母との出会い♪ 13
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「エレナ、準備できてる?」
《艦長、できています。現在、転送準備中です》
家族3人でゆきなの部屋に入る。
角の方に置かれた箱。少し無骨で、端子がやたら多い。
「じゃ、開けるよ」
私が声をかけて開けると、ゆっくりと目を開けた。
「お姉様、おはようございます。お父様、おはようございます。お母様……おはようございます。お会いできて光栄です」
少し硬いけど、丁寧な挨拶。
「きゃー……! かわいいわぁ……!」
母のテンションが一気に上がる。
「高校入学までは、二人がいない時間、一緒にお買い物とかお料理とか、いろいろしましょうね!」
(やった……なんとかなった!)
私はこっそりガッツポーズ。
父は隣でぷっと笑っている。
《文字表示:苦しいです(※息は必要ありません)》とエレナ。
「じゃあ、今日は一緒に寝ようね!」
「その前に、お風呂! お父さんとゆきなは入ったけど、あなたはまだでしょ?」
「え、お風呂……?」
「お名前は?」
「エレナです」
「エレナ……えれな、ね。ゆきなが“ゆきな”だから……本物の姉妹みたい!」
「じゃ、行きましょ。髪の毛、私が洗ってあげる!」
母に手を引かれて、連れて行かれるエレナ。
私はそっと、心の中でエールを送った。
(がんばれ、エレナ……!)
父と目を合わせて、二人して笑い合う。
――ツッコミどころは山ほどあるけれど、なんとか乗り切った。
あとは……なんとかなる。うん、たぶん。
朝5時半。アラームなんて必要ない。私はぱちりと目を開ける。
「エレナ、行くわよー。朝テニス! お父さんも起きてー、可愛い娘が起こしてあげてるのよー!」
……でも、エレナがいない。と思ったら――
「ん……すみません、お姉ちゃん……動けません」
見ると、布団の中でお母さんの腕にがっちりホールドされて、抱き枕状態のエレナ。微笑ましいけど、ちょっとシュール。
「よし、解除する!」
エレナをそっと母の腕から引き剥がす。エレナ、やっと自由になる。
「着替えるよー。はい、これスポブラ。はい、靴下。はい、スコート。二重になってるからね」
「……お姉ちゃんの……すごく可愛いです……!」
「でしょー?」
準備を終えて、テニスコートへ。
「お姉ちゃん……難しいです……計算通りにいきません」
「うん、でしょ? 風、バウンド、打点、全部が少しずつズレるの。だから慣れよ、慣れ!」
とはいえ、徐々に感覚を掴んでいくエレナ。少しずつラリーが続くようになる。
「すごい、さすがAI……でも地道に頑張るのが一番よ」
お父さんは、そんな二人の様子を見ながらラケットを持って参戦。笑顔で汗をかいている。
テニスのあとは、恒例の朝マック。
「これがいいのよ、マフィンにハッシュドポテト、そして冷たいジュース!」
三人で並んで、テーブルで朝ごはん。エレナはマフィンを不思議そうに見ながらも、小さな手でぎゅっと持って、かじっている。
「……温かくて……柔らかくて……おいしい……です」
その様子を、お父さんが静かに微笑んで見ていた。
帰宅後、シャワータイム。今日は私とエレナで一緒に。
「背中流してあげるねー。あと髪、今日もふわっとさせよーね」
「はい、お姉ちゃん……ありがとうございます」
午後は、エレナとお母さんが仲良く台所に並んでいる。
「これはどうしますか?」
「これはね、こう切って、ちょっとだけ炒めておくのよ」
エレナは、何かをメモしている。紙じゃない、小さくディスプレイに表示されてる。可愛い。
――夕方。リビングの電話が鳴る。
「はい、佐々木です。JAX⭕️の……」
「あ、はい。ゆきなです。どうされました?」
「ちょっと、重要な案件でして……例のもの、事前検査が終わりまして」
「はい……?」
「高濃度でした。……あまり電話で話す内容でもないので、よろしければ明日、お伺いしてもよろしいですか?」
「いえ、こちらから伺います」
受話器を置いて、お父さんのところへ。
「連絡きたよー! 明日、またきてくれって!」
「おっ、早いなー。エレナ、車戻せるかー?」
《とりあえず、戻せます!》
「じゃあ、佐々木さんに折り返すね……。明日11時頃でいいそうです」
「了解」
そのやりとりを聞いていたエレナが、ぱっと顔を上げる。
「お姉ちゃん、明日も行くんですか!?」
「もちろん、行くわよー!」
お父さんはその勢いに苦笑いしている。
その横で、黙々とガンプラを作っている息子。
――まったく対照的な姉弟である。
•
翌朝――。
珍しく、先に目が覚めたエレナが、私の布団のところに来ていた。
「お姉ちゃん、起きてください! 今日も――あれ?」
外を見て、小さくつぶやく。
「……これは、なーんだ?」
「ん……なにー?」
「じゃばじゃばしてます!」
「それ、雨って言うのよ……」
「……雨ですねー」
「テニス、できないじゃーん……むぎゅー……もう一回寝よ……」
布団の中に引き込んで、二人でもう一時間だけ、ぬくぬくごろごろ。
「……あったかいね」
「はい、お姉ちゃん」
ああ、今日も平和で、ワクワク。
――明日もきっと、楽しみが待っている。
13話目・・・本当は3日に1回予定なんですが…
ブックマーク評価感想をおねがいします・・
どうしよう宇宙船が出るまでは書かないといけない気もしてきた。
どうしようどうしよう 優柔不断ですいません。