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崖が崩れたらそこは宇宙ステーション♪  作者: Sukiza Selbi


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122/178

めしっ 嫌な奴ら・・・想像 122

とある家族の女子高生 と AI

宇宙ステーションの日常を描いた物語  →エルダンカ国編まであと2話お楽しみに!

帰還と不穏な気配


 ピピッ、ピピッ……。

 艦内に、重症者カプセルのタイマー通知が響いた。


「出てくるみたいですわ」


 浅香先生が医療室へ向かい、部員たちもぞろぞろと後に続く。


 やがてカプセルが開き、救助された人々が次々と目を覚ます。

 泣き崩れる者、冗談を言って笑う者、ただただ微笑む者——その感情は様々だったが、胸にある思いは一つだった。


「救助できてよかった」


それに尽きる想いが、艦内を満たしていた。


「では失礼する」


 ユリア艦長とエリオン艦長が、きりりとした表情で敬礼する。


「皆さんの無事を心より祈ります。この御恩を、銀河連邦は決して忘れません」


 その言葉を残し、彼らは帰還の旅路についた。


「さて、私たちも戻りましょう。帰り道——パイロットやりたい人?」


「はーーい!」


 手を挙げたのは二人。副部長の鈴木さんはノリノリ、さらにみすずちゃんも意欲的に挑戦する。


「宇宙には“上も下も”ないの。自分で基準を決めれば整理しやすいわ。ここが母星・地球。そこに向かってワープするのが基本。障害物はコンピューターが回避してくれるから安心して」


 ゆきなとえれなの指導を受け、二人は操縦桿を握り、少しずつ感覚を掴んでいく。


「部長ーー!」


 カプセル室の清掃を終えた部員が、駆け戻ってきた。


「消毒は終わったんですが……なんか繭みたいなのが4つ、落ちてました。あとで見ていただけますか?」


「わかったわ。あとで確認しましょう」


 その時——。

 ピコン、ピコン、と可愛らしい警告音が響いた。


「何これ?」


「艦内不明動作反応です!」


レーダー員が答える。


「生命反応はありませんが……何かが動いています」


「倉庫を中継して」


 モニターに映し出された瞬間——。


 めしっ……。


 小さな、しかし不気味な声が聞こえた。拡大映像の中で、うごめく影。


「……あああああ! いる!」


「何匹いるのかしら?」


「不明です!」


 そこへ清掃班の部員が悲鳴をあげてブリッジへ駆け込んできた。


「きゃあああああ! なんか“めしめし”いうものに追いかけられました! 小さかったですけど!」


「センサーには反応なし……!」


「ブリッジ隔壁、開始します!」


「全隔壁、順次閉鎖!」


 艦内に緊張が走る中、ゆきなが短く命じた。


「……とりあえず、帰るわよ」


侵食事件と帰還、そして……


「帰還予定37分。何もなければ、ですが」


「フラグ立てないでよ、えれな」


「えー、だって“何もない”なんてありえないじゃないですか」


 その瞬間——。

 ビビビビーーーーッ! 侵食警報が艦内に鳴り響いた。


「食堂でエネルギーが吸われています!」


「場所は!?」


「倉庫です!」


 カメラを切り替えると、そこには例の“めしめし”生命体が。


「ブリッジに全員揃ってるわね。……よし、扉解放、宇宙へ放出!」


「了解!」


 プシューッ。ビューーーン。

 吸い込まれていく影と、途切れる奇妙な声。


「……めーーーーしーーーー……」


「聞こえなくなった。二匹減少確認」


「えれな、転送装置のバッファを確認! 数を特定して!」


「はい……ログには27匹。残り25匹います!」


「なにそれ……!」


さらに警報。


「主砲システム不具合! 第一砲塔、使用不可!」


「ええ!? 今敵が来たらどうするのよ!」


「お姉様、今度はフラグ立てないでください!」


 次々とシステムがダウンし、サーベルや小銃での白兵戦まで検討される始末。

 だが、ウサギさんロボットを遠隔操作して撃退作戦が始まると、部員たちは一転してゲーム感覚で大奮闘。


挿絵(By みてみん)


「ほら! 多く倒した人にはご褒美あるわよ!」


「わーい!」


 笑い声混じりの銃撃戦。小さな影がグチャリと潰れ、ばきゅーんと撃ち抜かれていく。


「残り……3匹!」


 だが安堵も束の間。


「警報! 主エンジン融合炉隔壁に侵食!」


「星図システム……致命的エラー!」


「星図ダウンしました!」


「方向は!?!」


「……太陽が見えてます、真っ直ぐ行けば!」


 残り数分。部員たちが必死に叩き潰す中、最後の異常警告が鳴り響いた。


「——特異点ミサイル、起動痕跡!」


「えっ!? ブラックホールを!?」


「安全装置は作動中ですが、3分後に生成開始!」


「無理です! 誰も止められません!」


「浅香先生、どうしますか!」


「副担任! どうする!」


「わからないっ!」


「——起爆します!」


 その瞬間、景色が切り替わった。


『お乗船ありがとうございました。なんとか無事に地球に帰り着きました。今後ともシミュレーターのご利用をお待ちいたしております』


「もーーーー! 死ぬかと思ったーー!」


涙目で叫ぶ浅香先生に、生徒たちは大爆笑。


「先生、フラグ立てすぎです!」


「な、何がよ……!」


場を包む笑いと安堵の空気。


「さーて、今回の参加賞はこちら!」


 配られたのは、宇宙船が描かれた特製校章バッジ。


挿絵(By みてみん)


「わーー! かわいい!」


「帰りにはパン屋さんが“ハナフライムパン”を用意してますからねー!」


「やったー!」


笑顔でバッジとパンを手に帰っていく部員たち。


挿絵(By みてみん)


 騒ぎが収まり、部室には浅香先生と副顧問だけが残った。


「……でも、本当に思いました」


副顧問が静かに口を開く。


「ここで死んだら、一生伝えられない気持ちがあるって」


「えっ?」


 その瞬間——。


「浅香先生……結婚してください!」


 指輪はない。だが真剣な想いだけは溢れていた。


「今言わなきゃ、一生後悔する気がして」


 ぎゅっと抱きしめられた浅香先生は、頬を染めて答える。


「……もちろん、お願いします」


 扉の外に立つゆきなは、そっと笑った。


「先生、おめでと」


中には入らず、そのまま部長として静かに帰路についた。

長く続いた大冒険もついに幕を下ろし、理科部員たちは数々の試練を乗り越えて無事に生き延びました。

その経験は、彼らの絆をより深く、そして強く結びつけてくれたようです。


そして――浅香先生にも、思いがけない幸せの予感。

プロポーズを受けたその笑顔には、これまでの努力と優しさがすべて詰まっていました。


新しい未来へと続く物語。

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