東京の強豪校との練習試合 106
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
(壮大な作戦開始まであと2話)
そして地球、テニス部は騒がしい
「ゆきな先輩、大変です! 大変ですってばー!」
血相を変えて走ってくるテニス部長。
その声が中庭に響いた瞬間――
「部長ぉ! 走っちゃダメって言ってるでしょうがああ!!」
「ほら言わんこっちゃない……」
「すいませーん!!」
「……次はないぞー!」
「 はいすいませーん!」
──そんなやり取りも日常茶飯事。
でも今日の“走り”には理由があった。
「で、で、で、先輩! 富士山高校から練習試合の依頼です!」
「えっ……東京の? あの強豪校?」
「はいっ! 今週土曜日にどうかと……!」
「……あら。こ、怖いわね。まじで」
「とりあえず、臨時コーチに連絡しておきます! あと顧問は……例によって浅香先生」
「……理科部と兼任ね。経験はないけど、いないよりいいわ」
事態を重く見たゆきなは、直接校長室へ。
「先生、大変です! 超強豪校から、直接こちらに来るとのことで――」
ゆきなは考えたように
「うーん……それなら、こういうのはどうでしょうか?」
「こちらのコートは2面。レギュラーチームが訪問して、補欠メンバーはこちらで練習交流も兼ねてみては?」
「それなら効率的ですね。どちらもコート空けずに練習できる!」
「臨時コーチも来れたら東京で移動なしですし、提案してみましょう!」
──ということで、部長が打診した結果。
「素晴らしい案ですね! これは楽しみです!」
先方のコーチからも快諾の返事が届いた。
⸻
そして迎える、週末
土曜日の朝、今日は少し特別。
朝7時、さわやかな空気の中で、30分だけの朝練が始まった。
「しっかりウォーミングアップして、10時には相手が来るわよ。後輩たち、15分前には門まで迎えに行ってね」
「はーいっ!」
「水とドリンク類は、このボックスね。相手チームへの差し入れよ。心を込めて!」
「で、ここ重要――なるべく仲良くなりなさいっ!」
「はいっ!」
「いいライバル、いいお友達。全国大会で“ あ、知ってる子だ!”ってなるの、大きいのよ? チャット、どんどん交換しちゃいなさい!」
「了解でーーーす!!」
「あとね、お昼と3時用に、パン屋さんの特製サンドイッチ、頼んでおいたから」
「やったー!」
「今日は、海風に当たりながらテラスで食べなさいね」
後輩たちの目が、ぱぁっと輝いた。
「では、浅香先生もよろしくね!」
「はーい、何もわからないけど、よろしくされました~♪」
──こういう時の浅香先生は、なぜかいちばん頼れるのだった。
⸻
四人、電車の旅へ
テニスコートを後にして、ゆきな・えれな・部長・浦川さんの4人は、
久しぶりに横須賀駅へ。
「あまりここから乗らないから、不思議な感じですね」
電車に乗ると、なんだかざわざわと視線を感じる。
「……えっ、うちら話題になってる?」
「やっと気づきました? お姉様」
「えれなも部長も、可愛いからね~」
三人は、思わずゆきなを見た。
(いや、いちばん綺麗なのはあなたなんですが)
──だが、誰も言わない。全員、心の中だけで強く同意した。
その理由は明白。
全員、揃いの綺麗なテニスウェア。しかもモデル体型の美少女が4人。
注目されるのは、当然だった。
「ねえ、あそこの子たち、あそこの女子校じゃない?」
前に座っていたおばあちゃんが声をかけてくる。
「はい、そうですよ!」
「あらあら、私も昔、そこを卒業したのよ」
「せ、先輩っ!?!?!?」
四人で、揃ってぴしっと挨拶。
「今度文化祭、来てください! 理科部とテニス部、両方にいます!」
「まぁまぁ〜楽しみだわぁ。孫も同じなのよ。今、教師してるのよ」
「えっ……ま、まさか浅香先生!?」
「あらっ、なんで分かったの~?」
「うちの顧問です!」
「いつもお世話になっています!!」
電車の中は、思いがけず“浅香先生談義”で大盛り上がり。
駅に着くまで、おばあちゃんと笑顔の花が咲き続けた。
「ではまたね~!」
手を振って降りていくおばあちゃんに、四人もぺこりとお辞儀。
⸻
舞台は高校へ――練習試合、開幕!
駅から見えるのは、人工芝のテニスコート。
その緑に、四人は思わず息をのむ。
「さすが……!」
そこへ、ふっと肩を叩かれる。
「よっ」
「副大臣!? 本当に来てくれたんですか!」
「来るに決まってるじゃない。行ったからには」
そして、そのまま五人で校門をくぐると――
「えっ、あの……佐々〇プロ!?」
「こんにちは~、今日はコーチで来たの」
「ええええええええ!!?」
まさかの元プロテニスプレイヤー登場に、ざわつく空気。
佐々〇プロはにっこりと、ゆきな達をを見た。
「この子たち、やるわよ。伸びしろの塊」
「お声がけしたのはこちらですのに、レギュラーの皆さんに来ていただけるとは……」
「でも、向こうも着いてるって連絡あったから、いっぱい練習した方がいいですよね?」
「その通り! この提案が来た瞬間、“楽しむチーム”だってすぐ分かりました」
「見るだけなんて、もったいないですもん」
握手を交わす、ゆきなと相手の部長。
⸻
第一試合:総当たり・シングルス戦
「さぁ、総当たりよ。まずは1セットずつ、シングルス」
「えれなさん、神奈川新人戦1位って聞いてますよ~」
「でも、お姉ちゃんと部長には勝てないですよ」
静かに火花が散る。
試合開始――
コートに、ボールと歓声が交差する。
【結果】
•ゆきな・部長・副部長・えれな:2勝2敗
•浦川さん:1勝3敗
•相手チーム:4勝2人、1勝3敗が2人
佐々〇コーチが、観戦しながらつぶやいた。
「すごいわね……。全国優勝校に対して互角の内容よ。
あとは作戦の組み立てと、“光る武器”を一つ身につけたら、勝ちきれるわね」
「はいっ!」
⸻
第二試合:ダブルス戦、始動!
「さあ、次はダブルス。2ペア✕2の総当たりね」
ゆきなが、えれなを見てニッと笑う。
「行きますか」
「はい、お姉様。勝ちましょう!」
相手のコーチもつぶやいた。
「いい練習試合になってるわ……。最近“友達”であり“ライバル”になれる子が少なかったのよ」
「今日、それが見つかった気がします」
ダブルスの試合が、ゆっくりと始まっていく。
今日という日は、青春と実力、そして未来への出会いが交差する、特別な一日になっていた。
さすがにつよい!
全国チーム さあ ダブルス次回どこまでいけるのか!
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