JAX◎との交渉 11
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
「よろしくお願い申し上げます」
佐々木さんも、真剣な表情で頷いた。
「わかりました。こちらでお預かりします。
私一人では判断できませんので、一週間ほどお時間をいただけますか?」
「はい、承知いたしました」
「ちなみに…」
私は少し間を置いてから、静かに続けた。
「残り、このガス缶とは別に……大きめのカセットコンロガス缶の大きさであと2本、手元にございます」
佐々木さんも、思わず姿勢を正す。
「そのうちの1本は、お譲りすることも可能です」
「ですが、その交渉については——今回の鑑定結果を踏まえてから、改めてご検討いただければ幸いです」
私の目は、真剣だった。
それは単なる発明や成果ではなく、祖父の想いを未来へつなぐための、確かな一歩。
嘘ではあるがその思いで
佐々木さんはゆっくりとうなずき、穏やかな声で応えた。
「わかりました。
責任を持って、鑑定と報告を進めます。ゆきなさんの想いも、きちんと受け取りました」
「ありがとうございます……」
佐々木さんは深くお辞儀をし、その姿を見て、私も自然と背筋を伸ばした。
私はエレナの腕時計に目をやる。
そこに、さりげなく浮かぶ文字。
〈記録完了 艦長〉
「さて、そろそろ時間ですね」
部長が立ち上がる。
「では、研究棟の続きを見学しにいきましょうか」
次の一歩が、また未来につながる気がして——私は自然と笑顔になっていた。
部長は、ぺこりと丁寧に頭を下げるのだった。
さて、午後の部。
今度は最新の小型衛星の運用や、宇宙ステーションを支える支援ロボットについての説明を受ける。
最新鋭の機体がいかに効率よく、人の代わりに作業しているかを見て、
部員たちはもちろん、私もつい見入ってしまった。
すべての見学が終わり——
「本日は、ありがとうございました!」
部長の声に続いて、私と理科部の6名とエレナ、全員で一斉にお辞儀。
拍手とともに見送られ、車に乗り込む……と、その前に。
「せんせー!」
「あら、何? ゆきな部長」
「この近くに、ちょっと変わった自販機の群れ……ありましたよね?」
「ええ、あそこね。寄り道、したい?」
「みんなで、ちょっとだけ遊んで帰りませんかー?」
私が振り返ると、後輩たちも笑顔で「行きたい!」と頷いている。
「いいわよ。帰り道でもあるし、見ていきましょうか」
そして、一同でワイワイと“レトロ自販機群”へ。
ホットスナックや紙カップのうどん、謎のジュースに、みんな大はしゃぎ。
その間、ふとエレナからメッセージが入る。
「艦長、先生の車に同乗すこし、運転が怖いです」
思わず吹き出してしまう。
(エレナ、がんばって…!)
すっかり仲良くなったエレナと部員たちは、自然と手をつないで歩いたり、肩を寄せて写真を撮ったりしていた。
行きと違って、少しお疲れモードのメンバーたち。
そんな中、私の父に近づいていった後輩たちがこそこそと——
「お父さん、ゆきな先輩って、家でもやっぱり部長なんですか?」
「部室での顔と違って……どうですか?」
父も笑いながら「秘密」とだけ返している。
その会話を聞いていたはずなのに、いつの間にか私は車に揺れに身を任せ、スヤスヤと夢の中へ。
——ハッと目が覚める。
「着いたよー」
父の声で飛び起きると、あっという間に学校前。
「はいはい、みんな、色んなものは部室に片付けてから解散よー!」
みんながバタバタと荷物を持ち、いつもの校舎へと向かう。
その横で、先生がエレナに何やら書類を渡している。
「これ、入学説明会の案内ね。お母さんと一緒に来てねー」
「はい。……ありがとうございます」
エレナも自然にお辞儀をしていて、すっかり“後輩候補”として馴染んでいた。
父も「ほら、お前も」と、横で笑っている。
「今日はお疲れ様でした!」
「解散! ……でもね、帰り着くまでが任務だから、安全第一で帰るのよー!」
そんな声とともに、それぞれの帰路へ。
──そして、その夜。
「……寝顔の写真が、部内チャットで回ってるんだけど?」
気づけば、誰かが撮っていたらしい。
「ゆきな先輩って、あんなに可愛く寝るんだ〜」
なんてコメントまで付いていて、恥ずかしさで布団の中に顔を埋める私だった。
この日の出来事が、静かに、でも確かに
“次の物語”への序章となっていくとは、まだ誰も知らなかった——。
8日目11話目・・・本当は3日に1回目標なんですが
ブックマーク評価感想をおねがいします・・
あしたも・・・頑張れるかもしれない・・えっ・・あしたも・・がんばりますかも・・えっほんとうに?
たったぶん・・