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以前 ゆきなの発見した 謎の巨大物質 114

とある家族の女子高生 と AI

宇宙ステーションの日常を描いた物語

― 祝勝会のあとの朝 ―


海中都市での祝勝会から一夜明け、

空は清々しく晴れていた。


銀河連邦から招待されていた人々も、特別休暇を楽しんでおり、帰還は2日後とのこと。


そんな中――


「はいっ、次、サーブ行くわよ!」


「――来いっ!」


テニスコートの上で躍動するゆきなとえれな。


昨日までの死闘が嘘のように、2人はいつも通りの汗を流していた。


「練習してないと……弱くなったなんて言われちゃうものね」


「うん、どんな時でも、“レギュラー”でいたいしね」


笑い合いながらも、2人のフォームはいつも以上に鋭かった。


― 報告会の提案 ―


その日の午後、ブリッジラウンジで紅茶を飲んでいたゆきなが、ふと口を開く。


「……今週末に予定されている今回の報告会、“エルダンカ国”でできないかしら?」


「ご招待も受けているし、連邦同士の星であれば遠距離会議もリアルタイムでできるのよね?」


「それに……中継衛星をうちの銀河にも配備できたら、今後の会談も自宅感覚でできるのよね?」


「……それって、“電話”とか“チャット”みたいに来ちゃうってことですよね?」


「そう! “ピンポーン♪ 会談に入りま〜す”みたいな!」


「……お姉様、また大胆なことを……でも、なんかできそうなんですよね……」


えれなは、またワクワクしていた。



通信バッチを起動したゆきなは、銀河連邦関係者たちに向けて落ち着いた声で語る。


「では皆さま、ゆっくりお過ごしください。来週の報告会で、またお会いできるのを楽しみにしております」


「中央都市には、ハナフライムを1台駐留させてありますので、帰還の際もどうぞお気をつけて」


「では、また来週――会談で願わくばエルダンカ国でお会いしましょう」


通信を終え、2人は荷物をまとめてホテルのロビーへと降りていく。



― 待っていた拍手の海 ―


エントランスの自動扉が開いた、その瞬間だった。


「えっ……なにこれ……?」


何千人もの人々が、通路を開けて拍手をしていた。


空気は静かで、温かくて、そしてどこか神聖だった。


挿絵(By みてみん)


「ゆきな艦長……」


係員が静かに説明を始める。


― 平和の兆しと、深い感謝 ―


「こちら側の敵大型艦が激減したことにより、周囲から**敵艦戦の兆候が確認できなくなっております」


「長距離調査の結果、防衛ラインが1/10まで後退していることが分かりました」


「今後、100年単位でこの宙域に平和が訪れる可能性が極めて高いと予測されています」


「そして、ハナフライムαの戦闘データにより――」


「何千艦もの敵大型艦が正確に駆逐された記録が残っており、連邦市民として深く感謝いたします」


拍手の音がさらに大きくなる。


えれなは、一歩後ろで静かにその光景を見ていた。



「うん。やりきったわね」


誰にも聞こえないような、ふたりだけの小さな声。


でもその言葉は、きっとずっと記憶に残る。


あの時、逃げなかったから。


あの時、諦めなかったから――


“今”がある。


― 想像もしなかった“感謝”と、次のワクワクへ ―


「……こんなに感謝されるなんてね」


ゆきなが呟くように言った。

朝の青い空を眺めながら、えれなが微笑む。


「今度こちら側も、高解像度スキャンしてみたいですね。ここは銀河連邦も来たことのない星域……どんなものが見つかるのか、楽しみです」


「うん……ワクワクするわね」


ゆきなが立ち上がる。


「帰る前に、寄っておきたい場所があるの」


「えっ、どこですか?」


「ほら、言ったじゃない。“戦いが終わったら見に行こう”って」


「……あっ! あの進んでいる“隕石風の物体”!?」


「そうそう。それそれ。サクッと行きましょう」


― ノアリエルゲート、通過 ―


「ノアリエルゲート、通過許可をお願いします。こちら、1-3連結艦。ゆきな艦長搭乗中」


《ゆきな艦長……大活躍だったと聞いておりますよ》


「いやぁ、死ぬかもと思ったわよ。でも……ありがとう」


《通過許可します。またのお越しを》


艦はゲートをくぐり抜け、火星圏を高速で抜けた。


「ワープ速度13.6、安定中――目的地点まで到着予測、約30分」


ゆきなの胸には、静かなワクワクが広がっていた。


挿絵(By みてみん)



「最大望遠、目視範囲入りました」


「写して――おおお……!」


スクリーンに映し出されたのは、“岩石にしか見えない巨大物体”。

しかし、その形状やラインは――古代宇宙船そのものだった。


「かなり古いけれど……いまだにエンジンが動いてるように見えるわね」


「見た目は完全に隕石ですが、長年の航行を続けていた痕跡が見られます」


挿絵(By みてみん)


「到着しました。短距離スキャニング開始――」



― 氷の中で眠る命たち ―


「……内部に生命反応、146体確認。全て冷凍睡眠状態と思われます」


「古いコンピューターから通信……言語形式不明。翻訳シーケンス開始……変換中です」


「まず届いたのは――過去の航行ルートです」


「……うわっ!」


エレナが小さく叫ぶ。


「1万年以上飛んでる……!?」


「通常エンジンのみでの航行……それでも2銀河ぶん移動した形跡が」


「すごい……時間が、すごいわ……」



「この船は、調査の結果母星で**未知の病気によって滅亡の危機に瀕した人々の“避難船”**です」


「病気データを取得中……ナノ注射での対応可否、調査中」


「……寝ている人々も感染しているの?」


「はい。ですが、ノアリエルのナノ医療なら、治療可能と判断されます」


「ただ、この船には人数的に載せられません」


「じゃあ――ハナフライムαに、ナノ注射200本と隔離スペースを設けられる?」


「可能です。医療緊急対応の“バイオエリア”を活用します」


「それなら――ゲート通行も使用させて。難民救出、開始よ」


「ノアリエルへ、連絡を」


《ゆきな様、いかがされましたか?》


「難民を発見したの。過去の病原体を保持している可能性があるので、ハナフライムαのバイオエリアで治療・蘇生を試みたいわ」


「ナノ注射200本、購入して搭載してもらえるかしら?」


《承知いたしました。金額はいつもの口座より自動引き落としにて処理いたします》


「ありがとう」



― 星の記憶をたどる旅へ ―


「その間に、元の星に向かいましょう」


「……何万年も経っているから、文明は崩壊してるかもしれない」


「でも――彼らは説明を望んでいるはず。その気持ちに応えたい」


「船の状態は?」


「内部コンピューター、ほとんど限界でしたが、航行記録は保たれていました」


「……よく、持ちこたえたわね」


「通常運行モード、ハナフライムα作動」


「ゲート前、大型艦通過用エネルギー移送開始」


「残り3分、ゲート最大開閉開始」


「通過まで――あと2分」



宇宙は静かだった。


でも、そこには“いのち”があり、“物語”があった。


そして、ゆきなとえれなは――

今日も、未来に向けて進み続けていた。


1万年以上漂っている宇宙船・・・

どんな人たちが乗っているのでしょうか病原菌とのこと今後をお楽しみください。

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