきなも、そしてエレナも、全力を尽くした。
残るは――最後決勝団体の優勝は勝ち取ったけどシングルス2の最後の戦い
「最後は、あの子に任せよう」
ゆきなが、少し微笑みながら言った。
みんなが顔を見合わせる。
その子は、実力は十分あるのに、なかなか公式戦で勝てずにいた後輩。
「いいの? ゆきな先輩」
「うん。今日は全員で戦う日だから」
そう言って背中を押すと、後輩は小さく震えながらも頷いた。
「……はい!」
会場の空気がふっと和らぐ。
みんなの応援が自然と集まり、手拍子と笑顔が広がっていく。
副大臣コーチも頷いた。
「いい判断ね。団体とはそういうものよ」
⸻
試合が始まると、コートは息をのむ静けさに包まれた。
最初のゲームを取られ、次は取り返す。
ラリーが続くたび、みんなの声が高まっていく。
「ナイスショット!」
「落ち着いて!」
「いけるいける!」
強豪相手に、粘って粘って――
誰もが驚くほどの集中力を見せた。
ゆきなは手を握りしめながら、胸の奥でつぶやいた。
(大丈夫。もう一人前だよ)
最後のゲーム。
6-4。惜しくも負け。
しかし、彼女の表情には悔しさよりも清々しさがあった。
「先輩……来年は、必ず勝ちます!」
その声に、全員が立ち上がった。
「よくやった!」
「すごかったぞ!」
「最高の試合だった!」
涙と笑顔が交じり合い、仲間の輪がまたひとつ強く結ばれた。
背中を叩かれながら、後輩は何度も頭を下げた。
その顔には、確かな自信が灯っていた。
⸻
夕方の光がコートを金色に染める。
試合が終わり、表彰式のあと、ゆきなは副大臣コーチに呼び止められた。
「ゆきなさん、今週どこかでお会いできるかしら? ご自宅で」
「えっ……! ご、自宅で、ですか?」
一瞬、空気が止まる。
「はい。ご両親もご一緒に、ね」
「え、えっと……はい、予定を確認してご連絡いたします!」
「よろしく」
その言葉に、周囲の部員たちが固まった。
(え、副大臣が……家に!?)
(ど、どんな話なんだろう……)
ざわざわと小さな波が広がる。
けれど副大臣は、ただ穏やかに笑って立ち去っていった。
⸻
帰り道。
バスの窓から見える景色が、どこか違って見えた。
会場を出た瞬間から、周囲の空気が熱を帯びている。
商店街の入り口に近づくと――
わあああああああああああっ!
「おめでとーーー!!!」
「テニス部、全国出場おめでとう!!」
人、人、人――。
アーケードの中は、まるでお祭りのような熱気だった。
朝にはなかった垂れ幕が、今はゲートいっぱいに広がっている。
赤い文字で大きく書かれた言葉。
「祝! 全国大会出場!」
「えっ、これ……朝はなかったよね!?」
「いつの間に!?」
部員たちは顔を見合わせ、ただ立ち尽くす。
アーケードの天井から、紙吹雪が舞い降りた。
八百屋のおじさんが、段ボール箱をどんと持ち上げる。
「優勝セールだー! テニス部割引ー!」
パン屋のご夫婦が笑顔で声をかける。
「ゆきなちゃん、エレナちゃん! 全国おめでとう!」
お菓子屋さんの奥さんまで手を振ってくれる。
「頑張ったわねぇ、ほんとに!」
生徒たちは、ただ感極まって立ち止まる。
「……すごい、夢みたい」
エレナがぽつりとつぶやいた。
「ねえ、お姉様。これ、全部……」
「うん。みんなの想いだね」
副大臣コーチもその光景を見上げながら、小さく頷いた。
「これが地域の力。あなたたちは、その中心にいるのよ」
拍手の中、ゆきなは一歩踏み出す。
胸の奥にこみ上げるものを、ぐっとこらえながら笑った。
(勝っても、負けても――この場所がある。だから強くなれる)
アーケードを抜ける風が、頬を優しく撫でていく。
その向こうには、まだ見ぬ全国の舞台。
ゆきなは振り返り、仲間たちに手を差し伸べた。
「さあ、行こう。これが、私たちの第一歩よ!」
夕焼けに染まるアーチの下。
歓声と笑顔と未来が、ひとつに溶け合っていた。
「よーし、みんな! 今日はうちでバーベキュー祝勝会だーっ!」
ゆきなの一声に、テニス部のメンバーたちが歓声を上げた。
「やったー!」「わーい!」
「親御さんも大丈夫だからね! 一度帰って、十八時半集合! ダメな子は連絡ちょうだいねー!」
笑い声と拍手がコートに響く。
みんなの目がキラキラしていた。勝って、泣いて、今度は笑って――最高の仲間たちだった。
ゆきなはスマホを取り出し、両親に連絡を入れる。
(お父さん、お母さん、今夜うちでバーベキューやります!)
「コーチ! 今日、祝勝会のバーベキューを山の家でやります。
両親も参加しますので……先ほどのお話、よろしいですか?」
副大臣コーチはにっこりと微笑んで、
「もちろんよ。ちょうどいい機会だわ。
ご家族揃っているところで、お話ししましょう。」
ゆきなは小さく息を吐き、
「ありがとうございます。では、よろしくお願いします!」
副大臣の穏やかな笑みの奥に、どこか硬い空気が漂っていた。
(もしかして……あの“手紙”のこと?)
ゆきなは胸の奥にざらりとした不安を抱いた。
ただの留学推薦が、どうやら思っていたよりも大きな波を立てている――そんな予感がした。
⸻
夕方。
山の家の庭に、炭の香りがふわりと広がる。
テントの下にはテーブルが並び、焼きそば、ステーキ、焼きとうもろこし。
笑い声があちこちからこぼれていた。
「部長ー! お肉焦げてますよー!」
「ええ!? うそー!」
「あははは!」
エレナが火加減を調整しながら笑う。
「お姉様、炭火の熱伝導を計算しておきました。これでちょうどいいはずです!」
「ほんと? さすがエレナ!」
部員たちはスイカを切り、マシュマロを焼き、次々に写真を撮っていく。
それはまるで、夏の一ページのような、穏やかな時間だった。
ついに――県予選団体通過!
夢の全国がぐっと近づき、帰ってきたテニス部を迎えたのは、
地域の方々や仲間たちからの熱すぎるお出迎え。
笑顔と拍手が、商店街中に響き渡りました。
しかし、その歓喜の裏で…
コーチの表情には、どこか重い影が差しているようにも見えます。
なにか話があるのか、それとも――?
喜びと緊張が交差する瞬間。
まだまだ物語は加速します!
どうぞ次回もお楽しみに!
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