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崖が崩れたらそこは宇宙ステーション♪  作者: Sukiza Selbi


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145/178

団体戦・決戦の午後 145

とある家族の女子高生 と AI

宇宙ステーションの日常を描いた物語

団体戦・決戦の午後


仲間を信じるその目は、きらきらと輝いていた。


***


その頃、学校でも朝の鐘が鳴る前から騒がしかった。


「えっ、全国いったの!?」


「マジで? うちの学校すごくない?」


そんな声が教室や廊下にあふれる中、朝の校内放送が流れた。


《本日はテニス部の団体戦県予選が行われます。シングルス1-2-5、ダブルスでも全国出場を果たしている快挙を受け、団体戦でも順調に勝ち進んだ場合、午後より応援団を編成します》


一瞬静まりかえった校舎に、続けて校長先生の熱い声が響く。


《テニスは紳士のスポーツです。静かに、けれども熱く、みんなで思いを送りましょう。希望者は校内連絡アプリにて申し込み、午後の授業は免除とします》


「免除⁉」「いくしかない!」


あっという間にアプリの申込み欄は埋まり、理科部のメンバーも即座に名を連ねた。


「先輩、がんばってるんだ。応援、しなきゃ!」


ゆきなを慕う後輩たち、いつも一緒に練習してきた仲間たち、そして生徒会の友人たち――


「……あのとき、生徒会に入ってくれてたらな......」


心のどこかで思っていたことが、今、別の形で花開こうとしていた。テニス部、理科部、生徒会――すべての思いが交差する中で、応援希望者は50人を超え、大型バスの座席は満席に。乗れなかった生徒たちは、電車での現地集合を選んだ。


学校の風も、街の空気も、すべてが一つの方向に向かっていた。


全国へ――。


そして、ゆきなたちの戦いの火蓋は、いよいよ切って落とされようとしていた。



お昼になり、応援団のバス組と電車組が次々に出発していった。

アーケードの入口では、のぼりと垂れ幕がいっせいに風に揺れている。


「わああああああああああああ! 高校テニス部、インターハイ出場おめでとうーっ!」

商店街のスピーカーから元気な声が響き渡り、歩いていた先生が思わず涙ぐむ。


「ほんと、みんなの日頃の行いねぇ……」


「まだ勝ってるんですか?」


「勝ってますよ! 今、みんなで応援に行くところです!」


役員たちが顔を見合わせ、のれんをパッと上げた。


「よし、行くぞ! 俺たちも後から追いかける!」


「商店街も全力応援だー!」


アーケード中がざわめきと笑顔に包まれた。

魚屋のおじさんも、八百屋のおばちゃんも、まるで自分の娘を送り出すような表情だった。

地域がひとつになって、若者たちを後押ししていた。



その熱狂を、まだ知らないテニス部員たちは――。

静かに、しかし着実に、勝ち上がっていた。


団体戦。

シングルス2は、毎試合ごとに出場メンバーを変えて挑戦している。

負けることもある。だが、必ず誰かが勝って戻ってくる。


「せ、先輩……勝ちましたぁぁ……!」


涙をぽろぽろこぼしながら報告してきた一年生。


「手汗がすごかったです! でも、でも、楽しかった……! 来年はレギュラー目指します!」


ゆきなと部長は笑いながら、その子の頭をやさしくなでた。


「よく頑張ったわね」


「ゆきな先輩……部長……。私、推薦断って地元に残ってよかったです!」


「ふふっ、まだまだこれからよ。次は本気でいくわよ」


無名の高校が、ここまで勝ち進むとは誰も思っていなかった。

四回戦の相手は、まさかの常連強豪校。

部員たちは昼食の弁当を囲みながらも、空気が少し張り詰めていた。


「言わなくていいわ、任せなさい」


部長は笑って、コートに歩いていく。

その背中には、もう立派な“キャプテンの貫禄”が漂っていた。



準決勝が始まる。

相手は徹底的にこちらを研究してきていた。


「かなりあなたの分析をしてきたわね」


「こちらも、そう簡単には負けないわ」


部長の携帯端末に、エレナから届いていたデータがあった。

サービス角度、ストローク軌道、リターン傾向。

完璧な分析表。


「……これ、すごい!」


頭脳派の部長も驚くほどの内容だった。


試合が始まると、次第にギャラリーが増えていく。


「……あれ?」


観客席の端に、見覚えのある姿。


エレナが軽く手を振っている。

隣にはみすずちゃん、浅香先生、そして――校長先生まで!


