祝勝会と使われない最新豪華客船 113 (30000PV感謝)
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「工場長、ありがとう!」
ゆきなが笑顔で手を差し出すと、工場長も迷わずその手を握った。
「いえ、こちらこそ……すべては、えれな様の準備が行き届いていたおかげです」
その言葉に、えれなは照れたように小さく微笑んだ。
「それと……相手側のコンピューター、30基ほど回収してあります。中にどんなデータがあるか……解析をお願いできますか?」
「楽しみですね! 前回のプラットフォームもそのまま使えますので、問題ないかと」
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「今日は海底都市で祝勝会を予定しているの」
「ホテルも取ってあるから、無理には誘わないわ。ご都合に合わせて、のんびりしましょう」
穏やかな言葉に、周囲のスタッフたちもふっと顔をゆるめた。
「管制、お疲れ様。乗員20名程度、移動用の客船を工場まで回してもらえる?」
「ハナフライムは整備ドッグ入りで、ちょっと無理させすぎたから」
《承知いたしました。5分ほどで到着いたします》
やがて――
遠くから、まるで大統領でも乗ってくるのかと思うほど、きらびやかな豪華客船風の大型船が姿を現した。
「……豪華すぎるわよ……」
「いえいえ。実は、この船……使われる予定もなく、ほぼ訓練航海のみで新造後ずっと保管されていたんです」
「ぜひ、**今日という日に“使ってやって”ください。乗員乗客、全員、喜びますから」
ふと見渡せば、確かに船員たちは嬉しそうに胸を張っている。
新しく造られ、誰にも使われなかった誇りの船。
今日、その船が本当の意味で“役目”を果たす。
ゆきなは内心で**(ちょっとデカすぎるけど……)**と思いながらも、それは飲み込んで――
「わかったわ。お願いね」と、静かに言葉を返した。
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船内では、スタッフたちがにこやかに声をかける。
「いらっしゃいませ!」
「こちらのカフェで、おくつろぎください」
冷たいドリンクが出され、乗客たちは甲板のオープンデッキのカフェテーブルへと案内された。
そこには風と、音楽と、戦いを越えた静けさが流れていた。
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「水中モード、起動――」
ガラスのような透明なシールドがゆっくりと展開され、船全体が水中へと潜航を始める。
「わああっ、きれい……!」
「すごい、サンゴ礁が見えるよ!」
あちこちから歓声が上がる。
周囲に広がるのは、夢のような青の世界。
そして、ついに――
海中都市に到着。
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― 新たな提案と輝く目 ―
ゆきなが、ふと船長の方を見てつぶやく。
「……これ、もったいないわね」
「この船、海中・空・中央・山岳の各都市を巡る定期クルーズとして運行すればどう?」
「地球人って、のんびり旅しながら寝て移動するの、好きでしょ? 贅沢だけど、きっと喜ばれるわ」
その言葉に――
船長の目が、ぱぁっと輝いた。
「……それ、すごく素敵なアイデアです! 本部に提案してみます!」
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― そして、祝福の夜へ ―
静かな海中都市の光が、船のガラスを照らす。
それは戦いを終えた者たちへの、ご褒美のような夜の始まり。
遠く、都市のホテルの高層階には、祝勝の光がゆっくり灯り始めていた――。
― 四都市クルーズ、突然の承認 ―
ゆきなはポケットから通信バッチを取り出し、カチリと押した。
「四大中央コンピューターさん、聞こえますか? あのね……四都市クルーズってどうかしら?」
ほんの遊び半分のつもりだった。
だが――即答だった。
《素晴らしい考えです。承認します》
「えっ……?」
まだ工場には何も言っていないのに、四都市側の承認だけがなぜか瞬時に通り、運行開始が決定してしまった。
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「今回は、ゆきな様たちだけの特別ツアーだそうです」
美しく飾られた海中都市のレストラン会場には、豪華な料理が並ぶ。
テーブルに着いたゆきな、えれな、仲間たちは、金色のグラスを手に取って――
「では! 勝利を祝して――
かんぱーーーい!!!」
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― 生きて帰ってきた喜び ―
「……えれな」
「はい、お姉様」
「……生きて帰って来れたわね」
「……本当に……ダメかと思いました……」
二人の視線が静かに交差する。
その間に流れるものは、言葉以上の絆だった。
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「あっ、そうそう。ハナフライム型、あと5台発注できるかしら?」
「……余裕ですよ」
「えっ?」
「2週に一度、大金が振り込まれてまして」
「……ああ二酸化炭素代ね・・・・」
「しかもデスネレート換金でプラス補正。さらに……なぜか“惑星上で使用された金額の10%”が私たちに入ってきてます」
「……えっ!?なんで!?」
「著作権……というか、発案料とのことです」
「惑星売り上げ × 0.1 だそうで……」
「……もう、むちゃくちゃね……」
「今、いくらあるか聞かないほうがよさそうね・・」
「……お姉様、それは……」
「聞かなくて正解です」
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「じゃあ、メインエンジン関係は地球の方でエレナが作るから、発注だけお願いね」
「……でも、何かに使うんですか?」
「いえ。そろそろ、“貸してくれ”だの“売ってくれ”だの言われそうじゃない?」
「だから先に、作っておくの」
えれながクスッと笑った。
「今度は銀河連邦で、お金稼ぎですか?」
「そんな悪いこと言わないの!」
「あとから勝手についてくるだけよ!」
「はいはい、わかってます、わかってます」
⸻
― 想像の果てにある未来へ ―
えれなは、紅茶を飲みながらふと思った。
(お姉様の想像力は……本当に、無限大)
戦いのあとの静けさの中、次に何が始まるのか――
誰にも予想できない。
だけど、それが楽しい。
それがワクワクする。
そんな風に思っている自分自身に気づいて、えれなは自然と笑顔になっていた。
祝勝会は、みんなが「生きている喜び」を胸いっぱいに感じる時間でした。ゆきなも、えれなも、仲間たちも、そして遠い星の人々までもが同じ気持ちで祝ってくれて、広い宇宙の中に確かに通じ合うものがあるのだと感じました。
この物語は、戦いのあとにも必ず笑顔や拍手があり、そして再び未来へ進んでいく力が湧いてくる──そんな世界を描いています。
今後も、きっと新しい展開が次々に始まります。未知の星、出会う仲間たち、そして誰も見たことのない景色。ゆきなとえれな、そして私たちが大切にしている「平和」と「ワクワク」の物語は、まだまだ続いていきます。
もしこの物語を通して、あなたの心にも少しでも同じ“ワクワク”が届いていたら嬉しいです。ここまで読んでくださった読者の皆さま、本当にありがとうございます。よろしければ感想や評価をいただけると、これからの物語づくりの励みになります。