金色に光る帰還航路 139 画像修正!
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
金色に光る帰還航路
――エルダンカからの帰還、希望の中で。
エルフの街を抜けた並木道。
小鳥のさえずりと妖精たちの羽音が静かに混じり合う中、ゆきなとえれなはハナフライムが待つ宇宙港へと歩を進めていた。
お披露目の晩餐から一夜明け――
ゆきなとえれなの心には、まだあたたかい余韻が残っていた。
「本当に、素敵な時間でした。」
「ええ、まさに夢のような二日間」
ふたりのやりとりを、後ろから帰り道を見守るモルト侍従長は、しみじみと呟いた。
「お二方がこの屋敷に来てくださって……私は、光栄の極みです。同じ食卓を囲むなど、今までの人生では想像もつきませんでした」
「おふたりの帰り道の姿を見て……本当に……娘のように思えるなあ」
その言葉に、他の使用人たちも目を潤ませ、頷いた。
「みんなで……守るぞ」
モルトが言うと、すかさず全員が「はいっ!」と力強く応えた。屋敷には、熱くて優しい結束が、確かに生まれていた。
⸻
宇宙船ハナフライムのタラップ前に着いた時、守備兵たちが姿勢を正して待っていた。
「これ、屋敷から持ってきたの」
ゆきなが、守備兵に金の蓋がついた小さな瓶を2本手渡す。
「警備、ありがとう」
「い、いえっ……任務ですのでっ!」
緊張しながらも、手を受け取る守備兵。ゆきなが微笑んで手を差し出すと、彼らは思わず握手を交わしてしまう。
「わ、わわっ……妖精伯に握手されたっ……!」
その感激に顔を真っ赤に染める兵士たちに手を振り、ふたりはゆっくりと船内へ入った。
⸻
乗船直後。ターミナル周辺には、すでに人だかりができていた。
「今、あの艦に向かってるらしいよ」
「妖精伯って、本当にあの子なんだって!」
そんな噂が、静かに、けれど熱く広まっていた。
⸻
ハナフライムのブリッジ。
操縦席に座ったゆきながふわりと呟いた。
「じゃあ……ゆっくり、離脱しましょうか」
その声に応じるように、機体全体が金色の光を帯び始めた。
「なにこれ……」
えれなが目を見開く。
「お姉様が乗ってるから……ですね」
「ふふっ、今度モード切替の改造も試してみようかな。通常モードと、お姉様モード、それと……私モード」
「いいわね、えれな。
」
「えへへっ。お姉様の加護で、ちょっとだけ私も光ってるかもです」
窓の外からは、見上げる群衆の声が聞こえる。
「すごい……あの光……妖精伯様の……!」
きらめく金の光に包まれたハナフライムは、まるで祝福を浴びているかのように浮かび上がっていった。
⸻
えれなは考えていた。
「もし、魔力をうまく艦に流し込めたら……。技術は飛躍的に伸びるのでは……」
演算コンピューターを通じて、次々と仮説が浮かんでくる。
「艦の魔力共鳴装置を開発応用すれば……αシステムの調整も……」
――考えることが、楽しくて仕方がなかった。
「ふふっ……♪」
自然と笑みがこぼれる。
その横顔を見ていたゆきなは、そっと目を細めた。
(あのAIが……ここまで成長して。友達もできて、感情を持って……生きていってる)
(あと10ヶ月で……ひとまず別れるかもしれないけれど、それも楽しみ)
「エルダンカ管制、ハナフライム号。離陸許可を」
『――えれな伯爵、許可いたします』
『ゆきな妖精伯とえれな伯爵に、新しき風と、水と、土と、光の加護があらんことを』
「ありがとう」
ふわり――
船体が優雅に浮かび、加速して大気圏を抜けた。
「速度制限解除、ワープナビ起動」
「座標確認。目標:地球上空、中継軌道」
「ワープ速度13.8にて設定、開始」
「では……いきます」
ビューン――と、機体が空間を裂いて加速する。
が、その時。
「……えっ?」
ゆきながウィンドウ越しに見たのは、横を走る金色の流れ。
「いつものワープと違わない……?」
計器を見た瞬間、異常が発覚する。
「……えれな。ワープゲージ、15超えてるわ」
「ええっ!? 設定上限は13.8のはず……!」
えれなは即座に計測を開始する。
「コンピューター計測開始……! ですが、従来の制御モデルでは正確な数値が出ません」
「予測値……18.6。……これは――」
「地球まで、3時間かからないかも……!」
⸻
通信ウィンドウが開き、懐かしい声が響く。
『こちらエルダンカ国・銀河連邦星系防衛軍。ハナフライム、ゆきな妖精伯、えれな伯爵、お戻りですね』
「ふふっ、あのリゾット、美味しかったわ〜」
『それはそれは。お気に召していただけたなら、何よりです。良い航海を』
「ありがとう。……ねえ、ひとつ聞きたいんだけど」
『はい、なんでしょうか?』
「行きの時点で……やっぱり、噂になってた?」
『ゴホッゴホッ……』
慌てて咳き込む通信士。
『ば、伯爵か妖精伯かって噂には……ただ……内緒って感じでしたので』
「……やっぱりね〜」
思わず笑うゆきなに、えれなもくすっと笑う。
「でも……いい三日間だったわ。ありがとう」
『いえ。またお目にかかれる日を――』
「あっ、忘れてた!
お土産のきのこリゾット、テイクアウトしてきたの。
転送するわ、オーブンで焼いて食べてね。」
「……妖精伯、本当に泣けます。
ありがとうございます。」
通信は切れ、ハナフライムはまっすぐに金色の空間を突き進んでいく。
ゆきなとえれな――新たな旅路の先に待つ未来へ向かって。
ゆきなたちは、いよいよ地球への帰還を始めます。
長い旅と多くの出会いを経て、少し大人になった2人の背中はどこか頼もしく見えました。
そして――少しずつ、地球にも変化が現れ始めます。
ゆきなとえれなが関わったことで、人々の意識や科学のあり方、
そして何より“平和への考え方”が、静かに広がっていったのです。
それはまだ小さな波紋にすぎません。
けれど、その波がやがて大きな流れになることを、誰もが感じていました。
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