ユリアとエリオットのハネムーン 104
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
(壮大な作戦開始まであと4話)
出発準備と笑い声
「それでは、出航許可を取りますね」
「管制、こちらハナフライム1-3番艦。出航許可を願います」
「出航許可します。良い船旅を。あわせて……副司令夫妻に良いハネムーンを」
「ぶっ――!!」
「ぷっ……!!」
艦内に笑いが広がる。エリオット中佐とユリア中佐は顔を赤くして照れていた。
⸻
「出力55%。ワープスピード13.7にて、出航します」
白銀の光が船体を包み込み、艦は空間を裂いてワープへと突入した。
約1時間後、別の船から自動音声が流れる。
「ハナフライム5番艦。第12宇宙基地へ到着。第一ゲートへ停泊しますか?」
「第一ゲートで。先ほどの1-3番艦と同じ位置に停泊を希望します。」
「了解。停泊許可いたします。」
「管制停泊完了。総司令、他の乗員をお待ちしております」
中でこちらのタブレットをお取りくださいの文字がが流れ1人ずつ受け取っていく。
艦内マップや装備情報が表示される。案内に従い、総司令らがブリッジに向かうと、すぐに船内音声が流れる。
「現在、本星までのルートを入力済ですが、ワームホール位置の承認が必要です。ご指示ください」
「うむ。この“暗黒地帯”の座標385.2にあるワームホールだ。連邦管理者から通信が入るだろう」
「では発進いたします。最大加速ワープでよろしいですか?」
「よろしく頼む」
「承知いたしました。」
30分程度で通信が繋がる。
「こちらワームホール管理局天の川銀河5番艦ハナフライム目的を述べよ」
「こちらハナフライム5番艦 現在銀河連邦ミヤギ総司令がご乗船されており本星までの帰還を行なっている。 申請が来ているはずですのでご確認を」
「こちら銀河連邦ワームホール管理局。ミヤギ総司令、許可いたします」
「ありがとう。また来るよっと通信に入る。」
「総司令遠いですが、またのご訪問を」
「ワープエンジン出力55%。到達速度ワープ9.6、自動飛行モードへ移行。皆様、客室のご案内を始めます」
⸻
星図と感嘆、そしてもう一つの旅
艦内見学に出た技術国の人々は、モニターに映る星図と高速で抜けていく銀河の景色に、まるで子どものように驚きと歓声を上げた。
一方その頃、別のゲートから――
ハナフライム1号、2号、3号が、ゲートを通過して目的の惑星に着陸した。
「うおっ……ここが……!」
「すごい……」と、ユリアとエリオットが声を上げる。
「基本、皆さん優しい方ばかりです。試験を突破した人しか来れませんから」とエレナが微笑む。
「1週間ほど、ご自由にお過ごしください。このタブレットが支払いとネット環境になります」
「ちょうど夜ですね、えれな。空島のディナー、予約できる?」
「はい、完了しました」
「じゃあ、演奏を聴きながら食事して……ホテルでゆっくりしましょうか」
空に浮かぶ島へ向かう転送装置の光の中、4人のシルエットがゆっくりと進んでいく。
次の物語は、星々の夜に始まろうとしていた。
朝のやわらかな光がコートに差し込むころ、ゆきなとエレナはいつものように、テニスの打ち合いをしていた。白いユニフォームが風になびき、汗が頬を伝い、ラケットから放たれる球の音が気持ちよく空に響く。
そんな彼女たちの隣では、地球チームの誰かも、もう片方のコートでラリーを始めようとしていた。
「こんにちはー。第二コート、ちょっとお借りしますねー!」
「はーい、どうぞー!」と、エレナが明るく応じる。
バシンッ!バシッ!
勢いのあるラリーを続ける姉妹に、ベンチで休憩していた2人は目を細める。
「可愛いわねえ。あの子たち、結構レベル高いわよ?」
「高校生かしら。あれ、時間もちょうどいいし――」
「ねえ、3ゲーム先取でやらない?」
年齢は50歳前後、どこか風格とオーラを感じさせる女性2人が立ち上がった。
「いいですね!」とゆきなが笑顔で応じる。
女子ダブルス、即席マッチが始まった。ラリーの応酬、読み合い、ボレー、ロブ――どれもスリリングで、勝負は白熱する。
3-2――わずかな差で、ゆきなとエレナが惜しくも敗れた。
「これ、1セットでやってたら完敗してたかもね」と息をつくゆきな。
「また遊びましょう」と相手ペアが爽やかに手を振る。
その後ろで、エレナがぽつり。
「……あの人たち、バケモンですか?」
「ふふっ、あの歳でここまでやれるとはね」と微笑む。
帰り道
「元・ダブルス世界一のチームよ」と、誰かが耳打ちしてくれた。
「えっ!? あの人たちが……!」
衝撃と尊敬が混じった感情が、2人の心に深く残った。
⸻
朝食と別れの時間
その後、ユリアに連絡を入れる。
「朝ごはん、ご一緒しますか?」
「一緒するーーーーー!!!」という即レスが返ってくる。
「昨日のカフェ、良かったわぁ」
「今日はホテルの庭カフェですけど、気持ちいいですよ!」
小さなテラスには涼しい風が吹き、木陰には朝の光が踊っていた。鳥のさえずりと、ふわっと香るハーブの香り。
焼きたてのパンに、ベリーのヨーグルト、そしてあたたかいスープが並ぶテーブル。大切な友人たちと食べる朝食は、それだけで旅のご褒美のようだった。
「では、連絡はいつでも取れますので――残りの一週間と4日、思いきり楽しんでください」
「わかったわー! 海も山も中央都市も! 全部楽しむわよ!」
そう言って手を振る夫婦の背中は、まさに“遊ぶ気満々”そのものだった。
⸻
帰還と日常へ
ゆきなとエレナは、短い滞在ながら濃密な時間を終え、地球への帰還へと向かう。
「2日しか経ってないのに、なんかすっごい移動距離だった気がしますね」とエレナ。
「本当にね……」
帰りの中央都市では、艦のメインコンピューターと軽い雑談を交わす。
「次はもう少し、長く話したいですね」
「こちらもアップデートしておきますので、また遊びにきてください」
そして――地球、秘密基地。
エレベーターを降り、最後はお風呂に入ってリラックス。
「はぁ~~~、最高……」と、エレナが湯船に沈む。
バスタオル姿でリビングに降りると、そこにはテレビを見てくつろぐ“ひいばあちゃん”の姿。
「いしし……こっちは平和でいいのう……」
そんな何気ない一コマに、ゆきなはふと、心が温かくなる。
「……平和って、こういうことなのかもね」
エレナも、うんうんと頷くのだった。
⸻
翌週:理科部の春へ
秘密基地での忙しさが一段落したころ、ゆきなは理科部の卒業生一覧を眺めていた。
「全員、合格……!」
思わず、ほっと息がこぼれる。
夏休みの合宿には、24名中17名が参加の連絡をくれていた。
新しい未来へ、また一歩進む春。
そして、その先に待っている“夏”も、きっと賑やかで、楽しいに違いない――
総司令も帰還に向かいおのおのの星へ向かっています。
あと少しで大規模作戦が開始される前のご褒美と思って楽しんで欲しい限りです。
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