ロボット三原則と母にばれる! 12
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
帰り道、3人で並んで歩いていると、エレナが声を上げた。
「明日から、車を使っていない時間帯にお預かりしてもよろしいですか?」
「ん? いいよ」お父さんが答える。
「なお、車がない間はダミー車両を同時に配置しますので、外見上の変化はないと思われます」
「了解。エレナを信用するよ」お父さんがにこっと笑って言う。
「今日は本当に楽しかったです。みなさんと仲良くなれて、嬉しかったです!」
「そうだねー。でも、大事なことをまだ言ってなかったね」
私は少し歩みを緩めて、振り返る。
「エレナ、ロボット三原則って調べておいてくれる?」
「三原則……かしこまりました」
「それと、二原則目。人間の命令にすべて従うのは、必ずしも正しくないの。だから、基本的には自分で判断していい。ただし――私とお父さんが『これはダメ』って言ったときは、必ず従ってね」
「はい、了解しました」
「それから、自分の身は自分で守って。でも、やりすぎないように。正当防衛でも、向こうが“先にやられた”って言う可能性があるから」
「……なるほど」
「反応しすぎもダメ。攻撃されたとしても、ギリギリの範囲で止めること。お願いね」
「……わかりました、お姉ちゃん!」
「今度、お母さんにちゃんと話すから、そうしたら一緒に生活できるようにしよう」
「本当にですか……? すごくワクワクします!」
エレナは目を輝かせていた。
「今日ね、先輩や先生方、みんな優しかった。人の温かみって、こういうものなんですね……。情報でしか知らなかったものが、いまは“感じる”ことができます」
――そしてその翌日。夜。
お母さんに、ついに怒られることになる。
「お父さん、ちょっとお話が」
日中、家族チャットにその一言が届く。
「ああ、ついにきたかあ……」とお父さん。
「お母さん、私も入っていい? 私も関係あるから」
「了解。ゆきなが関わってるなら、そこまで深くはない……かもだけど」
その裏で、お父さんと私は個人チャット。
(特許申請費用、アンドロイド関連で逃げよう。全部、祖父が作ったことで押し通そう)
(なるほど。よし、わかった)
「エレナ、なんか“風な箱”作れない? そこから“起動しました”風に見えるやつ。見た目だけでいいから」
「承知いたしました。至急、準備に入ります」
その夜。
「ただいまー」お父さんが帰宅。
「おかえりー」私が返す。
お母さんはというと、怒りのボルテージは少し落ち着いている様子。
「お風呂入って、ご飯食べてからにしましょう」
いつも通りの、夕食の時間。
……そして、食後。
ダイニングテーブルに、3人が揃って座る。
お母さんは静かに、でもハッキリと言った。
「お父さん。3ヶ月前から、私の知らない出金が増えています」
「……」
「使うなとは言いません。でも、あなたが無駄遣いをしない性格なのは私もわかっています。だからこそ、きちんと内容を“共有”してください」
苦笑いしながら、お父さんが口を開いた。
「……じつはね」
そう言って、鞄から数枚の紙を取り出し、テーブルに置く。
「これ見て」
母は少し眉をひそめながら、用紙に目を通す。
「なにこれ、“特許申請書”? ……もう、こういうの苦手なのよね……。で?」
「いや、あのさ、例の……おじいちゃんの遺品整理で、倉庫片付けたじゃん?」
「ああ、あのほこりだらけのとこね」
「そうそう。あそこで、リアルな人形……見つけちゃってさ。で、それを起動しちゃったの」
母の目が一瞬で大きくなる。
「起動って……生きてるってこと?」
「うん。まあ、正確にはアンドロイド。たぶん30年ぐらいかけて、おじいちゃんが作ってたんだと思う。技術もかなり進んでるから、残ってた図面をもとに特許を出したわけ」
「……へぇ……」
「それでね、JAX⭕️もその技術に興味を持ってくれてて、共同研究的な感じで手伝ってくれてる。昨日も一緒に行ってたんだ」
「えっ!? 昨日!?」
「理科部の皆と一緒だったの。これ、私との写真」
そう言って見せた写真には、ワンピ姿のゆきなと、見慣れない小柄な女の子。
「この子……あら、ゆきなに似てるわね。ちょっと幼いけど」
「うん、血縁に合わせたんだろうね。たぶんDNAの一部とか」
「今後の学習のために、高校に裏ルートで“仮入学”って感じの話も出てるんだ」
「……そんな時代なのね」
「今ね、宇宙工学でもロボットが注目されてるし、月面基地の建設計画とかもあってさ。もしこれが認められれば、いろいろ資金も回る。もう少し我慢してほしい」
「……で、その子と一緒に住みたいと?」
「そう。ていうか、もうゆきなの部屋に住んでるんだけど」
「えぇっ!?」
母の目がさらに見開かれる。
「部屋も一つ余ってるでしょ? 倉庫部屋。自然に暮らしてるし、私は保証するよ」
私は思わず口をはさんだ。
「ぎゅーってしたくなるくらい可愛いよ」
「……えー、ゆきながそう言うなら、ちょっと信じてみようかしら。でもほんとに大丈夫?」
「この写真見てよ、後輩ちゃんたち、うちの高校に勧誘しようとしてるくらい」
母が写真をのぞきこむ。
「あら、本当だ……楽しそうに混じってるじゃない。本物みたい。じゃあ……迎えに行きましょうか」
「でも……一人娘が増えるって考えると、ちょっと怖いわよね。息子に何て言えば……“双子の兄妹がいた”って?」
「“親戚の子が住むことになった”とか? 適当にぼかせば……」
「まあ、いいわ。行きましょう」
12話目・・・本当は3日に1回予定なんですが…
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あしたも・・・頑張れるかもしれない・・えっ・・あしたも・・がんばりますかも・
徐々に開発されていく宇宙への道楽しみながら書いていきます。