理科部演習 ハナフライム始動 119
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「土地の入札はいつかしら?」
「来月6日です。お姉様は来月2日に成人されます」
「行けるかしら……」
「お姉様には職業もあります。参加可能です」
— ふふっ、ずるいけど構わないわ。大事なのは「無駄を避けて、最大限の成果を得る」こと。
•周囲の入札者の金額想定:(別途、えれなの調査資料)
•開発予算:最小限で最大効果
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図面に記されたビジョンを読み解きながら、エレナはそっと画面に実現可能な図面を想像し始めた。
「わかりました。具現化します。」
平和を願うお姉様の想いを、設計図という形に変えていく――その作業が、また次の未来を創るのだった。
図面に記された複雑なレイアウトを見つめながら、えれなはそっと息を整えた。
「……ここはもう少し効率化できそうね」
青いマウス先がすらすらと走り、メンテナンスデッキから防衛ステーション、そして融合炉まで、各施設のラインがよりシンプルに、そして強靭に最適化されていく。新しい構造の骨格が、紙の上に次第に姿を現していった。
その頃、ゆきなは入札に必要な書類を机に並べていた。ほぼ手元に揃っているから、あとは提出するだけだ。
「よし、役所に出してしまおう」
来月の入札に向け、準備は着々と進んでいる。先生に同行してもらえば近いし安心だ。
書類をまとめ終えると、ゆきなはスマートフォンを手に取った。
「おじちゃん? おっきな計画があるんだー。概算で先に見積り作らない?」
電話口の向こうで、少し笑い声が聞こえた。
「ん、またなんかやるんかい。わかった、楽しみに待ってるよー」
「今度は親とか言わないんだねー。」
「もう実績があるからなー、もうすぐ成人だしな!」
「ありがとー。まだ来月にならないとわからないんだけど、確度は高いはずよー」
短いやり取りの中に、どこか誇らしさと、未来へのワクワクが滲む。
電話を切るころには、時計の針はちょうど正午を指していた。
「よし、今日は13時からの部活に行けるわね」
結局、どんなに忙しくても休まないゆきなに、えれなは呆れ顔で小さくため息をつく。
「……ほんと、お姉様はタフだわ」
そんなやり取りの中にも、二人の信頼と絆は揺らぐことなく、未来に向かって強く結ばれていた。
新入生3人と副担任の笹塚先生も招かれ、机の上には一枚の紙が配られた。
「今日は理科部スペシャルバージョンです。こちら、守秘義務誓約書にサインをお願いします」
先生も生徒も順にサインしていく。正面に座る浅香先生は、にこにこと柔らかい表情を浮かべている。
「浅香先生は理科部顧問、そしてゆきな部長はテニス部の副部長も兼ねています」
「もう一つ肩書きあるんですよね?」と誰かが声をあげる。
「知ってるーー! JAX⭕️研究員でーす!」
「はいそうですよー。今回は特別にバージョンアップしたシミュレーター室にご招待します」
笹塚先生が「投影機みたいな?」と首を傾げると、ゆきなは頷いた。
「その通りです。特別に借りてきました。……でもまだ機密事項だから、内緒ですよ?」
全員が誘導されて、教室に設置されたダンボール宇宙船へと入っていく。
「浅香先生、艦長席へどうぞ!」
「笹塚先生は副艦長席!」
笑いながら座る先生たちの姿に、生徒たちはにぎやかに役割を決めていく。
「私はレーダー!」「私は機関!」「じゃあ私、砲撃ー!」
二年生とみすずちゃんは、前回とは違う役に挑戦するように交代していた。和やかな雰囲気が部屋を満たす。
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そんな中、ゆきなが声をあげる。
「では皆さん、どの制服がご希望ですか?」
「可愛いのがいいー!」
「かっこいいのじゃなくていいの?」
「今回は可愛いのでお願いします!」
ゆきなはニヤリと笑った。
「後悔するなよ? とことんやるからね!」
全員が座り直すと、「では着替えタイムです」と合図が出される。
「笹塚先生、女子高生の生着替えなんて見たらダメですからね。横は彼女ですから、しっかりアイマスクつけてくださいね」
「ぶはっ……!」笹塚先生が吹き出し、浅香先生が苦笑しながら強引にアイマスクを装着させる。
「本当はボタン一つで切り替えられるんですけどね。では、カウントダウンします。5、4、3、2、1——
投影機が点灯し、教室の風景が一変する。
「えれな、転送!」
その声と同時に、全員の視界は本物の地下司令室へと切り替わった。
リアルすぎる演出に、教室中が一斉に悲鳴と歓声で包まれる。
「きゃーーー可愛い!」
「ゆきな先輩、素敵すぎる!」
「だって“可愛くかっこよく”って言ったじゃない」
タイトスカート姿で登場した部員や先生たちは、思わず互いに見惚れる。笹塚先生は視線のやり場に困り、浅香先生は少し恥ずかしそうに微笑んでいる。
頭上を見上げれば、そこには圧倒的な存在感を放つ宇宙船——ハナフライム2号機が鎮座していた。
「皆様ようこそ。ここは小さいですが、司令所——地球司令本部です」
ゆきなとえれなが並んで告げる。
メインパイロットはゆきな、副パイロットはえれな。前回は宇宙船搭乗だったが、今回は新型艦の司令所に直結する本格体験だ。
カタンカタン……と金属階段を上がっていく足音が響く。
「浅香先生、笹塚先生、先にどうぞ」
促されて2人が昇ると、生徒たちは思わず目を合わせた。
(絶対、このスカート見える……)
中に入ると、それぞれレーダー員、攻撃員、機関員と役割に就く。先生たちは艦長席と副艦長席に座らされ、帽子を渡された。
「では、艦長・副艦長……発進準備完了です!」
誰もが心を躍らせる。
その瞬間、理科部の一日が“宇宙”へと跳び立っていった。
さあ――第二回「宇宙シミュレーター」と見せかけて、いよいよ本物の操縦が幕を開けます。
理科部員たちはスパルタな実習に挑みながら、どんな物語に巻き込まれていくのでしょうか。
予想もつかない展開と、胸が高鳴る冒険が待っているはずです。
少しでもワクワクしていただけましたら、ぜひ評価やブックマーク、アクションをいただけると嬉しいです。