「えっ、うちの学校から何人来てるの!?」


「パン屋のおじちゃんもいる……!」


「商店街の会長さんまで!?」


驚くゆきな。

だが部長は試合に集中していて、それに気づかない。


スコアボードは――3-0。


「えっ……これ、シングルスより速いじゃない!?」


圧倒的だった。

部長のストロークは相手を翻弄し、最終的に6-1で勝利。


「わーーーーっ!!」


涙ぐみながら勝った喜びで飛び跳ねている部長は輝いていた!


挿絵(By みてみん)


歓声とともに、仲間たちが抱き合う。

向こうのコーチは悔しさで声を荒げていたが、副大臣コーチは静かに微笑んだ。


「何も言うことはないわ。勝者がすべて――正義よ」


その言葉と同時に、コーチもその輪の中に加わり、勝利の歓喜がひとつになった。



次は、ダブルス1。

ゆきなとエレナの出番だ。


「行ってきます!」


「ゆきなさん、エレナちゃん、最初っから飛ばしなさい。相手はがむしゃらにくるわよ。ペースを取られないように!」


「はい、ありがとうございます!」


的確な指示に、思わず胸が熱くなる。


「……勝ちたいね、エレナ」


「はい、お姉様。絶対に!」


エレナが携帯を見せる。


「相手のペア、分析しておきました。同級生同士で、どちらが引っ張るか決まっていないタイプです」


「なるほど……真ん中を制す、ね」


「ええ、そこを取りましょう」


「わかったわ。サービス、私ね」


ボールを受け取ったゆきなは、深く息を吸い込む。

エレナは、姉の努力を誰よりも知っていた。

夜遅くまで練習してきたジャンピングサービス――

まだ完成度は六割。だが、今日、その瞬間が来た。


「えれな、見てて」


「はい!」


審判がコールを告げる。


「プレイ!」


スパン――!

乾いた音がコートに響いた。

ボールが一閃の光となって弾ける。


「えっ!?」


相手の表情が驚きに変わる。

フィフティ・ラブ。


「ボール、ちょっと光ってない!?」


観客席がざわめく。

まるで思いがこもったような、力強い一撃。


挿絵(By みてみん)


次のサーブも――スパン!

今度は真ん中、ドンピシャ。


「うわあああっ!」


歓声が爆発する。

返してきたボールを、エレナがすかさず決めた。

ストレートが閃光のように走る。


「お姉様、スライス系、外へ逃がします!」


「オッケー!」


息ぴったり。

誰もが見惚れるほどの連携。

二人は互いを信じ、全力で走る。


気づけば、1ゲームも落とさない圧倒的展開。

校長先生も、応援団も、言葉を失って見守っていた。


「ゲームウォンバイ、ゆきな・エレナ!」


アナウンスと同時に、拍手と歓声が渦を巻く。

涙ぐむ観客、中学生のジュニア選手、保護者たち――

誰もが心の中で思った。


――来年は、あそこの高校でテニスに立ちたい。


その願いが、風に乗ってコートを包んだ。


「よし、よくやった!」


副大臣コーチが笑顔で二人の肩を叩く。


「これで、全国の舞台は確実ね」


夕方の光が傾き始め、二人の影が長く伸びていた。

歓声の中で、ゆきなは空を見上げる。


(みんなで、ここまで来たんだ……)


その瞳は、もう次の試合――全国の空を見ていた。

普段はあまり大げさに喜ばない部長が、

もう全身で「やったー!」と喜びを弾けさせたその瞬間――

仲間たちの心も大きく揺さぶられました。


笑顔、涙、抱きしめ合う手。

そのすべてが、「全国へ行く」という夢を確かに感じさせてくれます。


そして次は――団体全国。

あともうひと踏ん張り。

さらに、入札結果も控えていて、ワクワクが止まりません。


青春はまだ加速中!

どうぞ次回もお楽しみに!

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