新しい出会い 〇〇〇〇族 116
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
― 再会の朝 ―
「では、とりあえず戻りましょうか」
静かな声でそう言いかけた瞬間、通信に割り込んだのはハナフライムαからの連絡だった。
「いえ、同時進行でαがこちらに向かっています。
医療行為中のため速度は落ちていますが、20分後には到達予定です。」
「……そう。なら、少しゆっくりできるわね」
荒廃した惑星を前に、ゆきなは一息ついた。
「まだ病原菌は残っているのかしら?」
「はい、至る所に存在するものと推測されます。
外から見ると綺麗なのに……」
えれながそう答える。
目の前の風景は静かで、美しい青の空と風が流れている。
「救助者たちはすでにナノ注射を打ってあるのよね?」
「はい。現在、冬眠から順次解除中です。」
⸻
― 翻訳と接続 ―
「もう翻訳はできているかしら?」
「対応済です。
音声自動変換も可能です。
向こうのシステムがギリギリで生きており、音声データも何とか復元できました」
「ふふ、ギリギリでも生きていてくれてよかったわね」
その時――通信に電子音が響く。
「あ、来ました。α、合体シーケンスを開始します。」
ハナフライムαがゆっくりと接続軌道に入り、接合口が滑らかに固定される。
「固定化、完了しました。」
「では行きましょうか。隔離室へ……入っても大丈夫かしら?」
「はい。全て除菌・滅菌済ですので、安全です。」
⸻
― 奇跡の再会 ―
扉を開くと、そこには――
冬眠カプセルの中で眠る、可愛らしい猫耳の女性と、幼い子供の姿。
「まぁ……可愛いわね 4つの耳の種族なのね」
ゆきなが微笑む。
「隣は……お母さんかしら。素敵ね」
透明カプセルの向こうに見える、もふもふのしっぽがピクリと動く。
「男の子にもあるのね。ぎゅっとしたくなるわ……」
次第にカプセル内の表情が動き始め、うっすらと夢を見ているような微笑みが浮かぶ。
「個人差はありますが、まもなく起き出すと思われます」
と、えれなが脳波を確認する。
「この方が一番早く起きそうです」
そして――
プシューーー
小さな蒸気音とともにカプセルが開く。
猫耳の女性がゆっくりと目を開いた。
「……おはようございます」
ゆきながそっと声をかける。
「どれぐらい……経っているのですか?」
「システムによれば……およそ1万3千年。長い眠りでしたね」
「……そうですか……」
女性は一瞬天井を見つめ、すぐ隣のカプセルを見た。
「お隣は……お子さんですか?」
「ええ。夢を見ているように、むにゃむにゃと……元気そうですよ」
「……よかった……ああ、病気は……?」
「私たちの医療技術で、回復しています」
涙を浮かべて、女性は深く頭を下げた。
「……ありがとう……ありがとうございます……」
⸻
「失礼しました。
私、キャスリング星所属、シルティと申します。
このたびの救助、心より感謝申し上げます」
礼儀正しく、でもどこか優雅な彼女の言葉に、ゆきなも丁寧に応じる。
「離脱されたのこりの船は……?」
「全部で3宇宙船。異なる方向へ。
システムに航路データが残っているはずです。」
遠くで、エレナが静かに首を振る。
「確認しましたが……2船は痕跡がありませんでした。
残念ですが、こちらの船が生きていたのも奇跡だったかと」
ゆきなはそっとシルティに近づき、静かに微笑んだ。
「後ほど、わたしたちの船を見せていただけますか?」
「……はいでも本当に限界でしたよ......」
プシューッ……プシューッ……
冷却カプセルが次々に開き、白い霧がゆっくりとテラスに立ち込めていく。
その中から聞こえてくるのは、目覚めた子供たちの小さな声と、
彼らをそっと抱きしめる母たちの安堵の吐息だった。
ゆきなが静かに振り向き、そっと声をかける。
「シルティさん、皆さんに状況の説明をお願いしても?」
「……はい。わかりました」
シルティが歩み出る。
⸻
― 新たな出会い ―
その時、堂々とした風格のある男性が一礼した。
「失礼いたす。
この船のチームリーダーを務めておる、部族長・シーザーと申す。
この度の救助、心より感謝いたします」
そして、柔らかく微笑みながら手を広げる。
「せっかくの機会です。
皆様、カフェテラスにてケーキとお茶をいただきながら、
ゆっくりとお話しさせてはいただけませんか?」
「いいですね、感謝します」と、シーザーは答えた
テラス席には、温かい香りのするハーブティーと、
透明な層で彩られたフルーツケーキが並ぶ。
― 説明と未来 ―
会話は穏やかに、しかし時に熱を帯びていった。
•どこまで遠く離れた場所から救助されたのか
•ウイルス完治のメカニズム
•現在の星の状況
ゆきなとえれなはスキャンデータを元に、丁寧に説明した。
「詳細なスキャンデータはありますか?」とシーザー。
「はい、もちろんあります」
「では……この場所へ、私たちを案内していただけますか?」
「何かあるのですか?」
「行けば……うまくいけば、分かります」
― 丘に隠された希望 ―
ハナフライムαのシャトルが降り立ったのは、ただの岩の丘だった。
しかし、部族長シーザーは静かに語った。
「この岩地帯は、1200万年変わらないとされている聖地。
病が流行る前、私たちの文明の最終防衛拠点でした」
そしてもう一人、落ち着いた声の女性が現れる。
「私、伝承師アスタナ。
この場所は、シーザーの遺伝子と私の伝承コードによって開かれます」
円形の円盤状パネルに二人が立つと、轟音と共に地が震え始めた。
⸻
「お姉様、高エネルギー反応確認。内部融合炉、起動を探知しました。」
その瞬間、響き渡る自動音声。
「――賢人2名を確認。おかえりなさいませ。
最後の来場者から 13267年289日 経過しております」
「起動してよろしいですか?」
アスタナは迷いなく言った。
「ええ。多分、最後の146人のニャーん族。ここから復興が始まるわ」
「承知いたしました。フルシステムで起動を開始します」
その時だった。
周囲1kmの岩が、段差状にゆっくりと盛り上がり始めた。
美しく形作られていく、都市のフロアと街路。
農業区画、研究所、保育施設、移動用のシャトル……
あらゆる設備がゆっくりと再生されていく。
「……おお……」
えれなが思わず感嘆の声を漏らした。
「種子、道具、乗り物、工具。すべて備蓄されているようです」
― コンピュータールームにて ―
ゆきなとえれなは、再生された中央施設のコンピュータールームへと足を踏み入れる。
その瞬間、システム音声が反応した。
「――ニャーん族以外の生命体を感知」
シルティが前へ出て微笑んだ。
「この方たちは、私たちを救ってくれた英雄です。
ゆきな艦長と、えれな副艦長です」
一拍の間。
その後、穏やかな声がスピーカーから響く。
「……これはこれは。感謝申し上げます。
私はこの都市の中央管理AIでございます」
「長い時間……誰とも話せず……
もはやニャーん族は滅びたのかという議論ばかり繰り返しておりました」
「……ですが、お帰りになられて――本当に、嬉しゅうございます」
にゃーん族も登場し、物語はまだまだ復興初期の状況です。
ゆきなもエレナも、読者の皆さまにとって懐かしい存在感を放ち続けています。
AIも長い間孤独を抱えており、その姿にエレナは自分の昔の姿を思い浮かんでしまいます。
これから先の展開では、状況に応じてさまざまなアドバイスや共同作業が始まっていくことでしょう。
物語がさらに広がり、深みを増していくのをぜひ一緒に楽しんでいただければ幸いです。
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